たけなが たろう/1977年1月生まれ、千葉出身。1997年10月有限会社ロイスカンパニー(現株式会社一家ダイニングプロジェクト)を設立、代表取締役社長に就任(現任)。(Photo/杉田容子)

株式会社一家ダイニングプロジェクト(本社/千葉、代表/武長太郎)は2017年12月12日に株式を公開した(東証マザーズ)。この日は同社が1号店をオープンした日で創業20周年を記念するものとなった。同社の19期(2017年3月)は売上高54億1875万円、経常利益1億5410万円、事業内容(20187年9月現在)は飲食44店舗、ブライダル1施設となっている。同社はグループミッションとして「あらゆる人の幸せに関わる日本一のおもてなし集団」を掲げているが、その最大の特徴は居酒屋からスタートしこの分野を育て、ブライダルに参入し年商22億円という大きな事業部門を築き上げていることだ。これが今日の礎となり、比類ないサービス業の在り方を示している。同社が上場を目指した理由とビジョンについて、同社代表取締役社長の武長太郎氏に伺った。

私の事業は「これで足りているのか?」

――上場を意識したのはいつ、なぜか。

 2014年11月ごろです。この頃は飲食事業17店舗の全店が黒字、そしてまさかの思いで始まったブライダルが2年経ち、当社の事業基盤が整った感がありました。そこで海外に目を向けてアメリカに行こうと考えました。しかしながら、サンフランシスコやロサンゼルス等は日本料理店が多く競合がとても激しく、日本から距離的にも時間的にも離れている。出店しやすくて繁盛しやすいのももちろん重要ですが、もっと大切なのは現地で働く従業員が安心して暮らせて楽しく働けて、自身も頻繁に行ける方が良いと思うようになり、ハワイに出店しました。全店が黒字で、ブライダル事業も軌道に乗り、憧れの銀座や六本木、ハワイにも出店をし、何だか自分で成功者になったような気分になっていました。

 そんなときに、海外展開で成功している経営者の先輩から話を伺う機会があり、私の経営者仲間と共に先輩の成功のロジックを教えていただきました。

先輩は上場も経験していて、「みんなは上場を目指さないのか?」という。

 そして、こう言います。「自分は『人生最良の日はいつですか?』と尋ねられたら、上場した日だと答える」と。

 先輩の会社が立ち上がって上場するまでは、ものすごく奮闘したそうです。当時、本業があって、従業員はそれが終わってから立ち上げたばかりの飲食業を手伝ってくれた。

 彼らにはストックオプションを行っていて、会社が上場してから、彼らは家を買って持ち家で過ごすようになった。そして、奥さまとこれまでの苦労をワインでねぎらう、というところで、先輩に電話をかけてくる。その電話をかけている人は涙声で話している。「今日、私が存在しているのは社長のおかげです」と。そこで先輩はこう言いました。

「みんなも社員のことを大切にしているのであれば、社員の奥さまの立場を考えたときに経済的に満足して差し上げられているだろうか……」

 私にはこの話がとても響きました。

 当社の場合、役員・幹部社員の全員が皆、元アルバイトで、全員苦楽を共にしてきました。

 そして、私が結婚してから皆が家庭を持つようになりました。以前から、皆とバーベキューをやってきましたが、5年前から1泊2日で子供も一緒に旅行に行くようになりました。幹部社員の奥さまたちも元アルバイトという人が多いので、参加する人たちは皆、家族のように仲良しです。この旅行にやってくる子供たちは、年々大きくなっています。当社はそんな会社なのです。

 当社では、飲食業を展開し、業態開発を行い、またブライダルを手掛けてという具合に、社員たちにいろいろなことにチャレンジしてもらえるステージをつくっています。しかし、「これで足りているのか?」と問われたときに、足りているという状態ではないのではないかと考えるようになったのです。

 それは先ほどの先輩の発言にあるように、奥さまにとって足りているか、新卒で入社しようとする学生の親御さんはどのように思うのか、元アルバイトの幹部社員の次のモチベーションとは……、これが上場したときにどのようになるのか。このようなことを2014年11月から12月ごろにかけて考えるようになりました。

――上場の目的はどのようなものか。

飲食事業「こだわりもん一家」

 年を越すときには新年の目標や方針を立てますが、そのときの私は当社の5年後、そして20年後を考えました。

 2015年の5年後は2020年です。東京でオリンピックが開催されて世界中の人が日本にやって来る。そこで、われわれは東京、そして日本中にたくさん店を持っていて、海外からのお客さまがわれわれの店にたくさんやって来る――という像を描きました。「日本という国は素晴らしいね」「日本の料理は素晴らしいね」と、世界中の人が称賛してくれる日本でありたい。そして、2020年以降のわれわれは、日本のおもてなしを世界に発信できるようになっている存在となろう。そこで、創業20周年の段階で上場企業になっていることがこれらのスタート地点に立つことだ、と考えました。

 そして、上場するのは2017年12月12日と定めました。これは、われわれが1号店をオープンしてから丸20年たったその日です。