セッション風景。左からウォルマート社デジタルコンシューマーブランドSPアンディ・ダン、米国EコマースCEOマーク・ローリィ、リコード誌シニアエディタージェイソン・デル・レイ。【出所】筆者撮影

「ショップトーク」は2016年に始まった「小売業・Eコマースの最前線を学ぶコンファランスと展示会イベント」だ。参加者数は初回の約3100人から今年は7500人以上に急増し、同イベントへの関心の高さがうかがえる。

ショップトークのスクリーン。【出所】筆者撮影

 毎年マンハッタンで開催される100年以上の歴史を誇る全米小売業協会年次総会が伝統的なチェーンストア主体であるのに対し、ショップトークはラスベガスを舞台にEコマースにフォーカスを当て、名門ビジネススクール、ウォートン・スクールの教授やテクノロジー企業も講師に招き、よりアップデートかつ包括的なオムニチャネル戦略を議論した。

 3月18日から4日間にわたって開催された100を超えるセッションの中から、商業界が注目する旬なテーマをシリーズで報告したい。

注目の2人「マーク・ローリィとアンディ・ダン」が登壇した!

出所:ウォルマート社2018年度決算速報

 ウォルマートの成長の鍵を握る米国Eコマース事業部トップのマーク・ローリィは、ダグ・マクミロンCEO同様にその発言が注目されている。また、ボノボス創業者で買収を通じてウォルマートに参画し、ムースジョー、モッドクロス他のデジタルネイティブブランド[1]の統合を行っているデジタルコンシューマーブランド部SVPのアンディ・ダンも参加。両者の登壇は開催日の10日前に発表され、ショップトークへの注目度アップにも貢献した。

 ウォルマートでは2018年度のEコマース売上成長率が鈍化傾向にあり(図表①)、業績発表直後、株価が10%以上も急落したことから「マークが辞めるのではないか」「矢継ぎ早に導入した若返り・ファッショナブル戦略は本当に業績好転につながるのだろうか」という懸念が広がっていた。当セッションには開場時、席を確保するための長い列ができていた。

18年度は44%増、着実に進む「オムニチャネル戦略の基礎固め」

「ウォルマートのEコマースの道のりとデジタルネイティブブランドの役割」と題された20分のセッションは、まず前述の業績鈍化に関する質問から始まった。マークは「第4四半期の数字より年度全体を見てほしい。年度では少なくとも44%増を達成し、年会費不要の無料2日配送やピックアップサービスの拡大で今年度も40%増をキープする計画だ。われわれは健全なビジネスを築いている」点を強調した。

 顧客サービスの向上と配送コスト削減に有効なピックアップロケーション網を昨年度は1000カ所以上に拡大、今年度は追加1000カ所を計画している。即日配送都市も100に増やし、これはアメリカ人口の40%をカバーすると言及した。

「第4四半期の結果、あなたが辞職するのではないかという話もありますが?」という質問に対しては「まだ(自分が登用されてから)18カ月しかたっていない。私は5年、あるいは事業がうまくいけばそれ以上働くことつもりだ」と明言した。

「デジタルネイティブブランド戦略」の柱は集客力あるマジカルブランド

 ウォルマートはジェットドットコムで都市圏の若い層をターゲットするため、昨年度はムースジョー(アウトドア)、モッドクロス(レディスファッション)、ボノボス(カジュアルウェア)他4ブランドを買収し、直近では3月にオールズウェルというデザイン性の高いマットレス・関連ベッドリネンのブランドを自社開発し、オンラインのみで販売開始した。

 

 これらのブランド戦略の目的についてアンディは「マーケットプレースは非常に競争が激しくなり、コモディティ化が進んでいる。だから本当にスペシャルなマジカルブランド(魔法のようなブランド)が必要で、これによって来客数を増やさなければならない」と語った。

ジェット・ドット・コム上のモッドクロスのブランドページ。【出所】同社ウェブサイト

 また、ボノボスは健全なビジネスをしているがモッドクロス他は負債が多いことなどを指摘されると、「オンライン専門店を買収するのは基盤をなるべく早く構築するためだ。取引先との関係、マーチャンダイジング、おびただしい数の写真や商品説明などを作るのには非常に多くの時間と費用がかかるが、買収すればより安く、時間も削減できる。さらに(買収ブランドが持つ)若いミレニアル世代をサイトに呼び込むこともできる」とマークが投資目的を説明した。

 ただし、主力ブランドのボノボスではどのようなジェットとの統合計画が進んでいるのかという質問については具体的な話は出ず、「ブランドの自主性を保ちながら、ウォルマートのバックを生かして顧客にとってのベストを目指す」と述べるにとどまった。

 買収したブランドのオンラインストア展開状況を見てみよう。3月25日現在では図表➁のように、まだ模索中という様子がうかがえる。モッドクロスはジェットのレディスファッション部門でブランドストアとして展開しているが、ムースジョーはTシャツ、フーディやキャップなどを販売するにとどまっている。