量販店の店長がライバルの量販店や近隣のコンビニのお客さまを観察して今まで気付いていない顧客期待を把握しました。

 今回はそれを自店の客数増につなげた成功事例です。

ベビーカーを押す若い母親が来店しない訳

 スーパーマーケットの店長がライバル店を視察することはよくあります。通常の視察対象は売場、商品ですね。ある店長がそれに加え、ライバル店の顧客層も観察しました。

 すると、自店では見掛けない顧客層が売場にいることに気が付きました。それは、ベビーカーを押した若いお母さんたちです。前々から自店ではこのベビーカーを押す若いお母さんたちを見掛けなかったため、この商圏ではこの層が少ないのかなと思っていたので、意外でした。

 このベビーカーを押した若いお母さんたちはライバル店にはいて、自店にはいない理由には心当たりがなく、いくら考えても分かりません。そこで、自店で働くパートさんに聞きました。

 パートさんからこんな指摘を受けてしまいました。「あら、店長! そんなことも分からないの? 子育てをした母親なら、みんな知っているわよ。私だって、ベビーカーを押して、この店舗では買物したくないわ!」

 続けて理由を教えてくれました。「ライバル店の駐車場はしっかり舗装されていて、ベビーカーを押して歩いてもガタガタしないわ。でもうちの店舗の駐車場の歩行スペースはガタガタでベビーカーを押して歩く気がしない。うちのパートさんも皆言っているわよ!」

 店長は『早く言ってくれよ』と思いながら、自店の駐車場とライバル店の駐車場を比較しました.パートさんの指摘の通りで、これではベビーカーを使うお客さまはライバル店に行ってしまいます。

 ちょうど、リニューアルを検討中だったこともあり、少々費用は増えますが、駐車場の歩行スペースの舗装もきれいにすることにしました。

 すると、リニューアル後、ベビーカーを押す若いお母さん層が出現し始めただけでなく、手押し車を押すお年寄りも増えたのでした。

中年男性がお茶を落としそうになり、気が付いた

 これに気を良くした店長はライバル店だけでなく、近隣のコンビニ店舗も視察の対象に増やしました。

 あるとき、コンビニ店舗を視察していると、中年男性がお茶1本とお弁当を持って歩いていたのですが、お茶のペットボトルを落としそうになりました。その中年男性は近くに設置されていた買物カゴに気付き、お茶とお弁当を買物カゴへ入れ、サラダ売場の方へ向かいました。そして、サラダを買物カゴに入れたのです。

 この中年男性を見て、店長はハッとしました。この店長はコンビニ店舗が買物カゴを店頭だけでなく、飲料売場周辺に置いていることを知っていましたが、その理由が分からないでいたのです。この中年男性の行動を見て、その理由が分かりました。

 翻って、自店を考えると買物カゴは店頭周辺にしか設置していません。自店のお客さまもコンビニでも買物をするはずです。しかし、コンビニ店舗では飲料売場の周辺に買物カゴあって、自店にはないのです。もしかしたら、不便を感じているお客さまがいるかもしれないと考えました。

 そこで、飲料売場、お惣菜売場、パン売場等、即食品関連の売場周辺に買物カゴ置場を設置してみました。意外なほど設置した買物カゴが使用されるのです。

 この店長はこのことをキッカケにコンビニ店舗、ライバル店で自店にいない顧客層を発見することを積極的に行い、見えづらい顧客期待を把握、客数を微増し続けることに成功しました。