メタボ検診の面談に加え、テレビを見れば「健康番組」。ただでさえ忙しいのに、会社は「メタボ検診を受けろ」とうるさい。でも、現実は残業や付き合いで忙しくて痩せる暇がない。何より、特に症状が出ているわけでもないし、「何でそこまで?」「健康は高齢者の問題では?」という声をよく聞きます。

 実は、これこそが日本の課題。医療が進んで死亡者は減っても、糖尿病患者、がん患者は増える原因です。身を粉にして働いて日本経済を支えているはずの功労者が、健康を害して国の足を引っ張ることになっているのです。

 全てを仕事に捧げている人ほど陥りやすい悲しい現状。日本人は働き方だけでなく、生き方を変えなくてはならない時代かもしれません。

 これは勤勉な仕事人間にこそ、知っておいてもらいたい事実です。

(1)日本の健康水準は「世界の最高水準」

 日本の健康水準は世界において高水準です。

 第二次世界大戦後、生活環境の改善や医学の進歩によって感染症が激減する一方で、がんや循環器疾患などの生活習慣病が増加し、疾病構造は大きく変化。健康状態を示す包括的指標である「平均寿命」は、日本は世界で高い水準を示しており、特に女性は昭和60年から今日まで、世界一の水準を誇ります。

 これは日本の高い教育や経済、保険・医療の水準に加え、生活習慣の改善の結果によるものです。

(2)「healthy ageing」(健康な高齢化)が求められている

 2015 年 9 月 30 日、ジュネーブのWHO(世界保健機関)が発表したニュースリリース(10月1日の国際高齢者デーに発表するWHO初の「高齢化と健康に関するワールド・レポート」)に、「2050 年までに60歳以上の人口は倍増、 いま、抜本的な社会変化が問われている」と明記されました。

 WPP(World Population Prospects)が発表した資料によると、世界人口の高齢化(WHO主要国の65 歳以上人口の対総人口比の推移)はかつてない速さで進み、2050 年には 80 歳以上の人口が現在の約4倍の3億9500 万人に達する見込みです。少子高齢化の中、「健康な高齢化」が求められるのは日本のみならず世界の重要課題になっています。

(3)日本はかつて例をみない「超高齢化」社会の先駆者

 

 日本の平均寿命は今後さらに伸長し、将来推計では、2060年には男性で84.19歳、女性で90.93年に到達すると予測されています。

 急速な出生率の低下に伴って高齢化が進み、平成22年(2010年)には高齢化率が23.1%となり、いわゆる「超高齢社会」に突入。平成25年(2013年)には4人に1人、平成47年(2035年)には3人に1人が65歳になると推計されている(2016年の高齢化率は27.3%でした)。

 これは、日本が先駆的にどの国も経験したことのない高齢化社会の課題に対応するということで、その成果等について 国際的な発信が求められています。  

 世界が、日本の10年先、20年先に注目しているのです。言い換えれば、それほど日本の状況は特例で難しい、ということでしょう。

(4)超高齢社会で重要になる「健康寿命」

 活力ある超高齢社会を実現するためには、①社会活動の担い手、働き盛り世代の「生活習慣病の予防」、②高齢者を含む幅広い世代が社会生活を営める「健康の維持・向上」が特に重要になります。この2つにより、「健康寿命」を伸ばす(不健康な状態になる時点を遅らせる)ことが今、求められています。

(5)生活習慣の改善で主な疾患の予防はまだまだ可能

 近年、健康対策が進み、がん、糖尿病、心疾患、脳血管疾患の平成22年の死亡率は過去最低まで低下しています。医療費削減には疾患率を減らすこと。これは生活習慣予防を行えば防げることで、将来的な医療費削減の対策の一つ。

「非感染症=ウィルス感染」のような外的要因だけでない、「自身で予防の可能性が高い」疾患は防ぐことができるのです。

 国立がん研究センターが2012年に公表した多目的コホートの研究結果によると、「禁煙」「節酒」「減塩」「運動」「適正体重」の5つの健康習慣のうち、「実践している」が0または1個の基準グループのリスクを1とした場合、2~5個実践しているそれぞれのグループのがんの相対リスクは、男女とも低くなっています。平均すると、最大5個の健康習慣を実践した場合、がんのリスクは、男性で43%、女性で37%低下することが明らかとなりました。

 このように、禁煙や減塩、運動など生活習慣改善による予防効果は一段と明快になり、推進される傾向は続いています。

(6)もう一つの課題となっているのが「健康格差」

 近年の経済状況の変化を踏まえ、生活習慣の「差」から「健康にも格差」が報告されています。こうした「健康格差」の中でも「所得格差」「地域格差」は解決すべき課題として今後、深刻化が危惧され、メディアにも取り上げられています。

 

 平成22年国民健康・栄養調査結果では、高い所得の世帯に比べて、低い所得の世帯の人々では、「肥満(女性)」や「朝食の欠食」「運動習慣のなさ」や「喫煙率」といったリスクに高い傾向が見られました。こうしたことからを踏まえ、2010年発令の健康推進運動には、地域自治体を巻き込んだ施策が強化されました。

 これからは地域の一人一人が健康づくりに参加する時代になります。私たちも、健康は与えられるものではなく自分たちでつくるものという意識が何より必要です。