セレクトショップの草分けとして若者のライフスタイルを変えてきたビームス。同社は今カルチャーや人に照準を合わせ、独自の路線を歩んでいる。同業が苦戦する中、業績も順調だ。「モノもコトも好きで、何かが変わる瞬間に立ち会っていることが大好きだ」という設楽洋社長にこれからの取り組みについて聞いた。

(聞き手/『ファッション販売』編集長・西岡克)
photo/杉田容子
設楽 洋(したら よう)

 1951年4月13日東京都生まれ。1975年慶應義塾大学経済学部卒業後、電通入社、プロモーションディレクター、イベントプロデューサーとして活躍。76年2月に家業の新光紙器(現新光)の新事業として「アメリカンライフショップ・ビームス」を開発し、1号店を東京・原宿に出店。82年2月ビームス設立。83年電通を退社し、ビームスと新光の専務に就任。88年から両社とビームスクリエイティブの社長に。2011年ビームスホールディングス社長。趣味は日曜大工、スポーツ、音楽。

 ――ここ数年衣料品大不振といわれており、セレクトショップも苦戦している。

 設楽:ファッション業界は中長期的に厳しい状況にあると思います。最大の原因は少子高齢化ですが、商業施設や店の過剰な出店競争も大きな原因です。

 なおかつEC(電子商取引)の時代になっています。そして若い世代の興味はゲームや携帯電話に移っています。こうした複雑な要素が絡んで今後も全体的には厳しくなっていくだろうと思います。

 ただそんな中でビームスは売上げが順調で、イメージも良いまま保てているのはありがたいことです。

メード・イン・ジャパン路線は次の布石

 ――確かにここ数年の業績は順調だ。

 設楽:元々コラボやカルチャーに強いのですが、2016年の創業40周年キャンペーンのときに単純な販促ではなくカルチャーを見せていったことが今いい形で結実しています。

 ビームスは01年に「モノからコトへ。セレクトショップからカルチャーショップへ」と言い始め、12年に「コトから人へ。カルチャーショップからカルチャーコミュニティへ」と方向性を定めました。

 最近は「100人いれば100のビームスがある」と言って「スタッフのスター化」を推進しています。社員のライフスタイルや好みに光を当ててスター化を進め、その一人一人にファンを付けようとしているのです。

 例えば14~16年に毎年発刊したライフスタイルブック『BEAMS AT HOME』(宝島社)。洋服ではなく当社スタッフ数百人の家を見せるというカタログです。直接的な販促ではありませんが、スタッフに興味を持ち「この人と話したい」と言って来店されるお客さまも増えています。この路線が今の好調の要因になっているのではと思います。

 ――16年4月に全面改装した東京・新宿の大型店、ビームス ジャパンを拠点に手掛けてきた国内各地とのコラボ商品や情報発信もブランディングに寄与した。

 設楽:それもありますね。当社は創業以来、海外の良い物を日本に紹介してきましたが、今度は日本の良い物を海外に紹介するビジネスを始めています。

 実はこれは次の布石でもあるのです。理念的には海外からの良いモノやコト、日本の良いモノやコトを紹介し、文化の交流によって新しいものが生まれるのではないかというものですが、ビジネス的には今後の海外戦略をにらんでいます。

 セレクトショップは海外進出がしづらい業態です。単一のブランドなら1カ国からドロップシッピング(メーカーから直接配送する)をすればいい。でもセレクトという業態ですから、1店を出店するのにも世界中からその国の店舗まで商品が送れるようにしなければならない。コストも労力もかかるし、とても採算が合わないのです。

 でも日本製なら日本からだけ商品を持っていけばいい。しかもメード・イン・ジャパン100%のかっこいいセレクトショップを確立できれば他と差別化ができて、ある種のスーパーブランドになれる。それがビームスだと認知されればブランディングもできるし、今後海外でも勝負をしていけるだろうと考えたのです。

台湾と英国に現地法人を設立した

 

 ――18年2月期の業績の見通しは。

 設楽:売上高は790億円、前期比約6%増の見通しです。言いづらいですが非常にいいです(笑)。既存店もばらつきはありますがほぼ全社的に前年を超え、カジュアル、重衣料共に好調で、各レーベルもおしなべていい。

 ――全社に占めるEC売上げの割合は。

 設楽:20%弱程度です。今期ECは170億円を狙えるところまできました。

 ――事業本部ごとの現況は。

 設楽:「ビームス」を軸とした第1事業本部は5%増くらい。レディスの伸びが少しいいですね。「ビームス」の店舗は総合店をはじめカジュアルだけの店もあり、「ビームスF」や「ビームス ハウス」などさまざまなタイプがあります。

 SPA(製造小売業)型の第2事業本部は「ビーミング ライフストア by ビームス」(以下ビーミング)が21店、「ビームス ゴルフ」が9店、「ビームス ライツ」は7店を展開しています。

 アウトレット事業本部は国内に29店、台湾に1店を展開しています。一時ほどではありませんが、好調です。

 ソフトビジネスを手掛ける開発事業本部も伸びています。主力の店持ち小売りの売上げには全く及びませんが、店持ち小売りは今後はそう伸びるものではないし、ECもそのうちオーバーストア現象が絶対に始まると見ているので、次の柱はここでつくっていかなければならないと考えています。

 売上高に占める新規のノウハウビジネスの割合は現状全体の7、8%だと思います。ただ荒利益の幅が全然違うので、利益貢献は大きいと思います。

 ――昨年8月にビームス台湾を設立し、11月にはロンドンにビームス&コーUKを設立した。

 設楽:現地法人2社を設立しましたが、それぞれ意味が違います。

 ビームス台湾は運営を直営店に切り替えることと、アジアにおけるEC展開の基地をつくるという目的で設立しました。

 アジアのECは特にオリジナル商品は従来日本の商品を輸出していたので価格が高くなり、打ち出しや納品のタイミングがどうしても遅れてしまっていた。だから台湾を中心に現地生産も含めてECができるようにしていこうと思うのです。

 一方、ロンドンのビームス&コーUKは現地で店やECを展開するというよりも日本の文化、日本のデザイナー、日本の匠を欧州で紹介していくシステムの基地にしていこうと考えて設立しました。

 ――ロンドンはソフトビジネスの拠点で、日系他社の商材も売り込んでいくと。

 設楽:そうですね。例えば「ビームス プラス」「ビームス」など自社のオリジナル商品を売り込みますし、自社が取り扱っているデザイナーの商品や自社で取り扱っていない日本の良いデザイナーや匠を紹介します。これまでも海外でポップアップストアを展開し、日本のデザインを紹介していた下地があり、確実にこの2、3年以内に軌道に乗るという感触を得ています。