チェーンストアオペレーションは、店舗を多店舗展開するための運営管理方法、本部で出店や商品計画、仕入れなどを一括して行う本部主導のシステムだ。

 スーパーマーケット(SM)、ドラッグストア、ホームセンターなどのチェーン化の支柱となり、ニトリをはじめとする有力専門店チェーンでも用いられて事業拡大の推進力となったことで、多くの大企業が生まれた。

 これは流通業界において半世紀にわたりメインフレームであり続け、多くの企業で金科玉条的に信奉されてきた。しかし、次第に制度疲労で現状とそぐわない部分が出てきて、一律的なマスマーケティングの手法も通用しにくくなり、見直しが求められるようになった。そうしたことから、近年ではチェーンストアオペレーションとは真逆の個店経営がクローズアップされ、経営に取り入れる企業が出てきている。

 その象徴的な存在がイオンだ。2015年から本部をスリム化し、地域や店舗、事業所の人材、権限、機能を強化し、地域密着、現場主義を徹底する体制を構築してきた。

 昨年も、イオンリテールでは商品やマーケティングの機能を本部から地域カンパニーに移譲し、経営執行能力を強化。個店において地域対応などを強める「地域密着経営」へシフトしている。

西友時代、売れなかった経験から疑念を抱いた

 本部と店舗。この両者は長年、相克の歴史を繰り返してきた。

 筆者もSMの西友の紳士売場にいたときから感じていた。当時は「アーノルドパーマー」のワンポイントのシャツが人気で西友もガラスケースに並べて売っていた。レナウンが発売元で主に百貨店で売られていたが、大型店だったので、並べることができた。

 しかし、筆者がいた店舗の目の前には百貨店があったため、さっぱり売れない。当たり前で、当時は価格も高くブランド品だった「アーノルドパーマー」は百貨店で買うもので、SMで買うようなアイテムではなかった。そもそも西友に来るお客自体もブランド品を買うようなお客ではなかった。

 単に店が大きいということで、個店の事情を考えず、一律にバイヤーが商品を送り込む。地方のジュニアデパート的な店なら売れたが、前述した環境では全く不適切な商品だったのだ。

 そこで、何度もバイヤーに直訴したが、バイヤーもレナウンとの契約だというばかり。そこで、筆者は「アーノルドパーマー」を売るのは諦めて、大型店に一部認められていた自店仕入れで問屋から安価な商品を仕入れて売りまくっていた。

 このように入社1、2年目の社員でもおかしいと思うことを、本部一括仕入れということで売れなくても売場に送り込む。全くおかしな話である。お客が欲しい商品を提供するのが使命なはずなのに。

 商品は店舗の立地によって売れるものも変わり、地域の特性も影響する。この当たり前のことが通用しなかった。それでもそれぞれの販売部にはスタッフがいて調整を図っていたが、バイヤーとスタッフの関係もバイヤーの方が上でほとんど機能しなかった。

 本部においてもセントラルバイイングの商品部と店舗を統括する販売部と2つの組織があり、あまり連携することなく別個に動いていた。

 そして、店舗では「こんなものを売れるわけはない」、本部では「何で売れない? 店は売る力ない」と、腹の中では互いに非難の応酬をしていた。

 このようにチェーンオペレーションの弊害を体感したことで、著者は当時もてはやされていたチェーンストア理論に疑念を抱き、その後はその陰の部分を解消する必要性を常に感じていた。

他人が選んだものを売るのは今一つ身が入らない

 多店舗展開をしている以上、本部で仕入れる方が効率的だ。しかし、地域や店によって売れるものが異なるという現実があり、そこで、地域の事業部や店舗に権限を委譲し対応を図る。本部と地域・店が「8:2」や「7:3」といった塩梅で調整する。「現場主義第一」「本部は店舗をサポートする役割」といった声も盛んに聞こえてくる。

 経験上、実感として他人が選んだものを売るのは今一つ身が入らない。自分が仕入れてきたものは一生懸命に売るが自動的に送られてきた商品は「?」なのだ。誰もが感じる根本的な問題をどう解決するのか、その答えは当然、チェンオペにはない。

 今でもSMチェーンの経営者は言う。本部は売れる商品を仕入れて店舗に送り、店長はしっかり売場を作って売れと。確かに売り方や売る場所を変えたりすることで売れ行きは変わる。発注のタイミングや数量も重要だ。そこにやりがいを見いだすこともできる。しかし、自分で仕入れたものを売ればもっとやりがいを感じることができる。

 一方で、「ユニクロ」「ニトリ」「無印良品」といった作って売るSPAは、よそから仕入れるという行為が存在しない。やりがいはともかく、店は本部から送られてきた商品を売るだけで、チェーンオペレーションに最もフィットし、大いに威力を発揮する。それでもユニクロにカリスマ店長が存在するように店舗の売る力によって差が出る。

 以上、仕入れという観点から本部と店舗の関係性でチェーンオペレーションを考察してきた。チェンオペのおよばざるところを個店経営でカバーするに至るわけだが、その線引きは難しく、悩ましい問題である。

 組織の一員でいる限り、どこまで自由にやれるかは限定的なものなる。青臭い議論になるが、人は『考える葦』である。チェンオペは労働における「人間疎外」という大きな命題を考えるきっかけになるもので、より深く論じられるべき問題でもある。