ウォルマートの2018年度の業績が報告され、全部門で売上高は安定成長し、2019年度の当期利益予測も上昇した。それなのに、全社売上げの3%にも満たない米国Eコマースの業績の低い伸び率に反応して株価は過去9年で最大の下げ幅となり、「やはりアマゾンには勝てないのか」「ウォルマートのEコマース事業投資はただ無駄遣いか」という議論が始まっている。

 一体、何が起こっているのだろう。

 数字を確認すると(図表①)、総売上高は5003億ドルに達し、売上成長率3.0%(為替差損含み3.1%)。売上高の64%を占める国内売上高既存比は2018年度2.1%増、ホリディ商戦を含む第4四半期には2.6%伸長し、海外市場についても11市場のうち10市場で売上増、5市場で既存比5%以上成長した。サムズクラブは売上高は3.2%伸びたものの営業利益が41.2%減と大幅減少、しかし既に売上生産性の低い63店舗の閉鎖を決定している。当期利益は前年比27.7%減と悪化したが今年度の一株利益予測は$4.75~$5.00と2018年度の$3.29を大きく上回る計画だ。

 

ホリディ商戦商品がEコマース専用棚を奪った!

 

 しかし、焦点はそこではなかった。2月20日に開催された決算報告会でCFOのブレット・ビグズ氏が述べた「米国Eコマース年商115億ドル、年間成長率44%」という数字は全社構成比2.3%でまだまだ小さい。そして売上成長率の推移を見ると第一四半期の63%が第4四半期では23%へと下がってしまった(図表②)。ここで前述のEコマース成長懐疑論が出た訳だ。

 ダグ・マクミロンCEOは米国Eコマース不調について「Eコマースは『良い前進を見せた年』だった」とコメントし、「第4四半期のスローダウンは、Jet.com買収後の事業構造の調整およびホリディ商戦に向けた長期的な健全経営のための基礎作りの結果だ。一部に予想外のネガティブな要因もあったが」と述べた[1]

 予想外な要因について同氏は「テレビや玩具のようなホリディ商戦商品がEコマース専用倉庫の棚を奪った結果、トイレットペーパーのような日用品のスペースが減ってしまい、売上げに影響した」と述べている[2]。要するに、店舗同様、ホリディ商戦ドアバスター重視の商品計画をしてしまったが、オンラインではモノの動きが異なった、ということだろう。

「マーク・ローリィ氏辞任」のうわさも流れた

マーク・ローリィ氏。出所:ウォルマート社提供

 米国Eコマース部門のトップでジェットの創業者のマーク・ローリィ氏(編集部注・これまでマーク・ロア氏と記してきましたが、実際の発音に近いこちらに統一します)には就任以降、大きな期待がかかっている。

 しかし、今回の業績発表後、金融メディアのブルームバーグは「前回、ローリィ氏は2017年をドットコム事業損失のピークにする、と投資家たちに約束したが、マクミロンCEOは今年もさらに損失が広がる可能性があると述べた」と報道し、ウォルトン一家をはじめとする投資家たちの間でローリィ氏への信頼が下がるのではと指摘した。またローリィ氏が辞任するのではないかといううわさも流れたが、それは本人が「まだ(試合は)始まったばかりだ」と即座に否定した。

 ローリィ氏が現職に就任して1年半たつが、商品面ではボノボスやモッドクロス他のユニークなブランドをはじめ、7500万点の商品を追加、さらに今年度はロード&テイラーと提携した編集型ファッションやプライベートブランドの導入、ハイエンドなオンライン・マットレス、オールスウェル(Allswell)[3]の販売開始など、若く都会的な顧客をオンラインに呼び込む戦略を短期間でリードしてきた。急成長中のオンラインマットレス市場参入などは、マークならではスピード感だ。

 しかし、次々も新規戦略を投入する中で、ウォルマートドットコムとジェット他のEコマースのポジショニングの整理が必要なのはCEOの発言の通りだ。

 本体ドットコムに比べてジェットの顧客は平均所得が高く、都会的ライフスタイルで新しい商品やサービスをどんどん消費する層で、アマゾンに近い。マクミロンCEOは「ジェットはウォルマートドットコムの補完として都心商圏をカバーする」と説明しているが、本当に2つの顧客層をターゲットできるのだろうか? 最近、テレビコマーシャルではウォルマートドットコムの宣伝が増え、五輪放送中もかなりの出稿量だった。

 一方で、ジェットは仕切り直しに入っているため売上げが下がっているとのことだが、実際筆者が住むマンハッタン内の300世帯強のアパートでは一回当たりの配達で30-40箱が着荷する中、昨年春夏には紫色のジェットの箱が10箱近くあったが、最近減っているようだ。