トライアルカンパニー(福岡)では、スマホのカメラを使い、お客の動きと売場を撮影。商品の販売動向や欠品の状況、鮮度落ち商品の把握など、店舗マネジメントの自動化を目指す。

「マーケティングオートメーション(MA)」に注目が集まりつつある。これを簡単に表現すると、ウェブマーケティングを自動化する仕組みのことだが、人工知能(AI)やIoTの登場によって、実店舗でもウェブのように来店者の行動データを取得できるようになった。AIの進化に伴い、MAが実店舗の運営を大きく変える可能性がある。

レコメンデーションシステムもMAの一つ

 直訳すると「マーケティングの自動化」という意味のマーケティングオートメーション。英語版Wikipediaでは、こう説明している。

「マーケティング活動をもとにスコアリングし、それに合わせたメッセージングをメールやソーシャルメディアのチャネルを使って行うことで、興味・関心のレベルから営業プロセスが行えるまでに育成すること、およびそのためのソフトウェア」

 つまり、リードジェネレーション(見込み客獲得)とリードナーチャリング(見込み客育成)を効率化してくれるソフトウェアのことである。

 このマーケティングオートメーションという言葉は、インターネットが普及する以前の1980年頃に既に使われており、1990年代後半の、いわゆるITバブルの時期には、アメリカでマーケティングの自動化を掲げるソフトウェアが数多く登場した。ベンダーとしては、1997年に設立されたAnnuncioや、1998年に設立されたAprimoなどが有名である。当時はソーシャルメディアという概念はなかったものの、ウェブやメールを使って「One to One」マーケティングが実現できるツールと期待された。日本にも輸入販売されたので、これらのベンダーの名前を聞いた記憶のある人も少なくないだろう。

 近年ではMAで実現できることも格段にレベルアップしている。調査会社Focus.comが公表しているインフォグラフィックによると、MAの機能としては、「コンテンツのスケジュール配信」「ハウスリストの精緻なセグメント」「戦略的なアップセルおよびクロスセル」「見込み客のスコアリング」「キャンペーンマネジメント」「効果測定・レポーティング」などに分類できる。

 アップセルやクロスセルを実現した事例としては、Amazon.comが導入したレコメンデーションシステムが挙げられる。顧客の行動履歴や購買データと、似た傾向を持った人の購買商品に対する評価などから、顧客が関心を持ちそうな商品を類推して推奨する仕組みで、協調フィルタリング(collaborative filtering)と呼ばれるAIの技術が使われている。レコメンデーションシステムは、AIによってマーケティングが自動化される一つの形を示したと言えるだろう。

ピーター・ドラッカーの提唱する理想に近い

 インターネットを活用した代表的なマーケティングの手法として、「コンテンツマーケティング(Content Marketing)」がある。アメリカで2010年に設立された業界団体Content Marketing Institute(CMI)では、これを次のように定義する。

「利益をもたらす顧客行動を後押しするという目的を持って、正確に定義し理解されたターゲットオーディエンスを引き付けたり、獲得したり、関与したりすることを目的として、関連性があって価値のあるコンテンツを作って配信するためのマーケティングおよびビジネスプロセスである」

 CMIが2011年に発表したコンテンツマーケティングの概念図を見ると、コンテンツマーケティングは見込み客を育成して「カスタマー(購入客)」にするだけでなく、リテンション、アップセルを通じて「エバンジェリスト(伝道者)」にする一連のセールスプロセスを全て包括している。エバンジェリストとは、頻繁にリピート購入してくれる常連客という意味でPassionate Subscribers(情熱的な購買者)という表現で補足されている。

 ピーター・ドラッカーは、1969年に出版した「断絶の時代」の中で、「マーケティングの理想はセールスを不要にすること」と述べた。前述のコンテンツマーケティングの概念をみると、一連のセールスプロセスを実現するものがコンテンツマーケティングであると表現されているため、ピーター・ドラッカーが提唱するマーケティングの理想に近づいているようにも見える。

 スマホの普及によって、オンラインとリアル(オフライン)の垣根が取り払われつつある点も見逃せない。オンラインで成果を上げたマーケティング手法は、リアルにも応用され始めている。

 Googleは、ウェブサイト用のアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」を無償で提供している。2014年4月に、「ユニバーサルアナリティクス」という新機能が搭載された(Googleアナリティクスの後継版として開発されたもので、現在はユニバーサルアナリティクスに移行している)。

 ユニバーサルアナリティクスの新機能うち、最も注目すべきは、利用するデバイスが変わっても一つのIDで紐付けて分析できる「User ID機能」だろう。インターネットに接続されたPCやスマホ、ゲーム機などのデバイスはもちろん、電話での問い合わせや実店舗への訪問などのオフラインのデータをIDで紐付けられる。オンライン(ECサイト)とオフライン(実店舗)のデータを一人の顧客の行動として分析できるようになった。