価値共創の「場」がさらに広がっている

 サービス・マーケティング、価値共創マーケティングでは、「価値は顧客が創造する」ことを前提としており、その創造された価値を「顧客経験価値(文脈価値)」と呼びます(図表参照)。

 

 その際、重要となるのは、「場」の概念です。この場を通じ、消費者は小売企業の従業員と相互作用(コミュニケーション)を図り、購買後、自身の消費プロセスを経て、最終的に顧客経験価値を醸成するのです。

 今日、価値共創の場としては上記の小売企業内の場(店舗やアプリ)だけではなく、AmazonやFacebook等のプラットフォーマーとの連携も多く見られるようになってきています。

「テーラーメード・サービス」もしやすく

 IoT化が進む中、一つの面白い現象が起こっています。それは「テーラーメード・サービス」という現象です。

 皆さん、テーラーメードと聞くと、礼服等の仕立てを頭に思い浮かべるかもしれません。この概念は「個々の人に合わせて仕立てる。注文生産の一つ」のことです。

 最近、この具体例として、『NIKEiD』について語られることが増えました。NIKEiDはオンライン上で個人の好みに合わせ、色、素材、クッションを自由に変えられるナイキのシューズの受注生産サービスです。

 このサービスを行うことで、NIKEは顧客との情緒的な関係性(絆)をさらに深め、顧客満足度を向上させ、ロイヤルカスタマー化してもらおうとしているのです。

重要なのはIoTそのものではなく、その活用!

 IoTは小売業界に革新をもたらしてくれるものですが、全ての課題を解決してくれる万能薬ではありません。

 顧客経験価値を生み出すリアル店舗を軸とする小売企業も、今後はデジタル化の波に真正面から向き合うことが不可欠です。

 その際、重要なのは、IoTそのものではなく、これを活用できる組織体制、従業員の能力(デジタルとアナログのバランス感覚、編集力)開発になります。

 それが自社の革新(イノベーション)を起こし続けるためのカギを握ることになるわけです。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見真也)