お客さまの声分析をVOC(VOICE OF CUSTOMER)と言います。お客さまの声から顧客期待を探す手法です。しかし、お客さまはいつも本当のことを言ってくれるとは限りません。お客さまは思い付いた言葉をそのまま言うのですが、その言葉がお客さまの本当の気持ちではない可能性があります。店舗側が分析しやすいようには言ってくれないのです。ここが店舗の腕の見せどころになります。

お客さまは本当のことをなかなか言ってくれません。

 ある大型店舗にお客さまが来店して、こんなことをおっしゃいました。「5センチ大の丸い磁石が欲しいが見つからない」。担当者が文房具売場を調べたところ、確かにその商品は品切れしていました。

 担当者は丁寧にお詫びし、仕入れ先の在庫状況を確認する旨を申し出ました。仕入れ先への確認後、その報告と該当商品のお取り置きの提案をするとき、お客さまに確認しました。「ところで、お客さま、この5センチ大の丸い磁石はどのようにお使いになるのでしょう? よろしければお教えください」

 するとお客さまは答えてくれました。「5歳の女の子がおり、ピアノを習っている。自宅での自主学習のとき、音符の進行を教える道具として使用したい」

 それを聞いた担当者はおもちゃ売場に音符進行練習商品があることを思い出し、お客さまをおもちゃ売場にご案内しました。そのお客さまは、喜んでその商品を購入し、お帰りいただきました。

 あるスーパーマーケットではお客さまからの投書に対し、店長が丁寧に回答する仕組みを運営しています。お客さまから「店舗と駐車場の間にある小道に横断歩道がなくて危険だ。横断歩道を設置してほしい」という投書を頂きました。

 店長はその投書に対し、「この小道は私道であるため、横断歩道を設置することはできません。申し訳ございません」と回答しました。

 そのやり取りを見たパートさんが店長にこんなことを言ってきました。「あのお客さまは横断歩道を設置してほしいのではなく、安全を確保してほしくて言ってきている。安全確保策は他にもいっぱいあるはずです」。この指摘を受けた店長は反省し、考えられる安全確保策を実施しました。後日、お客さまから丁寧なお褒めの言葉を頂きました。

お客さまの言葉をうのみにしないで、その理由、背景をお伺いする

 お客さまはいつも正確に自分の気持ちを言ってくるとは限りません。最初に思い付いた言葉を言ってくるはずです。その言葉が自分の真意を表しているかを考えずに言ってくるのです。

 従って、店舗側にとって大切なことは、お客さまの提案の言葉からその真意を探り出す行動を取らなくてはならないということなのです。お客さまが目の前にいる場合は、その理由、背景をお伺いします。残念ながら、目の前にお客さまがいない場合はパートさんを中心にしてその理由、背景を想像します。この行動が真の顧客期待を明らかにします。