私の仕事は、チェーン経営のコンサルタントです。

 最近、人事担当者から店長研修をやってもらいたいというお話しをよくいただきます。特に、「テーマは人時生産性で」という依頼が多いのですが、その指導の際には、経営者と店長指導者にも参加してもらうようお願いしています。

継続的な活動として取り組むことが必要です

 理由は明快です。

 人時生産性の指標の一つである人時売上高を上げるのは現場の店長実務ですが、その前に店舗指導者である経営者や店舗運営部長が、その改善手法に精通していなければ、継続的な活動として企業の生産性向上を達成できないからです。

 このテーマ、指導内容に「実務を動かし、どうやって数値を変えていくのか?」という具体例が多いことから、店長の皆さんはとても興味を持ってくださり、何とか自分でも「できるところからやってみたいと思う」と口にされます。

 しかし、こうした店長のやる気、元気に頼っても、チェーン経営の人時生産性向上には、絶対に超えることができない高い壁があるものなのです。

 これまで売上先行型で利益を出してきた企業が今後、人時売上げ型で利益を出せるようになるには、その要となる本部が変わることが不可欠です。それなくして、店長にいくら人時生産性の話をしても何一つ変えることはできません。

売上先行型と人時売上げ型は進む方向性が違います

 もう一度書きますが、人時売上高を上げたいのであれば、「売上先行型から人時売上げ型への方向転換を経営方針として示し、その進め方を経営者と本部が学び、店舗に改善方法を指導していくこと」が必要になります。

 というのは、売上先行型と人時売上げ型は、似て非なるものだからです。売上先行型の場合は売上げを上げることが目的なので、そのためにコストを掛け続けます。一方、人時売上げ型の場合は売上げの上下に関係なく、人時売上げが上がる方法で利益の安定化を目指すことになります。

 ここ数年、人時売上げ型が注目を集めていますが、この背景には売上げが上がらない状況が続いていることがあります。その中で、どうやって利益を出していくかがチェーン各社に突き付けられているのです。

 人口減少と少子高齢化は市場のパイ縮小をもたらします。この先50年以上、人口が減り続け、少子高齢化が進む中での各社の動きは当然の流れでしょう。

「社内伝説」にとらわれている場合ではありません

 これからも売上げアップのためにチラシ投入や大量陳列、派手な売場演出にコストを掛け続けることがどうなのか、今、決断が求められています。

 断っておきますが、販促強化が間違っているとは言いません。しかし、このようにハイコストになっても売上げの高い波を意図的につくる経営構造だと、売上げの波が少しでも下がり始めると、瞬く間に利益が消えてなくなってしまいます。

 こう書くと、「チラシ投入や売場演出やイベントがなくなると、売場つまらなくなりませんか」という声が聞こえてきそうです。実際、指導の際にこうした声を聞くこともありますが、「この『売場がつまらない』というのは、誰がいっておられるのでしょうか?」とお聞きすると 皆さん、「うっ!」と言葉に詰ります。

 クライアントの経営者にこの質問をすると、「先輩からそう聞いたことがある」とか「入社時にそう教わった」とか「どこかの部長が言っていた」等々、さまざまな答えが返ってきますが、どうやら、これはお客さまの声ではなく、社内の言い伝えのようです。

 こうした「売場に変化がないと飽きられてしまう」という社内伝説のもと、従業員の手が空かないように無益な仕事をつくっても利益が出たのは、人件費が低く、人も自由に採用できた時代だったからです。

 しかし、ここ数年、人が集まらず、パート・アルバイトの単価が上昇しています。かつてのような非効率な作業を放置していては、企業の利益減少が食い止められない状況にきているのです。

経営者、事業部長が知ることから始めましょう

 つまり、今、必要となっているのは「人時売上高向上を戦略とした業務改革」です。これによって社内の全ての業務が利益に結び付いているかが分かるようになってきます。

 現状の売上げだけに頼る営業体制から人時売上げを基準にした店舗運営に切り替えられれば高コスト構造が改善でき、少子高齢化、人口減少という環境の中でも毎年、最高利益を更新し続けられる強い組織ができるようになります。

 詳しくはセミナー等でお伝えしていますが、まずは経営者や店長指導者である事業部長が、まずこの考え方と仕組みづくりを知り、自社に取り入れることです。そこから自社の利益構造を大きく変化させる道筋が見えてきます。

 これから毎年、最高利益を更新できるようになるかは、その第一歩が踏み切れるかにかかっています。