2月23日オープンの「ピアゴ大口店」から「アピタ東海通店」「ピアゴ座間店」など、ユニーの6店舗が順次ドン・キホーテ化。「MEGAドン・キホーテUNY」のダブルネームの店舗名で業態転換し、再スタートする。

 GMS(総合スーパー)の不振店舗をDS(ディスカウントストア)業態に転換することで再生を図り、売上げを一気に倍増させて黒字化、ユニーのGMS事業の立て直しを図るというのが、この狙いだ。

業績が「低迷するユニー」と「絶好調のドン・キホーテ」

 ドン・キホーテはピアゴとアピタと同じように、衣料品、住居用品、食品を扱う総合業態である。DSという要素があるとはいえ、GMSである。同じ総合業態でもユニーは業績が低迷しており、ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)のドンキホーテHDとの資本・業務提携に活路を見いだそうとしている。

 ドンキホーテHDは2017年6月期で28期連続の増収増益と成長を継続中。両社の現状は全く対照的で、今回は実質的に「ドンキによるユニー救済」である。

強さの秘密は「安さ」だが、学ぶべきはその演出法

 創業者の安田隆夫氏は以前、「ドン・キホーテは未来のGMSの先取りで最終形を目指す」と言ったが、かつてのGMSの隆盛を考えると、今回の件はアウトサイダーのドン・キホーテの下剋上ともいうべき現象で、改めてドン・キホーテの強さが認識されることになった。

 では、その強さの秘密は何か。

 まず、誰もが「安さ」というだろうが、DSとして低価格を一貫して追求する一方で、安さを意図的に演出している点も見逃してはいけない。「驚安」「超安」「激安」「地域最安値」とピンポイントで安さを強調する手法は、いつ行っても安いEDLPというより、行けば驚くほど安いものがあるという訴求法だ。そのインパクトは大きく、いつも新鮮な安さを感じることができ、ドンキは安いという刷り込みがなされていく。

 ドン・キホーテは、こうした商品を目立つPOPやボリューム陳列でアピールすることで、さらに安さを増長させる。プライスは客観的なものであると考えられがちだが、実は安く感じるか高く感じるかという主観的な要素もある。こうした点をうまく利用してドン・キホーテは安いというイメージを定着させてきたのだ。

 ただ、低価格で売ればいいのではない。安さを2倍、3倍に増幅させて伝える、その技術にドンキは優れているのである。昨年、50インチの4Kテレビを5万4800円で発売し、大きな話題となったが、これも1点突破の驚きの安さをアピールする価格訴求大作戦である。

 お客に伝わらない意味のない「安さ」はいくら展開しても効果を発揮しないが、意味のある安さは必ず伝わる。安さに意味付けする重要性をドンキは熟知しているのだ。

 また、「消費者の価格に対する意識が高いとしたらコンビニはとっくにつぶれている。意識が高まっているのではなく、競争が意識を高め、潜在需要を喚起する」(大原社長)の考えが、さらなる低価格へ挑む原動力となっている。

お客目線のバラエティな品揃えも魅力の一つ

 安さを打ち出す一方で、品揃えのバラエティさもドン・キホーテの魅力となっている。かつて「何でもあるけど買いたいものがない」と揶揄されたGMSも、豊富な品揃えを誇ったが、その展開方法が大きく異なる点にも注目したい。

 GMSは店舗の大型化に伴い、ラインロビングをしながら品揃えを拡大して利益率の高い商品も導入し品数を増やしていった。これに対して、ドン・キホーテは自らのお客を想定し、ドンキで売るのにふさわしい商品を選んだ結果、バラエティな品揃えになった。この売り手都合と買い手都合の違いは大きく、その後の明暗がはっきり分かれたということだ。

高い変化対応力は現場への権限委譲から生まれる

 さらに、ドン・キホーテは電子タバコ「IQOS(アイコス)」の売場導入などに見られるように、新商品や流行に敏感でいち早く対応する。この変化対応力が功を奏し、ドンキの売場が刻々と変わることで、新たな魅力を創り出している。

 そして、そのために重視しているのが「現場」である。「店舗が一定のルールの下で自由裁量で知恵を絞り、その総量が売上げだったり、利益を生み出している」という大原社長の認識の下で現場への権限委譲が進み、マーケットに合わせたMDや売場づくりを推進している。

 既に、ドン・キホーテにはこれを実現する組織ができており、店舗ファーストの考え方が浸透している。GMSも個店対応に力を入れているが、一歩も二歩も後れを取っているのが現状なのだ。

ダブルネーム展開でMEGAドンキの大衆化が加速

 ドン・キホーテには、新宿や渋谷など都心部で展開するアミューズメント性の高い「ピュアなドン・キホーテ」と、主に郊外で展開するGMS的性格がより強い「MEGAドン・キホーテ」がある。前者はこれからも若者を中心に支持を集めていくだろうし、後者は主婦や中高年などより幅広い層を取り込んでいくだろう。

 GMS再生のジョーカーとしても期待されているMEGAドンキ。ユニーとのダブルネームでの展開を始めることで、これからは何かないかと探す楽しみを残しつつ、日々の生活に必要なものを買いに行く役割を高めて、その一般化、大衆化が進んでいくだろう。その匙加減をいかに適正なものにしていくかも今後の見どころである。

 ここで説明したようにドン・キホーテはGMSといえばGMSだが、一般的なGMSとは似て非なるものでもある。つまり、ユニーが取り組むGMS蘇生は従来の常識が非常識となる新たな命が吹き込まれる大手術となるわけだ。