右から、小田急電鉄株式会社 星野晃司社長、株式会社セブン&アイ・HD 井阪隆一社長、小田急商事株式会社 藤波教信社長。

 2018年3月8日、セブン&アイ・HDと小田急電鉄、小田急商事の3社間において、業務提携にかかる基本合意書が締結された。

 会見後の質疑応答では、提携に至るまでの両社の経緯や、この提携に向けた思いが表れた。

 以下、小田急電鉄株式会社 星野晃司社長、株式会社セブン&アイ・HD 井阪隆一社長、そして小田急商事株式会社 藤波教信社長と、記者とのやり取りを掲載する。

提携実現までの経緯は「どちらともなく」

質問:今回の提携はいつから検討していたか、またどちらから持ち掛けたのか。現在、流通事業で抱えている課題は?

星野:今回の提携のタイミングですが、われわれは以前から複々線が完成する、その効果を最大化しようということを考えておりました。そのために駅構内事業の強化とか、流通業の強化を掲げていましたので、テーマとしてはずいぶん前から持っておりましたが、具体的にセブン&アイ・HDと、ということは、そんなに昔ではありません。興味は持っていましたが、具体的な話というのはここ最近のところでございます。

(持ち掛けたのは)どちらともなくです。小田急グループもラブコールを送っていましたが、セブン&アイ側もできれば駅構内で、というご要望はあったように伺っておりましたので、どちらからともなく、絶妙なあうんの呼吸で、ということになろうかと思います。

 流通事業の課題ですが、例えばストア事業ですと沿線に細長く展開していますから、物流のメリット、効率化がなかなか図れないということがございます。セブン&アイのヨークベニマルのドミナント戦略では、面での展開をしているように聞いておりますので、その辺りは大変期待をしております。

 要は、少し縦横展開を図っていきたいなということと、どうしても少子高齢化の中で、小田急グループはリアル店舗で商売をしていることが多いのですが、それと違う業態(ECのような)もかなり出ていますので、それらとの競合にどう勝ち抜くのかが、非常に大きな課題です。そういったこともありまして、最近、EC事業をやっております「白鳩(しろはと)」という会社ですとか「ジェネリックコーポレーション」という会社もグループに入っていただいて、そういった事業を研究しようという展開をしております。

記者:小田急沿線というといろいろなCVSから出店したいという要請があったと思うが、なぜセブン&アイなのか。

星野:小田急グループには今回の提携で2つ目的があり、1つは複々線化により便利になる小田急沿線エリアを、さらに魅力あるものにするために、暮らしに根付く流通業の強化によって魅力を高めるということ。もう1つは小田急グループの成長、特に流通事業の成長を目指していきたいと考えております。

 セブン&アイ・HDはストアもCVSも両方ともお持ちであるということで、幅広く提携ができるということ、特に、われわれの認識する限り、収益性、商品力において日本一のコンビニをお持ちであるということから、「ぜひとも」と考えたということです。

小田急の魅力は複々線への情熱。Odakyu OXもレベルが高い

記者:セブン&アイとしては出店拡大が目的ということだが、東急線や京王線に比べて小田急沿線は手薄だったのか。また東急線、京王線と比べて小田急沿線の購買にはどのような特徴があるか。

井阪:取り立てて手薄ということはありません。購買動向も、それほど差があるわけではないと認識しております。セブン&アイとしては、やはり駅というのは、日本人にとって生活動線として欠くことのできない場所だと思っております。高齢者でも、働く女性にとっても、そこで便利にお買物をしていただけるようなチャンスをいただくことが、セブン&アイにとっての社会性、公共性を達成する、という認識の下で、小田急と取引をさせていただきました。

 複々線化は、50年かけて企画を進めておられます。私、実は50年前に大阪から転勤で東京に越してきて、祖師ヶ谷大蔵に住んだんですけれども、その当時と比べて、進化の仕方は目を瞠(みは)るものがあります。

 今回、複々線化ということをニュースで聞きまして、調べましたら、企画は50年前、着工は30年前。それだけで企業の信念というか、ここに感銘を受けまして、今回提携をぜひ進めたいということで進行させていただきました。

記者:セブン&アイは、これまで鉄道会社と提携してきたメリットをどう考えているか。小田急のどんな面に魅力を感じているか。

井阪:鉄道会社との取り組みについては、やはり生活動線の中に組み込まれた場所で、毎日の通学であったり、通勤で利用される方が非常に多い。そういう立地だと認識しております。例えば、そういったところでプロモーションなどを目にされたお客さまが、ご自宅の近くの路面店のセブン-イレブンをご利用いただくというような効果も、先行した沿線では確認しております。

 今後ますます、ECなど、いろいろなニーズが出てくる中で、拠点でお客さまが商品を受け取るというチャンスもこれから出てくるのではないかなと。

 一方で小田急の素晴らしさは、私もOdakyu OXを成城や新百合ヶ丘で訪問させていただいておりますが、非常に高品質な商品を品揃えされており、しかもそれをきちっと売場で、お店の方が説明されながら、しっかり販売されている。非常にレベルの高いお店だという認識を持っております。そういう高品質な都市型SMのノウハウというものを、これからわれわれも教えていただいて身に付けていけたら、今回の提携は非常に実になるだろうと考えております。

記者:特にOdakyu OXで、商品供給以外の部分でセブン&アイ・HDに期待していることは?

藤波:ノウハウという言葉も出ましたけれども、まさしくそうでございまして、人的交流を図りながら、さまざまなノウハウを一から習得していきたいと思っております。これによって店舗を盤石なものにしていきたいなと。セブン&アイグループの沿線事業の素晴らしいノウハウを、一つでも習得させていただきながら、店舗に反映させていきたいと考えております。