中長期視点・全社視点からのブランド投資

 買収については、従来ほど活発ではないが、5000万から3億ドルの範囲でいろいろな企業を探しているとのこと。マークは「今は絵を描く中で最後の仕上げに入っているところだが、まだ数年かかるだろう」とコメントした。

 アンディは「ウォルマートは誤解されていると思う。僕はベジタリアンだが、ウォルマートではちゃんとビーガンチョコレートクッキー生地なんかも売っているし、ハリケーン救済や(環境保護を目的とした)ゴミ廃棄ゼロ化など(安売りだけでなく)いろいろなことに取り組んでいる。そういう大きな流れの中でわれわれはブランドを変容させようとしている」と述べた。

オールズウェルのホームページ。【出所】同社ウェブサイト

 初の自社開発オンラインブランド、オールズウェルについては、既に競合ブランド、キャスパーやリーサが市場を形成しているのにまだ成長の余力があるのか、という質問が出た。これに対して「高単価・低リピート率の事業で、いかに良い睡眠を取るかという領域は時間はかかるが長期的投資価値がある。ボノボスでも10年はかかった」

ジェットは都市商圏に集中し「スピード、キューレーション、ボイス、ブランド」で攻める

 3月2日に報告[2]した通り、ウォルマート社は現在ジェット・ドット・コムをリポジショニング中だ。具体的にはジェットのマーケティング予算を削減し、Eコマース事業全体の都市商圏獲得に投入する。予算削減で来年にはジェットがなくなるのではないか?という憶測についてマークは「そのようなことはない。ジェットの典型的な顧客はニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴに住む都会的消費をするミレニアル世代だ。ジェットは現在よりキューレート(編集)し、ハイエンドで、都会的な内容に再編中だ。(中略)われわれは両サイトを相互補完的にし、従ってジェットのマーケティング予算を、企業にとってより長期的投資価値がある都市商圏に回した」と説明した。

「それだとアマゾンプライムと競争になるのでは?」という質問には「アマゾンのことは分からない。ジェットの顧客はミレニアルだ。スピーディであること、キューレートされていること、ボイス(ショッピング)、ブランドが焦点だ」とポジショニングの方向性を述べた。

成否のカギはデジタルネイティブブランド戦略のマジカルパワーか?

 今回のセッションで両者が語ったのは、①ウォルマートEコマース事業を「本体+ジェット」の2段構えとしジェットは都市商圏型に再編、②ジェットはデジタルネイティブブランドを統合して都市商圏やミレニアル世代獲得に集中、③ただし統合にはもう少し時間がかかる、というストーリーだ。

 既に同社Eコマースは配送・受け取りサービス体制強化で利便性は向上しつつあるので、プライム会員から顧客を奪う決め手はやはりマジカルブランド、ということだろう。ブランド戦略でいえば、アマゾンは①ナイキ等パワーブランドNBの強化、②アマゾンベーシックスやエレメンツ等必需品分野のPBおよびファッション衣料品PB開発に力を入れている。既にブランド認知度・浸透率の高いブランド力を活用し、価格志向のアイテムをPB化するのは売上げやコストが読める戦略だ。

 一方、ウォルマートのデジタルネイティブブランド戦略にはブランドをマジカルにするマーケティングが求められるが、前述のようにジェットのマーケティング予算は都市戦略以外はカットされている。戦略再編上の一時的な措置かもしれないが、2019年1月期Eコマース成長率40%目標達成のシナリオでもっとも不透明なのは「どうやって魔法を生み出すのか」ではないだろうか。

※取材シリーズ第2回は「アマゾンゴーの役員およびキャッシャーレス技術最前線」です。

 

[1] Eコマース専業で創業したブランドの意味。この用語は最近急速にアメリカ小売業界で使われるようになっている。