東日本大震災から7年が経った。被災地の復興は地域によって大きく異なる。仙台などの大都市中心部の街並みは震災被害の跡形はなく、すっかり賑わいを取り戻している。

 その一方で、大熊町、双葉町、浪江町といった福島第一原発周辺の大部分の地域は依然としてとして帰宅困難区域に指定されたままで、住民は姿を消し、町の姿は大きく変わった。

 大熊町が今年1月実施した「大熊町住民意向調査」によれば、「戻らないと決めている」が59.3%で「戻りたいと考えている(将来的な希望も含む)」は12.5%。帰還の意向を示している住民は極めて少なく、「まだ判断がつかない」の26.9%も加えても半数に達しない。

 現在、福島県内に非難している住民は74%、県外は25.5%。現在の住居形態は59.6%が本人または家族所有の持ち家で、既に避難先での生活が定着傾向にあることがうかがえる。

町民の帰還を促す狙いも、現在の居住者数は4.6%

 そうした状況の中で、昨年4月に大半の地域で避難指示が解除された富岡町。それに伴い、全面開業したのが、町が整備した公設民営の商業施設「さくらモールとみおか」だ(開業は昨年3月30日)。売場面積は約1400坪、スーパーマーケット(SM)の「ヨークベニマル」、ドラッグストア(Dg.S)の「ツルハドラッグ」、ホームセンター(HC)の「ダイユーエイト」と飲食店3店舗が出店した。

 原発事故の前、富岡町は地域の中心的な商業集積地だったが、大半の店が休業状態となっている。この商業施設には生活環境を整えて町民の帰還を促す狙いがあり、原発の廃炉に従事する作業員たちなどの需要にも対応する。

 国や県など関係者が集った開業の記念式典で、宮本皓一町長は「復興を後押しすると確信している」とあいさつしたが、今年3月1日現在、町に居住している人は321世帯・458人。居住者数は富岡町に住民票がある人の4.6%にとどまっている。

売れるのは、まだ作業員向けのボリュームある弁当

 筆者も開業当日にさくらモールを訪れた。オープンと同時に賑わったが、目立ったのは作業員たちの姿で、地域の人たちと思われる人は思ったより少なかった。あれから1年が経過したが、売れるのは作業員たち向けのボリュームある弁当だという声も聞こえるのは、帰還者が少ない中では致し方ない状況だ。

 隣の広野町には、これに先立ち16年3月、さくらモールとは車で20分あまりのところに同じく公設民営の「イオン広野店」がオープンしている。

 店の商いは人の住んでいるところで成立する。残念ながら町が期待したほど、長い目で見る必要もあるが、復興の後押しになっていない。ヨークベニマルにせよ、ダイユーエイトにせよ、ツルハにせよ、出店者は事業として成立しなければ存続は難しい。

 いずれにしても公設施設でなくてはおそらく出店できなかったもので、自立した商業ではなく、行政の力を借りたもので、地域の復興への道筋は極めて厳しいと言わざるを得ない。

7年経っても続く農産物、水産物の風評による影響

 一方で、都内の百貨店では今年の3月上旬に「福島物産展」が開かれた。最終日の夕方会場を訪れると大勢のお客で賑わっていた。福島県産米を販売員に、原発事故による風評被害を尋ねると、「大丈夫です。100%検査しているので世界で一番安全なお米です(笑)。よく売れて残りは2袋だけです」という答えが返ってきた。

 食品加工業者にも同じ質問をすると、「今でも10人のうち、1人、2人は気にする人がいる。でも、そんなことに構うより、残りの多くの人たちを相手に前向きに商売していく」と元気に笑った。

 確かに、今でもSMの米売場から福島米が撤去されたままになっているケースもあり、7年の歳月を経てもなお農産物だけではなく、水産物でも風評による影響を受けている。

 物産展では、出店者に、「頑張ってよ」「応援しているわ」という声が至る所で聞こえてきた。その声を聞いて、まだ頑張れと言わなくてはならない状況が続いていると改めて思った。

消費者に一番近い商業者しかできないことがある

 商業者として復興に向けて何ができるのか、特別なことではなく、当たり前に福島産の商品を販売するためにどう取り組むべきか、今一度考えてみることが必要ではないか。消費者に一番近いところにいる者がでしかできないことはまだまだある。福島産は売れないのではなく、売るために何をすべきか、そして普通に売れる日が来るまでその役割を自覚して行動する。

 SM、Dg.S、HCをはじめ、小売りは生活インフラとして地域に欠かせないもの。東日本大震災はそのことを再確認する機会となった。原発周辺の地域は極めて厳しい状況にあるが、そこに暮らす人がいれば、店舗という形を取らなくても、商品やサービスを提供することも可能だ。

 例えば、移動販売はその典型だが、アイデアや知恵を出し合い、IT、ドローンなどの最新テクノロジーの活用も図れば、新たな展開や取り組みも生まれてくる。困難な状況だからこそ、商業の新しい未来も見えてくる可能性がある。

 ちなみに、物産展では日本酒をいくつか試飲し、気に入った福島産の酒米「夢の香」を使用したものと、酒の肴に好適な南相馬市で造られた珍味「とうふのみそ漬」を購入した。