イートインコーナーに求められる役割も変わってきている。

 

 

 私はライター業の側らで数年前に2年ほど、近所のコンビニでアルバイトをしていた。気立てのいいオバちゃんパートさんたち、びっくりするぐらいイケメンな深夜バイトくんたち、人の気持ちを盛り立てるのが上手な女性店長と人に恵まれ、楽しく働かせてもらった。

 以来、コンビニに入るとただ買物をするだけでなく、新商品のチェックは当たり前。従業員さんの声掛けや、棚の在庫や並べ方に清掃具合と、細かく見て回る面倒くさ~い客になっている。いや、それでクレームするとかありませんよ。ただ心の中のコンビニチェック表に○、△、×を付けるだけですから。一人コンビニ探偵団! けっこう楽しい♪

みんな、身近な場所でハレを競っている!

 そうやって見て歩いてきたコンビニは、私が働いていた頃からずいぶんと変わった。

「お店の中にゆっくり飲食できる場所があればいいなぁ」
「お店の商品を配達してあげられたらいいなぁ」

 思っていたことが、今では当たり前になった。「入れたてコーヒーが飲める」ようになったのもうれしく、たびたびイートインコーナーに座って一息つかせてもらっている。

 ある日の夕方、散歩の途中でコーヒーを飲もうとイートインコーナーに座ったら、30代半ばぐらいのスーツ姿の男性が小さな袋菓子をポリポリしつつ、発泡酒を飲んでスマホを見たり、遠くを見たり、ずいぶんとリラックスしていた。周りを見ると、飲酒禁止の貼り紙はなかった。

 駅から家に帰る途中の一人飲みか? 「家で飲めばいいじゃない~?」と赤ちょうちんにフラフラ立ち寄る世の飲ん兵衛諸氏に放つ言葉をさらに大声で言える状況ではあるが、その人に私はすごく共感した。

 ここなら灯りがある、人の気配がある、音楽もあって寂しくない。一人居酒屋は気後れするが、コンビニなら一人でも気兼ねなく過ごせる。もちろん、値段はお手頃で少ないお小遣いでも安心。

 “ここ”で飲むのがいい。家で飲むのとはぜんぜん違う。気持ちが違う。

 コンビニのイートインコーナーは今、居酒屋やカフェとも、もちろん家とも違う、ホッと息抜きできる場になっている。日常の風景の中にあるコンビニにあって、忙しい日常からほんの一歩だけ抜け出られる、非日常な小さなハレの場となっている。

 これまでもコンビニは正月、節分、お雛様、バレンタインデーにクリスマス、季節の移り変わりはコンビニが知らせますとばかりに、さまざまな行事を盛り上げ祝ってハレを見せてきたが、それは年中行事の概念でのソフト面の演出で、イートインコーナーはプラットフォームとしてのハレの構築になっている。しかも、ただソフトクリームを舐めて終わりにしてもいい日常の場を、お客さんが自らハレの場に育てているようにも見える。

 思えば今ほどハレが求められ、日常的にフォーカスされる時代はない。インスタ映えとは、まさにそれであろう。私は今どき化石なガラケー愛の人間なので、インスタにあげたくなる気持ちは分からないが、インスタ命の人々はハレを求めて日夜奔走している。自分らしいハレをいかにアップするかに命懸けだ。

 ちなみにガラケー愛の私は、大相撲を愛して国技館に通うが、あそここそ日本最大級のハレの場だ。土俵という神聖な場所でおすもうさんが戦い、美しい装束をまとった行司さんがさばき、たっつけ袴姿のお茶屋の出方さんがサービスする。ただ勝敗を競うだけのスポーツではないハレな魅力に気づいた若い女性たちが、今の相撲ブームをつくっている。ハレを訴求する力の大きさ、広がりを相撲の場でいつも感じている。

 そんな時代だから、コンビニも日常の中に、ハレをどんどん見せていいだろう。

 例えば、とある私鉄駅前の小さなセブン-イレブンに入ったとき、入口正面棚に大きな竹籠が置かれ、ド~ンと新商品のチロルチョコが山積みされるのを見つけた。私は「ワッ」と驚き、闇雲にチョコを3つ、4つつかんだ。さらに奥に進むと新商品のスイーツが大量にフェイスアップして並べられているのを見て興奮した。1列同じ商品がドンドンド~ンだ! それがバーンと何段もあって大迫力! 思わず1つ、2つ手にとって、「あ、ここは家から遠いんだ」と気づいたときには会計が終わっていた。イートインコーナーがないその店を出て、駅のホームでこっそりスイーツを食べた私を誰が責められよう。ああ、おいしかった。

 こうしたド~ンと大盤振る舞いな(?)お祭りハレ棚の、なんと気持ちが上がることよ! ちょうどお昼休みの終わりごろな時間帯、会社に戻るビジネスマンらしき人たち、近隣に住む親子らが、私のようにスイーツとお茶を次々買い込んでいた。

 そういえば、時々ツイッターで見かける「発注間違えて、○○○が600個も来てしまいました。どうか買いに来てください」なるつぶやき。私も近所のコンビニが菓子パン大量発注をやらかしたというツイートを見て、いそいそ出向いたのに、「おかげさまで売り切れました」の貼り紙を見て「なぁんだ」とがっかりした。ド~ンと祭状態な菓子パンを見てみたい、買ってみたいとワクワクしたのだ。もしや、あれも実は新種のハレ演出なのか?

『あいててよかった』コンビニの時代から幾星霜。日常の中にあるコンビニに、日常的にハレがあっていい。もはやハレは年中行事だけじゃない。日々にハレをどん演出していけるか、これからさらにコンビニのテーマになっていくんじゃないのかな? と、一人コンビニ探偵団は思うのです。