ワールドの業績が順調に回復している。今2018年3月期の上期のコア営業利益(国際会計基準で日本基準の営業利益に相当)は3期連続の増益となった。3年前に社長に就任した後、中期3カ年経営計画(中計)で構造改革を推進してきた上山健二社長に今後の再成長に向けた戦略の青写真について聞いた。

(聞き手/『ファッション販売』編集長・西岡克)
photo/杉田容子
上山健二(かみやま けんじ)

 1965年5月19日兵庫県尼崎市生まれ。88年3月東京大学経済学部卒業後、88年4月住友銀行(現三井住友銀行)入行。2001年中古車買い取り大手のジャック社長、03年長崎屋社長、09年英会話教室のGABA社長などを経て13年12月ワールド入社、常務執行役員COO(最高執行責任者)補佐、14年6月常務執行役員COO、15年4月から社長執行役員。趣味は野球と走ること。在学中の87年に東京六大学野球秋季リーグ戦で打撃十傑(ベスト10)に入った実力を持つ。

 

 ――今期を最終年度とする中計は実質的にはほぼ終了。減収ながら増益を続け、改革は順調のようだ。

 上山:中計で掲げた利益目標は2年目で達成できました。進めてきたのは利益を出しやすいPL(損益)構造をつくること。「利益を伴わない売上げは追わない」と掲げ、不採算店は初年度に約480店を撤退し、売っても利益が出ないブランドは終息させました。500人の希望退職も募りました。

 ワールドは60年ほどの歴史の中で増収増益を続けてきたいい会社です。優秀な人材も多く、利益につながるような環境を短期間で整えようとみんなで取り組んだのがこの約2年9カ月の構造改革で、想定以上に成果が上がったと思います。

 ――店舗数とブランド数の推移は。

 上山:15年3月期に2855店あった店舗数が17年9月末には2342店と約500店減りましたが、大半が構造改革初年度の退店によるものです。

 終息ブランドは構造改革に伴うものは初年度だけで13ブランド。その後は通常のサイクルの中でさらに少し減りました。ブランド内のサブブランドのようなコンテンツブランドも含めると15年3月期に約90あったブランド数が17年9月末には約60ブランドになりました。

百貨店ではキャリア向け2大ブランドが好調を持続

百貨店キャリアブランドの2大看板である「アンタイトル」と「インディヴィ」(写真)がここ数年好調だ。

 ――今期好調なブランドは。

 上山:チャネル別に見ると百貨店ではキャリアの2大看板である「アンタイトル」と「インディヴィ」がここ数年好調です。ショッピングセンターでは「オペークドットクリップ」が一番いい。「ザ ショップ TK」も好調を維持し、ティーンブランドの「ピンクラテ」もこの1年はいいですね。後はミドルプライスの「デッサン」でデベロッパーから出店要請をたくさん頂いています。

 ――百貨店が苦境の中でなぜ「アンタイトル」「インディヴィ」が好調なのか。

 上山:百貨店婦人服を担当する子会社フィールズインターナショナルの社長である福井淳が「アンタイトル」の屋号長も兼務し、同取締役である丸山紀之が「インディヴィ」の屋号長を兼ねて奮闘し、お客さまが求めている顕在化したニーズとまだ顕在化していないニーズを相当掘り下げて商品化しています。特に「アンタイトル」はシーズンごとによく考えた商品企画をしており、「インディヴィ」は働く女性が会社に着ていける服にこだわって支持を得ています。

 ――4月から事業持ち株会社制に移行した。

 上山:チャネルごと、業態ごとにお客さまの市場により近づこうというのが狙いです。「アンタイトル」「インディヴィ」も百貨店に来られるお客さまにいかに喜んでいただくかという非常にピンポイントな市場のニーズに応えています。

 また事業持ち株会社制にすると社長がたくさん生まれます。従来も事業ユニットリーダーに責任を持たせて責任の範囲のPL(損益計算書)、仮想BS(貸借対照表)、仮想キャッシュフローを作成し毎月月例会で提示していました。しかし会社になると、仮想ではなくホンマ物のバランスシートとキャッシュフローが出てきますので、キャッシュフローがプラスに回っていなければ持ち株会社からの借り入れ状態が続くことが如実に分かる。だからみんな敏感になりますよね。

 ――持ち株会社のワールドも事業を持っている。

 上山:はい。事業セグメントで言えばデジタルです。新設したD‐GROWTH(ディーグロース)戦略本部がワールドオンラインストアをはじめとするEC(電子商取引)事業をしています。

 ――次期中計の方向性は。

 上山:今期は「Rプラン」と呼ぶ中計の3年目なのですが、実は社内では構造改革の総仕上げで次につなげる中計という意味でアルファベットの最後の字を付けた「Zプラン」と呼ぶ新プランの1年目に位置付けています。

 今後はプラットフォーム(PF)事業と呼んでいるワールドがこれまで培ってきた業務の基盤(=PF)をオープン化し、他社にも使ってもらって、新たな収益源とする方向性を打ち出しています。

 現在全社の9割以上の利益を稼いでいるブランド事業の一本足打法のポートフォリオから脱却して、将来的にはPF事業でも稼ぐ会社になろうということです。

 現在の主な領域である国内のアパレルの市場は恐らく右肩上がりで拡大していかない。ブランドを磨いて何とかその利益を維持しながら、その上に毎年PFの利益を積み重ねていくことで、結果として連結利益の持続的な成長をさせていきたいと考えています。