加盟店が本部に対して損害賠償を請求する場合、情報提供義務違反(「FC契約」締結の際、本部が加盟店に提供すべき情報とは?」参照)などを主張立証できたとしても、それで一安心というわけにはいきません。

 加盟店や本部にしてみれば、「結局どのくらいの賠償金を支払ってもらえるのか(支払わなければならないのか)」が肝心です。

 そこで問題となるのが「損害の範囲」と「過失相殺」です。

損害賠償の範囲は限定される

 本部の義務違反により加盟店に損害が発生した場合であっても、本部は、必ずしもその全ての損害を賠償しなければならないわけではありません。

 本部の義務違反との因果関係をたどっていくと賠償の範囲が広がり過ぎるため、「どの範囲を賠償させるのが相当か」という観点から、本部が賠償すべき損害は、相当因果関係のある損害に限られることになります(民法416条)。

 例えば、必要な情報を提供されないままにFC契約を締結し、加盟金や開業準備費用を支払って開業したものの、業績は上がらずに赤字が膨らむばかり。加盟店オーナーは赤字を埋め合わせるためにカードローンによる借入れを繰り返し、莫大な借金を背負うことになり、店の経営を手伝っていた妻も過度のストレスにより持病の心臓病が悪化して長期入院することになったとします。

 加盟店からすれば、因果関係のあるこれらの全損害を賠償せよということになるし、本部からすれば、情報提供義務違反は責められるべきであるとしても、予想できないような損害まで負担させられるのではあまりにも加重ということになります。相当因果関係は、このような義務違反と因果関係のある損害のうち、どの範囲を賠償させるのが相当か(=公平か)という問題であるといえます。

 それでは、具体的にどのような損害が本部の義務違反と相当因果関係にあるといえるのでしょうか。

 裁判例を見ると、情報提供義務違反の場合、開業に伴う支出(加盟金、開業準備費用など)などは相当因果関係のある損害に含まれ、開業後のロイヤリティ、店舗の賃料、仕入代金、開業後の営業損失や逸失利益などは、原則として損害賠償の範囲に含まれないとする傾向にあります。

 ただ、裁判例の結論は必ずしも論理的に一貫しているわけではなく、個別の事案ごとに相当因果関係の範囲に含まれる損害を認定し、実質的な結論を導いているといえます。

開業に伴って支払った費用で対象にならないのは?

① 加盟金

 加盟金は、FC契約締結の前後に提供されるフランチャイズ・パッケージ(立地調査、研修指導、店舗設計指導、開店時のSV派遣費用など)の対価に当たります。契約金、入会金などと呼ばれることもありますが、その実質はおおむね同じものといってよいでしょう。

 この加盟金については、本部の情報提供義務違反がなければ加盟店が契約締結に至らなかったものであり、支払うことのなかった費用といえます。そのため、多くの裁判例で賠償すべき損害の範囲に含まれるものと判断されています(福岡高判平成18年1月31日判タ1235号217頁、さいたま地判平成18年12月8日判時1987号69頁、仙台地判平成21年11月26日判タ1339号113頁、東京地判平成23年6月9日公刊物未登載など)。

② 店舗保証金

 開業にあたって店舗の賃借のために差し入れた保証金は、FC契約終了時にすべての債務を差し引いた上でその残金が返還されることが多く、その場合には加盟店にそもそも損害が生じないことになります(福岡高判平成13年4月10日判タ1129号157頁)。これに対し、契約期間中の償却などにより加盟店に返還されない部分については、賠償すべき損害に含まれることになります(東京高判平成11年10月28日判時1704号65頁)。

 保証金が返還されることになっているかどうか、また返還の条件がどうなっているかについて、改めてFC契約書を確認してみてください。

③ 店舗改装費用

 店舗改装費用も店舗を開設するために支払った費用であり、本部の情報提供義務違反がなければ支出しなかった費用であるため、賠償すべき損害に含まれるものとされています(千葉地判平成19年8月30日判タ1283号141頁、大津地判平成21年2月5日判時2071号76頁、東京地判平成23年6月9日公刊物未登載)。

④ 什器備品・消耗品の購入費用やリース料

 什器備品・消耗品の購入費用やリース料についても、本部の情報提供義務違反がなければ支出の必要がなかった費用として、多くの裁判例で賠償すべき損害の範囲に含まれるものとされています(福岡高判平成18年1月31日判タ1235号217頁、千葉地判平成19年8月30日判タ1283号141頁、仙台地判平成21年11月26日判タ1339号113頁など)。

 ただ、什器備品・消耗品といってもさまざまなものがあるので、什器備品・消耗品であることから当然に相当因果関係のある損害に含まれるというわけではなく、やはり個別の事案ごとの判断ということになります。例えば、車両購入費につき、車両の所有権が加盟店に帰属し、通常の自動車としての財産的価値があることを理由として、損害に含まれないと判断した裁判例があります(さいたま地判平成18年12月8日判時1987号69頁)。

⑤ 開業準備の手数料

 開業のために支出したさまざまな手数料も賠償すべき損害として認められます。例えば、店舗賃借のための仲介手数料、行政機関に対する届出手数料、司法書士報酬、印紙代などを損害として認めた裁判例があります(東京高判平成11年10月28日判時1704号65頁、大阪地判平成14年3月28日判タ1126号167頁など)。