これまで「小売業のビッグデータをどう活用していけばよいか」をテーマに、「POS」「ID-POS」データの基本的な分析方法について解説してきた。そして前回は、データ分析によってお客さま像を理解し、実際の打ち手までつなげた具体的な事例を紹介した。

 データ分析は手段であって目的ではない。効果を出すには、「何を解決したいのか」という目的がまず必要である。そして、分析結果を共有するだけでなく、それを現場オペレーションにまで徹底させなければ、成果は出ない。

 つまり、特定の部署だけが関わるのではなく、皆でそれを使っていくことが必要となる。それができない限り、データ分析をやって終わりということになってしまう。

 今回は、分析を適切に行って成果を出すには、どのように組織の連携を図り、進めていけばよいか、データ活用を進める上でのインフラ、つまりシステム基盤について説明していく。

組織連携を円滑に進める手順とポイント

 データを活用し打ち手にまでつなげるには、データを適切に取得・分析し、それを施策・オペレーションにまできちんと落とし込む必要がある。

 そのための組織連携の一例を示したものが図表①である。

図表① データ活用を行う上での組織間連携

〈STEP1〉「データ取得」はきちんと仕様を決めて

 まずはデータを分析することになるが、その際、基幹システムを担当しているIT部門からデータを取得することが多い。

 ここで大事なことは、データの仕様をきちんと作成した上で、適切に彼らとコミュニケーションをとり、欲しいデータをしっかりと得ることである。仕様に抜けや漏れがあったり、リクエストを何度も繰り返したりしてしまうことなどは避けないといけない。

 また、データ出力が大量になると時間がかかるので、「あれもこれも」と不要なデータを要求しないことも大事なことである。

〈STEP2〉「データ分析」は目的の明確化が重要

 データを得たら、分析に取り組むこととなる。この連載の第3回(データ分析の「型」を知り、成果を上げる)でデータ分析の2つの型とそれぞれの注意点について触れたが、重要なのは「目的を明確化して分析に取り組むこと」である。

 また、社内に分析するリソースがないという場合は、データ解析者を外注するのも一つの手段である。最近は多くの業界でそうした取り組みがなされ、データ活用がより進んでいる。ただ、その際、現場感覚や業務知識をきちんと分析者にインプットし、また分析を彼らに任せ切りにするのではなく、プロジェクトをうまくコントロールする必要がある。

〈STEP3〉「現場との連携」を進めるのは信頼関係

 データの分析が終わったら、次はオペレーション部門との連携である。例えば、店頭販促の分析をしたとしても、店頭で販促に関する作業を行うのは店舗のため、店舗や店舗運営を統括する部署と連携しなくてはいけない。品揃えの分析であれば、店舗だけでなく、バイヤーとも分析結果を共有し、連携して進める必要があるだろう。効果のあるデータ活用を行うには、ここが大変重要となる。

 しかし、多くの場合、オペレーションをしている現場を動かすのはそう簡単ではない。データ分析から分かったことを現場に押し付けるだけでは、聞き入れてもらえないという話も聞く。データの活用がこれまでのやり方の否定と捉えられてしまうこともあるので、現場の理解がない中で進めても心理的な壁があり、受け入れてもらうのが困難な場合が多いのだ。

 よって、現場との信頼関係を築くことが非常に重要となってくる。ある企業では、信頼を得るために、まずは現場が共感してくれるような事実をデータで示すことから始めた。データから示した事実について現場に「そうなんだよ」と思ってもらい、現場と問題意識や課題を共有した上で、データ活用を進めていった。

新しいことをやる場合はやらなくていいことも示す

 同時に、「やらなくていいこと」を、データを使って示すことも重要だ。特に、これまでとは違う新たなことをやるならば、現場の負荷を下げることも必要になってくるだろう。

 このように、現場が理解・納得できる部分をまずデータで示しつつ、できるだけ負荷を下げ、また現場からフィードバックをもらいながら進めることが、連携をスムーズに進めるポイントになる。

 また、信頼を得るには成果を出すのが最も早い。しかしながら、最初から大きな成果を出すのは大変難しい。ある企業では、まずは効果は小さいが、コストがかからず実行の難易度がそれほど高くない取り組みを実施し、コツコツ成果を積み重ねていった。その結果、信頼が生まれ、データ活用を進めていくことができた。

 組織間の連携において、特にオペレーションをしている現場との連携が難しいという声を多く聞く。そうした中でも、ここで紹介したように現場の理解と信頼を少しずつ得ていくことで、データ活用を進められた企業も多くある。