デジタル事業では 基幹システムの一部貸しも

 ――第4の柱のデジタル事業は。

 上山:デジタル事業はファステック・アンド・ソリューションズやワールドのEC、そしてファッション・コ・ラボなど。そのうちECは好調で、僕が入社した13年ごろはワールドの売上げの3%台だったEC化率が今期末には7%前後まで高まりそうです。

 しかも売上げの中身が良くなっています。13年ごろは主にはバーゲン(B)販路だったのが、今はプロパー(P)比率が相当上がっています。「利益を伴わない売上げは追わない」という方針がここにも浸透していると思います。

 ――ECは在庫連携まで進んできたが、今後の取り組みは。

 上山:ECで買われてしまうとリアルの自分の店で買ってもらえないという思いは過去あったのですが、今では店でサイズ切れしていたらその場でECに注文してもらい家に届けるようにすることを売場でも率先してやってくれています。

 逆にEC在庫がなければ店舗在庫を移動して販売する在庫連携もしています。

 当社のワールドプレミアムクラブのデータを見ると、リアル店舗だけ、ECだけ、両方使って買物をする人の年間購入額を比べると、両方使っている人の購入額が一番多いということが分かってきた。

 だからリアル店舗でのEC誘導を積極的にやっていくということですね。

 逆にEC商品を探したら「やはりよく行くあの店で見たい」という人も増えるようで、来店誘導にもつながるので結果として店側のお客さまも増えるわけです。

 ――EC以外のデジタル事業は。

 上山:昨年10月にITコンサルティングのフューチャーと共同出資でファステック・アンド・ソリューションズという会社を設立しました。これはファッション関連企業を対象に当社の基幹システムの一部、要は販売やMDのためのシステムを一部ずつでも使っていただけますというコンサル営業をやる会社です。これもデジタル系のPFと解釈し、今売り込む活動をしています。その辺りが今後デジタルPFでは面白いところかな。

 ――その他、専門店への卸売事業は。

 上山:実稼働店舗数2000店の専門店への流通チャネルを持っていることそのものが当社の強みです。専門店への卸売上げは確かに徐々に減ってきてはいますが、この最後のロングテールを卸事業会社のワールドアンバーがしっかり獲得させてもらおうと。専門店は地元のシニアのお客さまのサロンになっているので、自社衣料・雑貨ブランドだけではなくてWRS(他社ブランドの販売代行)による他社が提供する例えばムートンの毛布などの商材を含めて見ていただこうと。アパレルの卸から専門店のシニアのお客さまに買っていただけるものの卸という発想に今変わってきています。

 ――18年にも株式を再上場するという話がある。

 上山:まずPLの改革を実行し、キャッシュフローの改善をやって、結果としてバランスシートの改善をしていきますが、当社は有利子負債がまだ多いのでそこを完全に解決するためにはいずれ再上場という選択肢もあるでしょう。しかしそれがいつできるかは分かりません。

価値を生む瞬間に立ち会える 販売スタッフはすてきな仕事

販売会社ワールドストアパートナーズがオンライン上で月1回発行する社内報で「上山健二のお店拝見」というコラム連載を持っているという上山社長。毎月一人で取材に行って店長に現場の話を聞いているらしい。

 ――仕事人生の中で転機になったのは。

 上山:私は銀行に11年、中古車流通の会社に3年、更生会社長崎屋に5年7カ月、マンツーマン英会話のGABAに3年1カ月いましたが、今につながっているのは中古車流通と長崎屋の2つの会社の立て直し経験です。長崎屋は総合小売りで中古車流通も個人のお客さまの自宅に買い取りの出張査定に行く。どちらも消費者と接していて、会社の再生を支えるのは長崎屋ならパートの方の販売力ですし、中古車流通は出張査定に行って真夏の暑い日にスーツを着て車の下に潜り込んで査定する人たちです。

 そこが最前線であり、この商売の全てなのです。お客さまが商品を気に入ってお金を支払ってくださる。その瞬間に立ち会えるのは実は販売員、長崎屋ならパートの方だけ。価値を生む瞬間に立ち会える人が会社を支えてくれる。それを気付かせてもらった経験が自分の転機になったのかなと思っています。

 ――現場で働く販売スタッフにメッセージを。

 上山:ワールドグループはブランドの本部で企画して、自社工場を含め工場で物が作られて、物流されて店に並ぶ。ものすごく多くの人の手を通って商品はお客さまの元に届きます。

 でもその最後のお客さまが笑顔で商品を手に取って買ってくださるという瞬間に立ち会えるのはドレッサー(ワールド独自の販売スタッフの呼称)しかいない。素晴らしい仕事だと思います。

 お客さまが笑顔でお金を払ってくれる商売って少ないと思うのです。ファッション販売は試着して満足し気持ちが高揚するのでほとんど笑顔です。ありがたい商売をさせてもらっていると思いますね。

※本記事は『ファッション販売』2018年3月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。