ローカルな商業集積地に出店を続けるマツモトキヨシ。外見は日本の店そのままだ。
イギリス生まれのドラッグストア、ブーツ。タイでは200店舗以上を展開。最大のドラッグストアチェーンとしてタイの市場に根付いている。

 バンコクの町中を歩くと、しっかりとメイクしている女性が多いことに気付く。全くのすっぴん派もいなくはないが、メイク派は予想以上に多い。屋台の女性、フードコートで働く女性、トイレ掃除に従じる女性もしかりだ。

 はっきりと眉を描き、ファンデーションをしっかりと塗り、赤い口紅で唇を彩る。タイ人女性にとって「化粧」は社会人として当たり前のプロトコルとして機能しているらしい。

 化粧に熱心な女性たちに支えられて、タイのヘルス&ビューティケア(HBC)マーケットは好調だ。やや古いデータだが、タイ工業連盟の発表によれば2014年度の市場規模は2500億バーツ(約8500億円)。年率10%前後で伸びていることを考えると、2017年には3000億円バーツ規模まで拡大していることは間違いない。タイのHBCビジネスはASEANをリードする存在だ。

即効性重視でスキンケアよりメイクアップ

 熱を帯びるタイ人女性の美容への志向は日本人と異なる点がたくさんある。以下、まとめてみよう。

1見掛け重視

2即効性重視

3美白重視

 タイ人は外見に重きを置く。タイの社会では、外見の美しさは人々から尊敬される要素だ。「内面から美しく」という発想もないではないが、見た目がどれだけ美しいか、見栄えがいいかが重視される。

 そのため、スキンケアよりもメイクアップに力を入れる女性が多い。日本の女性なら当たり前のように使用する化粧水を使わない女性やスキンケアを簡単に済ませる女性も少なくない。

 (2)の「即効性重視」は(1)とも関連するが、タイ人は「今すぐ効果を感じられる」化粧品を好む。スキンケア化粧品をじっくりと長く使って、肌を良い状態に持っていくという発想は薄い。

 (3)の「美白重視」についていえば、「色の白さが美しさの基準の一つ」という考えが強いため、すぐに白くなるアイテムに人気が集中している。日焼け止めについても、よく売れるのは付けただけで肌が白くなる(実際は「見える」)製品だ。日本ではエイジングケアへのニーズに対応した化粧品が好調だが、タイでは効果が出るまでに時間がかかりそうなエイジングケアよりも、すぐに肌を白く見せたい美白志向が強いのだ。

「すぐ」を求めるのはヘルスケアも同じ

 即効性を追求する志向は、ヘルスケア分野においても同様だ。

「使えばすぐに◯◯に効く」とインスタントな効果を訴求したサプリメントの人気は高いが、長く愛用することで効果を実感できるような商品の人気は今一つ。普段の生活から健康を心掛け、栄養にも気を配り、補助としてサプリや薬を使うというタイ人はそう多くない。

 未病という発想が希薄なため、病気になってから慌てる、症状が出てから打つ手を考えるというタイ人が大半だ。健康志向が年々高まり、バランスの取れたヘルシーな食事、適度な運動を取り入れるタイ人が増えているのは事実だが、全体としてみれば、やはり即効性に走る傾向がいまだに強い。手っ取り早い効果を追い求める志向。良くも悪くもそれがタイ人のマジョリティといえるだろう。

マツモトキヨシはセントラルグループと手を組んだ

「ちふれ」や「キュレル」など、日本のブランドがずらりと並ぶ。「ちふれ」は特に力を入れているブランドの一つ。
POPも日本語をそのまま使用。ぱっと見た限りでは、日本の売場のようにしか見えない。
日本語が目立つが、よく見れば当然タイ語表記もされている。この状態をタイ人は特に煩わしいとは感じないらしい。
スキンケアやヘアケアに力を注ぐ一方で、メイクアップ化粧品の扱いはそう多くない。「日本のコスメ=スキンケア」という立ち位置だ。