小売業者には、新たなニーズの掘り起こしやそれを踏まえた商品開発へのサポートが求められている。

2011年3月11日の東日本大震災から7年がたつ。水産物・水産加工物のブランドだった「三陸」では今、どのような課題に直面しているのか。関係者の話を聞き、整理をした。小売業者の読者には、この中から自分たちができる支援策を見つけてもらいたい。

 三陸にとっての水産業は地域産業であり、地域社会全体の在り方と深く関連している。三陸は西に仙台という大消費地を持ち、そこへの距離の近さも手伝い、水産業(一次産業)と水産加工業(二次産業)が複合して地場産業として発展してきた。

 だが、その三陸の水産業にも高齢化や後継者不足の課題があり、従事者は少しずつ減少していた。そうした中で起こったのが東日本大震災だった。これにより廃業した水産業者は多く、漁業従事者数が以前の水準に戻ることはないだろうといわれている。

水産加工品の価格が上がり続けている訳

 実は、この影響は非常に大きい。

 漁業従事者が減ることで、不漁でなくても前浜に揚がる魚が少なくなり(震災以降、右肩上がりで回復してきてはいるが、かつてと比べると少ない)、その結果、価格が上がってくる。昨年でいえば、銀鮭、ノリに加え、サンマやイカ、カツオなどは全国的に不漁で、価格が高騰したのを覚えている読者もいることだろう。

 しかも、この魚価の高騰は水産加工業へも大きな影響を与える。水産加工業者は豊漁で多く獲れた魚を安く仕入れて水産加工品をつくったり、魚をすり身の状態で冷凍し、それを解凍しながら練り物などをつくったりしていた。だから、日々、消費者が買える価格で商品化ができ、水産加工業者の経営が成り立っていたわけだ。

 だが、それが魚価の高騰で、難しくなってきているのだ(もちろん、大手になると、加工作業の一部を人件費の安い東南アジアなどで行うところもあるが、最近、スーパーマーケットの売場を見ていて、かつてあった商品を見なくなったり、売価が高いなと感じたりする商品が増えている)。

 もちろん、水産加工業でも働き手不足という問題もある。三陸には地元の水産加工メーカーで長年働いてきた人が多いが、そうした人たちが震災で住居を失い、仮設住宅への入居や移住で地域を離れてしまっているケースも多い。

 この問題解決として、外国人の雇用を進めているところもあるが、パートタイマーの時給高騰はここも同じ。今や時給1000円でも働き手が来ない状況で、水産加工品の加工コストはますます上昇する一方だ。

補助金やマッチングだけではうまくいかない

 震災後、三陸にも政府の補助金がかなり投入された。だが、これをプラスに活用できたところと、そうでなかったところがあるようだ。

 水産加工業者の中には補助金により、震災前では考えられなかったような日本有数の設備を導入したところも多い。かつて三陸の水産加工業者というと「こんな機械でよく」というくらい昔からある設備を使い続けているところがあったようだが、今では輸出等にも対応できるような最新の設備に一新、それらを生かして盛り返している会社もある。

 ただ、中には補助金を得られても破綻しているケースもある。立派な設備を持て余してしまうのは、原材料不足や加工コスト上昇など、もともとあった課題を放置したままのところが多いように思う。

 そう考えると、支援をする方も単にハードを充実させるというだけでは駄目で、新たなニーズの掘り起こしやそれを踏まえた商品開発へのサポートが必要になるといえるだろう。

 良くなったハードを生かしてこれまでにない付加価値を付けるなど、新しい商品開発に取り組まなければならない。

 と思うのは、関係者の取材をする中で、次のようなことを聞いたからだ。「三陸の水産物や水産加工物はブランドで、かつては他地域のように特別な努力をしなくてもよく売れた。環境に恵まれていたために、少し努力を怠った部分があるのかもしれない」

 また、売上げを高めるために、公的機関や金融機関が販売先のマッチングを行っているが、以前、取引があった相手との商談では「加工コスト上昇で以前よりも納入価格が上がっている」「既に他地域の商品が代わりに入っている」という点で成約には至りにくく、一度失われた販路を取り戻すのは難しいのだという。ここも解決すべき課題だろう。

商業者だからこそできる支援の方法がある

 単身世帯の増加や高齢化が進む日本では今後、惣菜も含めて魚の加工品の需要が高まることは間違いないだろう。

 そうした対応は三陸でも不可欠だが、人件費の安い東南アジアと対抗するためにコストや効率だけを追求しても、地域の産業の活性化にはつながりにくいだろう。

 これは三陸に限ったことではないが、中小企業では人的、資金的な面で大手企業と比べるとノウハウが足りないところも多い。

 だからこそ、小売業者にはそうした企業のサポート役になってもらいたいと思う。生活者に近い商業者だからこそできる支援の仕方は必ずあり、それは他の産業従事者にはやりたくてもできないことも多いのだ。

 震災から7年。復興途上で成功と失敗が混在している三陸の水産業と水産加工業。ここが正念場だと思う。