年も明け、冬物セールも一段落する頃、百貨店、セレクトショップ、量販店等はセレモニー(入・卒儀式出席服)訴求一色に彩られる。新春はいろんな意味で気分を一新させてくれものだ。ポイントに華やかな色使いされた商品を眺めているだけで、気持ち良くなるものだ。

ドレスコードを導入しても、ルールや背景は浸透せず

 今回は、新春、新年度を迎えるにあたって紳士を中心としたオフィス・ウエアについて取り上げてみたい。

 東京の企業の7割近くにドレスコードが導入されている。

 しかし、そのうちの40.5%が暗黙のルールによるもので、ルールの背景も知らない人が63.7%と、企業を取り巻く「空気」が支配している。2016年に株式会社モニタスが東京のビジネスパーソン800人聞いたところ、そんな結果が出た。

 職場の「空気」を重んじる、いかにも日本らしい結果にうなずくとともに、オフィスのあるべきドレスコードについて考えてみたい。

 オフィス・ウエアとして第一に優先されるべきことは「働きやすさ」だろう。能動的なのはもちろん、精神的にも気持ち良く働けることが重要だと思う。そして、対外的には相手に失礼と感じさせない心使いなど気を配りたい。

 やはりファッションは身に付けるもので、着ている人のセンスがうかがい知れるもの。先のモニター調査によれば、オフィスのカジュアル化への賛成者は全体の約8割と寛容的な反面、スーツなど服装が決まっている方が楽と応えた人も約3割以上いるのは少し気掛かりな数字だ。

 最近、感じることの一つにお洒落も知性の一つではないかと思うことがある。洋服の素材特性や手入れ、色や柄の組み合わせなど、四季が豊かに訪れる日本においてその時期に合った服装は、「たかが服・されど服」なのである。まぁ、手っ取り早く云えばT.P.Oともいえる。

ネクタイを外して、襟元のボタンを開けた姿は……

 オフィスのカジュアル化が本格的にスタートしたのは2005年からのクールビズのキャンペーンから。当初は「夏場の軽装による冷房の節約」という地球環境を意識したものだったので、担当省庁も経済産業省ではなく、環境省からの発信だった。

 それが2011年の東日本大震災による東日本の電力不足の予想から、実施期間の延長と、もう一段階進んだ「スーパークールビズ」が提唱された。環境省がまとめた服装規定は下の図表の通り、指針として具体的にまとめられている。

 

 実はファッションとは面白いもので、この表のように具体的にまとめたからといって素敵なクールビズファッションは完成しない。いつも通りのスーツスタイルにネクタイを外して襟元のボタンを開けた格好は、ただの「湯上りオヤジ」にしか見えない。

 特に、夏場の新橋、有楽町あたりで大挙する姿は甚だ見苦しさを感じるし、時の政権スポークスマンの会見の絵面を見ても、この国のファッションリテラシーの低さを思い知らされる。

マイナスしたら、どこかをプラスしないとバランスがとれない

 これは、クールビズファッションが拡がったゆえんにもつながるのだが、「クールビズ」=「ファッションの簡略化」として捉えられているからだろう。

 簡略化・軽装とは、ただただマイナスにしておしまいにするのではなく、マイナスした分をどこか何かしらをプラスしないとバランスが取れないものなのだ。

 クールビズシーズン到来の、朝の情報番組のキャスターのファッションを観ても面白い。ちゃんと気を使っている局もあればそうじゃない局も。素敵なクールビズファッションの参考になるはずだ。

私はネクタイの代わりに蝶タイ、スカーフで軽装化

 ちなみに私は、どうしているかというと。「湯上りオヤジ」になるのは嫌なので、夏場はネクタイの代わりに蝶タイやスカーフで簡略・軽装化するようにしている。特にビジネスシーンに際しては、私なりのT.P.Oと気分でタイド、蝶タイ、スカーフのいずれかを選択している。

 すると時々、例の湯上りオヤジたちから「暑くないですか?」なんて、さも暑苦しそうみたいな一般・多数派的な圧力をもって、声をかけられることがある。

 職業柄、そんな圧力にも屈するタイプではないが、普通の人に私のようなやり方は、まだまだハードルが高いのかもしれない。例えばノージャケットはジャケットを着ないのではなく、代わりにサマーカーディガンを着用へ簡略。ノータイにする人は、シャツデザインや小物類でプラス要素を加えるといった、バランス感覚こそが大人の知性の現れなのだ。

 冒頭でも触れた通り、オフィス・ウエアが職場の「空気」を重んじる解答値ならば、『脱・湯上りオヤジファッション』の普及には時間が掛かるかもしれない。冒頭にあったアンケート結果からはオフィスのカジュアル化への取り組みには前向きな姿勢がほとんど。

 ならば、今こそチャンスではないか。

 私の提案のように、ただマイナスするのではなく、代替商品やテクニックを取り入れることによって、停滞気味とやゆされるクールビズ商戦にも一石を投じることができるのではないか。ここは業界が一つとなって取り組んで欲しい課題の一つでもある。