普及期に入って急速に単価が下がり導入が広がりつつあるIC(RFID)タグだが、果たして本当に必要なのだろうか。そんなことを思うのは導入現場の運用精度もともかく、POSの弊害やID決済の急激な広がりが脳裏をかすめるからだ。

 ICタグの効能として検品や棚卸しの効率化が挙げられるが、入荷や出庫のラインを通過する段階でのスキャンはともかく、売場やピッキングヤードで棚卸しする効率は期待ほどではないし、特定の商品を探し出す能力は極めて疑わしい。レジ精算の効率化にしても、一括読み取りでスピードアップできるだけで、レジ精算を不要にするわけではない。1個当たりの単価が10円を割って急速に低価格化しているとはいえ、周辺機器やシステム投資も必要だし、在庫管理だけでなく物流から決済まで業務プロセス総体を見据える必要がある。

POS定着で消化率や在庫回転が改善されたわけではない

 わが国の流通業にPOSが定着して久しいが、それで消化率や在庫回転が改善されたわけではない。むしろ、本部がPOSの数字だけ見て売場を見なくなり、現場の在庫運用スキルが損なわれて、かえって業績が悪化するケースも多かった。イトーヨーカ堂の稼ぎ頭だった衣料部門の衰退など、POSの弊害の最たるものだろう。早期にPOSを導入して管理会計システムに組み込んだ大手企業の多くが、24時間オンライン引き当てが必要なECに対応できず、リンケージに手間取ったり、1日数回のバッチ引き当てで辻褄を合わせたりの四苦八苦も考えさせられる。

システム導入は“早い者負け”になりがち

 一度導入すれば長期間に渡って縛られるシステム導入は“早い者負け”になりがちで、技術革新の先が見えてから導入する“遅い者勝ち”を否めず、コストでも使い勝手でも大差が付き兼ねない。 “後ピン”の情報を使う管理スタンスだけで判断すると、マテハンや物流のリアルタイム活用、オンラインやオフラインの電子決済システムとの絡みで後悔することになり兼ねない。ECを軸にAIやモバイル決済の技術革新が加速して店舗流通に波及し、在庫もレジも無くなる日が迫る中、「QRコード」⇒「バーコード」⇒「ICタグ」といった進化論的発想にとらわれるのもリスクがある。

 今や最前線のIT&フィンテック先進国となった中国で進むリープフロッグ革命が波及すれば、旧先進国の進化論的技術革新秩序(システム投資償却論理でもある)の崩壊は不可避で、ECと店舗小売業の垣根を越えた雪崩的革命が予感される。

 

※リープフロッグ革命:既存のインフラや権益が確立されない段階で技術革新が急進すると蛙飛び的な“超革命”が実現する社会現象で、固定電話網未普及の段階でモバイルフォンが一気に普及し、SCなど商業施設が普及する前にECが覇権を確立し、現金決済システムが確立する前にモバイル軸の電子決済システムが普及した中国の変貌を指して使われることが多い。