情報提供義務違反や指導援助義務違反の場合に本部が賠償すべき損害は、これらの義務違反と「相当因果関係」のある損害に限られます(民法416条/本部が賠償すべき「損害の範囲と過失相殺」参照)。

 しかし、相当因果関係があるからといって、必ずしも全額の賠償が認められるわけではありません。

 実際に本部が加盟店に対して支払うべきとされる損害賠償の額は、さらに限定される可能性があるのです。

 それが「過失相殺」です。

過失相殺の現状はどうなっている?

 過失相殺とは、損害賠償を請求する債権者(被害者)にも過失がある場合に、その過失の割合を考慮して損害賠償の額を減額する制度です(民法418条、722条)。

 この制度の趣旨は、債権者(被害者)と債務者(加害者)との間で発生した損害を公平に分担することにあります。

 FC契約において、加盟店は独立した事業者である以上、自らの判断と責任で情報を収集・検討した上で、FC契約を締結するかどうかを判断しなければならないという建前があります。

 そのため、情報提供義務に違反した本部と、自己の意思決定によりFC契約締結に踏み切った加盟店の間の損害の分担という観点から、多くの裁判例において、加盟店にも一定の落ち度があるとして過失相殺が認められています。

 その結果、広範な損害・高額の損害が認定されたとしても、最終的に本部が支払うべき賠償額が下がることになります。

 加盟店にしてみれば、「自分たちは本部にだまされた被害者なのにヒドイ!」という気持ちになるかもしれませんが、裁判例の多くが自己責任論を前提として過失相殺を認める傾向にあるため、加盟店は、この前提をどのように突き崩していくかを考える必要があります。

過去の裁判例では過失相殺率50%が一つの目安に

 次に具体的な過失相殺率について見ると、過去の裁判例では、50%の過失相殺率が一つの目安となっているようですが、各裁判例における過失相殺率は事案の特殊性に応じてさまざまです。

 事案によっては70%~80%もの過失相殺が認められる場合もありますが(福岡高判平成13年4月10日判タ1129号157頁、千葉地判平成19年8月30日判タ1283号141頁、東京地判平成23年6月9日公刊物未登載)、本部と加盟店との間において、FC契約に関する知識・経験、情報量、組織的力量などに決定的な差があることや、本部の情報提供義務違反の内容や程度が重大であることを考慮し、25%の過失相殺にとどめたものもあります(福岡高判平成18年1月31日判タ1216号172頁)。

 これらの裁判例に対し、本部が故意に著しく不合理な売上予測を提示した事案で、「フランチャイズ契約において本部側が加盟者側に対して負うべき基本的な義務に故意に違反したというものであり、その義務違反の程度は重大というべきであるのに対し、被告側には特段の落ち度は認められない」として、過失相殺が否定されたものがあり(東京地判平成15年2月24日公刊物未登載)、注目に値します。

過失相殺は加盟店の「自己責任論」を前提にしている

 多くの裁判例は、過失相殺にあたり、加盟店が独立した事業者であり、自らの判断と責任で情報を収集・検討した上で、FC契約を締結するかどうかを判断しなければならないという自己責任論を前提にしています。

 そのため、おおまかにいえば、①加盟店の知識・経験の有無、②加盟店自身の自発的な調査・判断の有無が過失相殺の主な考慮要素となっています。

 具体的には、加盟店が本部に対して何ら説明や情報の提供を求めなかったり、提供された情報の正確性や合理性を吟味しなかったり、独自に情報収集や調査分析をしたりせずに、本部の説明だけを頼りに開業を決めたような場合には、過失相殺の要因として考慮されることになります。

 また、FC契約を締結する前に店舗事業や融資業務の経験があったり、経営コンサルタントなどの助言を得られる立場にいたりして、そのような情報収集や調査分析を行う資質・能力が十分にあるといえる場合には、過失割合が高くなる傾向があります(福岡高判平成13年4月10日判タ1129号157頁、大津地判平成21年2月5日判時2071号76頁など)。

 少し特殊な事例ではありますが、加盟店が融資を申し込んだ金融機関から問題点を指摘されたにもかかわらず、あえて開業を決定したような場合(東京高判平成11年10月28日判タ1023号203頁)や、加盟店が自らの資金状況を本部にきちんと説明しなかった結果、本部が適切な指導援助をすることができなかったような場合(京都地判平成3年10月1日判時1413号102頁)などにも高率の過失相殺を認めています。

消費者保護的な考慮が強く働くケースも多い

 このように、加盟店が本部に対して損害賠償請求をする場合、過失相殺はほぼ確実に認められてしまいます。

 トラブルを未然に防止するため、加盟店としては、FC契約の締結段階において、本部に情報の提供を求めるとともに、独自の調査を行い、FC契約に詳しいコンサルタントや弁護士に相談してから事業を開始するのが重要であることは言うまでもありません。

 しかし、紛争になってしまった場合には、加盟店は、過失相殺の前提となっている自己責任論を突き崩していかなければなりません。

 FC契約では、必ずしも対等な企業間というわけではなく、実質的には個人に近い加盟店と大企業である本部との間のトラブルが多いため、裁判所の判断においても消費者保護的な考慮が強く働いているケースも多く見受けられます。

 加盟店としては、そこに着目し、加盟店自身の属性(年齢、身上経歴、社会的地位、資産・収入、事業経験の有無、日常携わっている職務の内容など)について具体的に主張し、実態として当事者間の情報量・組織力の格差が非常に大きいことを強調していくべきです。

 また、本部の義務違反の内容・程度や、それが加盟店の判断に及ぼした影響の大きさなどを強調していくことになるでしょう。