日本のキャッシュレス決済の比率は、中国、韓国やアメリカの半分以下にとどまる。

訪日外国人も求める店頭でのキャッシュレス決済

 日本政府観光局(JNTO)によると、2017年上半期の訪日外国人数は前年同期比17.4%増の1375万人となった。伸び率は鈍化しているものの、年間では過去最高だった16年の2403万9000人を上回ることはほぼ確実とみられている。政府は20年には訪日外国人を年間4000万人受け入れるという目標を掲げており、今のペースを続ければ目標達成の可能性は高まりつつあるといえるだろう。

 訪日外国人の数がこれだけの規模になれば、経済効果も膨大なものになる。観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向」によると、17年4~6月期における訪日外国人の消費総額は1兆776億円と、初めて四半期で1兆円の大台を突破した。

 このうち、滞在中の買物代は4146億円を占める。1人当たりに換算すると5万7420円になる。ちなみに、国別の統計をみると、買物代が突出しているのが中国人で、1人当たりは13万1128円と全体平均の約2.3倍に達する。中国人の「爆買い」現象は一時期に比べて沈静化したものの、中国人の購買パワーは健在なのだ。

 だが、訪日外国人の間では日本製品の品質や店舗における接客に対する評価は高い一方で、店頭での決済手段について不満の声が意外に多い。特に中国人旅行客からは、「中国で普通に使えるスマホ決済が日本ではほとんど使えない。日本がこんなに遅れている国だとは知らなかった」など、ショッキングな感想すら聞こえてくる。

 実は、中国では店頭で現金が使われないキャッシュレス決済が急速に普及しつつある。その中心的役割を担っているのが、スマホだけで決済が完了する「スマホ決済」である。中国の調査会社によると、17年には中国のスマホ決済市場規模は15兆元(約250兆円)規模に達するという。

電子マネー決済が成長も規模はまだ小さい

 日本でも店頭で現金を使わないキャッシュレス決済がコンビニやスーパーマーケットを中心に徐々に増えつつある。しかし、経済産業省の統計によると、15年の民間消費支出に占めるキャッシュレス決済額の比率は18.8%にとどまっている。この数字は、中国(55%)や韓国(54%)の1/3程度、アメリカ(41%)の半分以下にすぎない。いかに日本では店頭決済において、現金の比率が高いかが分かるだろう。

 キャッシュレス決済とは、具体的にはクレジットカード、デビットカード、電子マネーによる決済を指すが、日本では鉄道系の「Suica」や「PASMO」などに代表されるプリペイド型の電子マネーが成長を続け、一定の市場を形成している。その決済額は16年には5兆円を突破したものの、クレジットカード決済の約50兆円に比べると相対的な規模は小さく、キャッシュレス決済の比率を大きく引き上げるには至っていない。

 今後、日本において大きく成長が期待されているのはやはり、中国では既に主役となりつつある「スマホ決済」だ。日本でもスマホはここ数年で急速に普及しているので、スマホを店頭での決済に利用する慣習が根付けば、アメリカ並みのキャッシュレス決済社会に到達することは十分に可能と思われる。

 政府は17年6月に策定した「未来投資戦略2017」において、キャッシュレス決済比率を今後10年間で40%程度に引き上げることを目標に掲げている。キャッシュレス決済の比率を高めるけん引役がスマホ決済になることは明らかなので、もはやスマホ決済は流行やトレンドにとどまらず、いわば国策に格上げされたといっても過言ではないだろう。

海外サービスの上陸が起爆剤になる

 もっとも、これまで店頭決済に現金を使い続けてきた日本人が短期間でスマホ決済に切り替えるのは簡単なことではない。日本銀行が17年6月に発表したレポート「モバイル決済の現状と課題」によると、日本でモバイル決済を利用している人の利用率はわずか6.0%にとどまっている。

 モバイル決済を利用しない理由を聞いたところ、「他の決済手段の方が使い勝手がよい」や「支払いは現金でしたい」など、使い勝手に関係する回答が上位に並んだ。日本銀行では「モバイル決済を利用するための初期設定が難しい」「端末の機種を変更する際の作業が煩雑」などと感じる人も少なくないことが背景にあると分析している。

 なお、日本銀行のレポートにある「モバイル決済」とは、決済にモバイル端末が使われるもの全てが含まれる。例えば、従来の携帯電話(フィーチャーフォン)で主に使われている「おサイフケータイ」で電子マネーを利用する場合や、タブレットを使った決済などが含まれる。「モバイル決済」と「スマホ決済」を明確に使い分けるため、スマホ決済を「店頭でスマホを専用端末にかざしたり、スマホアプリを操作したりして決済を完了する支払い方法」と定義しておきたい。スマホを使ったネットショッピングでクレジットカード情報を入力して決済する場合などは、ここではスマホ決済に含めない。

 既に日本独自のスマホ決済サービスもいくつか登場しているが、多くのインターネット関連サービスがそうであったように、海外で実績を積んだ有名サービスが上陸してくることが普及の起爆剤になると予想されている。
 

[つづく]