(写真と本文は関係ありません)

 従来、本部の加盟店に対する情報提供は、FC契約締結時の問題として論じられてきました(「FC契約」締結の際、本部が加盟店に提供すべき情報とは?」参照)。

 これに対し、FC契約期間中の情報提供として、指導援助義務の問題がありましたが(「FC契約で本部が行うべき指導援助とは?」参照)、この指導援助義務と同じく、FC契約期間中の情報提供の問題には、仕入れに関する報告義務があります。

独特な方式が採用されている「コンビニ業界」

 仕入れに関する報告義務は、コンビニエンスストア業界を中心に議論がなされています。

 コンビニエンスストアがFC業界で大きな地位を占めていることに加え、本部と加盟店との会計管理について、決済業務や計算書類等の作成業務の代行、売上金全額送金制度やオープンアカウントなどの独特の方式が採用されていることが影響しています。

 本部が会計に関する情報を集中的に管理している状況の下で、加盟店は本部による支払代行の詳細、例えば、本部が商品の取扱業者や仕入業者からどの程度のリベート(仕入割戻金、売上割戻金、販売協賛金など)を受け取っているのかを把握できず、推奨仕入先とそれとは別の業者のいずれから商品を仕入れるのが有利かなどを判断できません。

 加盟店は本部から独立した事業者とされているにもかかわらず、経営者として知るべき基本的な経営情報にアクセスすることができないわけです。

 加盟店としては、本部に対して支払代行の詳細の報告を求めたいところです。

仕入れに関する報告義務を認めた裁判例がある

 本部が仕入れに関する情報の報告義務を負うかどうかが争われた判例には、最2小判平成20年7月4日集民228号443頁があります。

 この事案は、オープンアカウント制度の下、本部が加盟店に代わって仕入商品の代金を推薦仕入先に支払ってきたところ、加盟店が本部に対して仕入代金の具体的な支払内容について報告を求めて訴えを提起したものです。

 最高裁はコンビニエンスストアのFCシステムにおいて、仕入商品の売買契約は加盟店と推薦仕入先との間に成立し、その仕入代金の支払いに関する事務を加盟店が本部に委託する関係にあるとして、この委託は準委任(民法656条)の性質を持つと判示しました。

 その上で、加盟店の要求が合理的であること、本部による報告が困難ではないこと、オープンアカウント制度の特性などをも考慮しつつ、本部が加盟店に対して仕入代金の具体的な支払内容について報告義務(民法656条、645条)を負うことを認めました。

報告義務の内容と範囲には限界がある

 報告義務の具体的な内容と範囲については、上記の最高裁の差戻審である東京高判平成21年8月25日(LLI/DB06420449)が判示しています。

 東京高裁は、加盟店が求めた次の①から④までの事項のうち、①と②について報告義務を認め、③と④については報告義務を認めませんでした。

①加盟店の仕入れた商品に関し、本部が加盟店に代わって推薦仕入先に対して支払った内容(個々の商品名ごとに支払先・支払日・支払金額・単価・個数)

②加盟店の仕入れた商品に関し、本部が推薦仕入先からリベートを受領している場合には、その受領内容(個々の商品名ごとに支払者・受領日・受領金額・1個当たりの受領金額)

③上記①および②の各取引に関する請求書、領収書、仕入値引資料等の提示

④宅配便営業の荷受業務に関し、本部が取引先(荷受業務の委託者)に送金した運送代金の支払内容

リベートに関する説明等の義務では別の判例も

 また、上記の最高裁や東京高裁とは理論構成が異なるものの、リベートに関する説明等の義務を認めた裁判例としては、東京地判平成23年12月16日判タ1384号196頁があります。

 この事案は、本部が加盟店に無断で推薦仕入先からの仕入価格と加盟店の仕入価格との差額(支払差額)を取得し、かつ、推薦仕入先と締結した契約に基づいて加盟店との取引に関する仕入額を含めた総額に対する仕入割戻金(リベート)を受領していたところ、その事実を知った加盟店が本部に対して支払差額と仕入割戻金相当額の支払いを求めて訴えを提起したものです。

 東京地裁は、FC契約が当事者間における高度の信頼関係を必要とするものであるとして、本部と加盟店の情報格差を是正し、信頼関係を構築するためには、加盟店が本部から適切な情報の開示を受けるべきであると判示しました。

 そして、本部がリベートを取得する場合には、FC契約に付随する信義則上の義務として、加盟店に対してそのことを説明し、その承諾を得る義務を負うことを認めました。

 これらの裁判例は、個別の事案ごとの事実関係を前提とした事例判決であって、その射程は限定されており、ただちに一般化できるものではありません。

 しかし、FC契約における本部と加盟店の情報格差を是正し、個別の事情に配慮して本部の報告義務の有無、内容と範囲を柔軟に認定しようとする姿勢は、これらの裁判例と類似の事案においても参考になるものです。