アメリカでチーズは、食卓に欠かせない「おいしさのシンボル」になっています。

 乳酸菌の発酵により、生乳のたんぱく質の熟成が進み、グルタミン酸が増えることで“病みつき”になるうまみが醸成、発酵の風味が記憶となって残るからです。

 そんなチーズはアメリカでは日々の食卓に上る食品となり、スーパーマーケット(SM)ではワインに加え、チョコレートとともに関連陳列されたりしています。

デイリーの売場で大きな変化が起こっている

 そうしたチーズが並ぶデイリー(dairy乳製品のこと)の売場に変化が起こっています。什器下段にチーズがあるのはこれまでと同じですが、上段に数種類、時には10種類のフムス(空豆を発酵させてペースト状にした食品)が売場を賑わしているのです。

 こうした発酵食品がアメリカでおいしくて、おしゃれな商品として注目され始めているのは、実は「健康というテーマが発酵というこだわりにリンクし、最終的に健康なライフスタイルと直結」しているからです。ライフスタイルに組み込まれることで、発酵食品が日々の生活に不可欠な商品になっているのです。

発酵食品のおいしさを起点にリピートをつくる

 アメリカ人がハンバーガーをおいしいと感じるのは、バンズと野菜、ジューシーなお肉にピクルスの発酵した酸味が風味となり口の中でミックスされ、独特のうまさを生み出しているためです。

 

 このように発酵の酸味は記憶に残る風味ともなります。フムスも野菜やチップを浸して食べると、ペーストの食感が酸っぱさと合わさり、思わずワインを欲しくなる衝動にかられてしまったりします。

 日本でも大人気のホールフーズ・マーケットが、コンブチャ(紅茶キノコ)、フムス、ピクルス、ヨーグルト、豆腐、ザワークラウト(乳酸発酵させたキャベツ)、キムチ、カカオニブ(カカオ豆を天日で発酵したもの)など、発酵食品を扱うのは、発酵の酸味を好む層はおいしさにこだわり、ワインなどの嗜好品を好む潜在顧客となるからです。

 発酵食品を買うついでに来店客がワインを購入し、「ここのワインはいける!」という評価を得られれば、リピートを獲得できる可能性は高くなるわけですから。

まずは「日々食べていることの気付き」から

 日本のSMが食品を扱う他業態よりも優位な点は、「商品の安全・安心を保証し、その流れで健康を提案できること」です。

 そのためには、発酵食品の品揃えを強化し、「発酵という製法のこだわり」を演出しながら、発酵が健康を維持する上で効果が大きいことをお客さまに伝えることが重要です。

 と書いても「難しいよ」と感じる方もいるかもしれません。その場合は、まず「通常扱っている日配品を集め、お客さまに発酵食品を日々食べていることに気付いてもらいましょう」。その流れで、発酵食品にはうまさがあり、健康になるためには積極的に摂取することが望ましいことを、次のように売場で訴求していくのです。

・納豆、漬物、豆腐をまとめ、これらには熟成したアミノ酸があることをPOPで表示。日本酒やワインを関連陳列し、非日常感も演出しましょう。

・ハンバーガーの売場をつくり、コーナーをパティとトマトなど赤を基調に演出。目立つように大量のピクルスを関連陳列し、POPで酸味のうまさを紹介しましょう(例:「ピクルスの酸っぱさが絶妙にうまいハンバーガーを作ろう!」)

・黒酢を使った豚肉などの料理をレシピと一緒に提案し、黒酢の発酵のこだわりをPOPで簡単に解説します。POPの横には同系色のボトルのバルサミコ酢やワインを陳列し、色で売場を目立たせましょう。

便利さ重視で日本の食文化がついえるのは残念

 便利さだけが価値を生み出しているように感じる現在の世の中ですが、便利さ重視の食文化が日本を侵食し、日本食ならではの発酵を軸にした伝統の食文化がついえてしまうのは、非常に残念なことです。

 消費者に向けて「健康は食べるものからも得られること」をメッセージとして発するのは日本のSMの使命です。少子・高齢化が進む日本で1000万人の団塊の世代に向けて、発酵食品を食べる流れをつくるのは、今です。