「サービスのエコシステム」を知ろう

 次に、ICTと流通、マーケティングの関係に焦点を当てて考えてみましょう。その際、「エコシステム」「リアルタイム性」「モデリング」「AI」に着目しなければなりません。

 1980年代以降、流通、マーケティングにおける研究面、実務面において、CRMという概念が誕生しました。CRMは、顧客データを収集、カテゴリーごとに識別、分析するマーケティング管理手法です。いわゆる、データベース・マーケティング、One to One Marketingと呼ばれるものです。

 CRMは時代と共に進化してきました。2010年代以降、スマートフォン、SNSの普及に伴い、従来のアンケート調査で収集した顧客データ、POSデータ、ID-POSデータのような購買履歴データだけではなく、生のお客さまの言動、行動等がICTの活用によりデータとして可視化されるようになりました。

AIは自律的にモデリングをし、最適解を提示する

 昨年発売され、話題になったAmazon EchoやGoogle Homeをイメージしてみてください。これら商品は高度な情報処理技術、AI等を駆使し、顧客の生の音声データ、行動データ等(バイアスのかかっていない貴重な顧客の生の情報)をリアルタイムに収集します。そのデータを自律的なアルゴリズムに基づき、かつ、顧客の事前経験を加味し、モデリングを図ります。

 その結果、顧客の潜在ニーズや購買行動を予測し、効率的、効果的に顧客に商品やサービスを提案できるようになります。

 この事前経験を加味した統計分析手法をベイズ統計といいます。アップル、アマゾン、グーグル、Facebook等が必死に研究開発を続けている「ディープラーニング」という考え方です。皆さんがご存じのAmazonのリコメンデーション機能や、Googleのページランクの考え方は、上記に近い概念です。

 このようにAIには、自然(オーガニック)な環境において、顧客のニーズや不満等を収集し、自律的にモデリング(推論と学習)がなされ、最適解が提示されるという利点があります。

 この自律的なモデリング現象を「サービスのエコシステム」と呼んでいます。上記内容を踏まえ、新しい世代のICTの特徴をまとめた概念図(西岡 2015)が図表②です。

 

SCMでもICTを活用する能力が重要に

 ICTを活用したサービス・イノベーションを捉える際、「生産性向上」と「価値創造」のバランスは重要です。

 ICTを支える鍵概念(イネーブラー)である、「自律性」「柔軟性」「協同化」「リアルタイム性」を軸に、顧客の信頼向上を図るべく、「統合的視点」「プロセスの可視化」「顧客関係性の強化」を意識すべきです。

 その結果、企業は顧客とのコミットメント、エンゲージメントを強化することができるのです。そのための手段がビッグデータ、SNS、AIです。特に、SNSのような動態的なプラットフォームをうまく活用し、CRMのようなマーケティング活動に加え、企業間取引のSCMにもICTを活用する能力が今後、小売業、サービス業にますます求められるでしょう。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見真也)