ウォルマートが2月20日に発表した2017年第4四半期(17年11月〜18年1月)におけるECの失速がウォールストリートに衝撃を与え、1日で10%という株価暴落を招いたが、その意味するものは何だったのだろうか。

 ウォルマートのECは16年度第1四半期の7%増から12%増、21%増、29%増と四半期ごとに上昇し、17度第1四半期は63%増と急加速。以降も60%増、50%増と好調に伸ばして来たが、第4四半期に至って23%増と急減速した。アマゾンとの価格競争などが要因として挙げられているが、現実はそんな外部要因ではなく、足を引っ張ったのはECの急拡大に付いていけない店舗側のオペレーションにあったと推察される。

EC失速の真の要因はここにある

 そもそもウォルマートのECは17年2月に踏み切った「FREE 2-Days Shipping」(35ドル以上のEC購入は会費なしで2日以内に宅配)、同4月から始めた「Pickup Discount」(EC購入品を店舗で受け取れば3〜5%割り引く)が奏功して急拡大に転じたもので、前者は「ship from store」(店出荷)、後者は「store pickup」(店受け取り)を前提に成り立っていた。

 国土が狭く速くて正確な宅配便が確立されたわが国ではECの「店出荷」は食品を除けば例外的だが、国土が広く宅配に日数を要し宅配料金がわが国の倍以上もかさむ米国では、「店出荷」が時間でもコストでもEC専業者に対する店舗小売業のアドバンテージになる。B2Cの宅配物流に比べれば大量一括の店舗物流は格段に低コストだから、「店受取」は宅配物流費圧縮の決定打ともなる。

ゆえに大手小売りチェーンのオムニチャネル戦略は「店出荷」と「店受け取り」に依存してきたが、ECの拡大とともに店舗への負荷が大きくなって店舗運営を阻害し、クリスマス商戦などピーク時には店舗も多忙になるからオーバーキャパでパンクしてしまう。それが第4四半期のECの伸びに急ブレーキをかけた主犯だったのではなかろうか。

「EC比率5%」が負荷の限界か

 ウォルマートのEC比率は17年1月期の3%台から急伸して5%近くに迫っているはずで、店舗の負荷は限界に近づいていた。イトーヨーカ堂のネットスーパーが伸びて店頭からのピッキングが顧客の購買を妨げるに至り、ダークストアを設けたのも同社のEC比率が5%に迫ったタイミングだった。人員に余裕のあるデパートメントストアやスペシャリティストアはともかく、ぎりぎりの人時でマテハンと店舗運営をこなす量販的な大型店では5%ラインがサイドワークの限界だと推察される。

 この限界を超えてECを伸ばすには店舗にECサービス(店出荷/店受け取り/返品対応など)の専門チームを張り付けるしかないが、それでは店舗の運営コストが跳ね上がってしまう。「店出荷」と「店受け取り」、とりわけ手間のかかる「店出荷」を止めてしまえば店舗の負荷は軽くなるが、生鮮食品の宅配で全米をカバーするには数千カ所のフルフィルセンターを設置しなければならなくなる(アマゾンがホールフーズ・マーケットを買収した主たる目的の一つだ)。それでは全米に5400余店を布陣する小売りチェーンたるアドバンテージを放棄するに等しい。

幻想に終わった「オムニチャネル戦略」

 かつてメイシーズのCEOが高らかにうたい上げたオムニチャネル戦略は店舗小売業のアドバンテージと引き換えに店舗にECサービスの負荷を強いるもので、ECへの売上流出に運営の負荷が加わって店舗を疲弊させる弊害を招いた。EC比率5%で無理が露呈するほどだから、EC比率が20%を超えた大手デパートチェーンが皆、店舗とECのカニバリ、運営コストの肥大に追い込まれ、成長力も収益力も損なったのは必然だった。世界最大の店舗小売業者たるウォルマートも、その呪縛を免れないとしたら、壮大に描かれたEC戦略もいずれ行き詰まることになる。

 店舗小売業のオムニチャネル戦略は店舗とEC、両系統のフロント/決済/物流の統合を欠いては顧客利便とコストの壁に当たってしまう。その正解はメイシーズやウォルマートはもちろん、アマゾンやアリババにも見えていないのではないか。オムニチャネル戦略はECに圧される小売業が夢見た過渡期の幻想であり、ECで確立されたプラットフォーム(デジタルフロント/モバイルID決済/B2C物流)にのせて店舗流通を抜本的に“革命”するニューリテイルこそポストECの本命だと思われる。

(注)米国デパートメントストアのEC比率はニーマンマーカスの31.3%(177月期)を筆頭にノードストロムの22.2%(171月期)、メイシーズの22.9%(161月期推計)と軒並み20%を超えており、既存店売上げの減少が続いている。