ビギグループのメルローズが展開する大人の女性に向けた婦人服の「リエス」

 1970年代~80年代に人気を誇ったDC(デザイナーズ&キャラクター)ブランドの「ビギ」を擁するビギホールディングスが三井物産とその関連会社のファンドに買収されるというニュースで2018年は幕を開けた。その後も三井物産は米国子会社を通じてオーダーメードスーツブランドに投資。伊藤忠商事は中国系企業となった本間ゴルフに出資し、飲食・コンサルティング業を手掛けるインスタイルがメンズブランド「ダイエットブッチャースリムスキン」を買収するといった報道が続いている。業界のM&A(合併・買収)が加速している。

 今回のビギの一件はM&Aが加速している理由を説明するのに分かりやすい。

 ビギは現会長の大楠祐二とデザイナーの稲葉賀恵、後にワールドに移った菊池武夫の3氏が1970年に創業した。

「ザラ」が日本に上陸した際にスペインのインディテックス社と合弁でザラジャパンを設立(97年)し、日本進出を支援したこともある。

 ただし大楠氏も70歳代半ばとなっており、アパレル製品のOEM(生産委託)やブランドライセンスを通じて30年以上の取引がある三井物産と組むことがベストと判断したようだ。

 三井物産は今後ビギの企画・販売プラットフォームの機能を強化し、単一ブランドごとの事業展開に加え、ブランドポートフォリオの形成を目指す。

 また三井住友銀行などと共同出資するファンド会社・MSD企業投資の投資事業力と三井物産のブランドマーケティング力やグローバルなネットワークをフル活用し、新たなブランドの導入、EC(電子商取引)や海外展開など成長市場に向けた戦略的な販路強化をしていく。

成長のための機能の補完や事業継承がM&A増加の背景

 ファストファッションが定着し、EC専業ブランドも登場する中で、企画力のみならず素材調達から生産、物流、店頭までのサプライチェーンを構築し、競争力のある商品を提供することが生き残りには不可欠な時代だ。またECや今後到来する超デジタル化時代への対応にも投資が必要となってくる。

 その際、資金力やノウハウを持つ大手や新しいアプローチで問題を解決するスタートアップ系企業、異業種と組むのは一つの有効な手段で、今後も増えそうだ。

 さらに団塊世代をはじめとした経営者の高齢化が進み、事業承継の一つとしてM&Aを選ぶ企業も増えている。

 ビギの買収を主導した三井物産は中期5カ年計画でリテール事業の強化を掲げ、M&Aもその一手段と明言している。2月には米国三井物産を通じてカナダ・バンクーバー発のオーダーメードスーツブランド「インドチーノ」に投資。北米だけでなく世界に展開を広げ、デジタル化や顧客データの活用、商品の調達基盤となるサプライチェーンの構築を支援する。

 北米企業へのM&Aでは昨年4月アダストリアがベルベット社を買収した。いずれも事業拡大のポテンシャルに加え、最先端といわれる北米のアパレル・リテールビジネスを学ぶ狙いがある。

 伊藤忠商事は本間ゴルフに出資しており、アジアでのゴルフ人口の増加をにらみ、グッズだけでなくゴルフウエアなどアパレル事業を本格化させる考えだ。

 肉体改造ジム「ライザップ」を手掛けるRIZAPグループもECの夢展望や雑貨専門店のパスポートなどに続き、昨年ジーンズメイトや堀田丸正を買収した。

 マッシュホールディングスが巴里屋を傘下に入れメンズブランド「ミスタージェントルマン」の路面店出店やコレクションショーの復活などをサポートするなど、小規模ながらもキャラクターが立ったデザイナーズブランドへの出資も活発化している。

 ビームスやバロックジャパンリミテッドなどもテクノロジー系企業を含めたM&Aの可能性を示唆している。

 今年はM&Aの話題が続出しそうだ。

 

 
 

※本記事は『ファッション販売』2018年4月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。

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