これまでの連載で、「小売業のビッグデータをどう活用していけばよいか」をテーマに、POS/ID-POSデータの基本的な分析方法と活用方法を紹介してきた。

 データ活用に注力してきた小売企業では既にこうした分析を実践しているところも多いだろう。しかし、データ分析で「乳製品の売上げが前年比90%に落ち込んでいる」「40代女性の客単価が落ちている」といったことを把握できても、それを次の具体的な打ち手につなげられず、社内でデータ活用の機運が低下してしまっている企業も少なからずあるように思う。

 そこで、連載の第4回では、ID-POS活用でお客さま像を理解し、実際の打ち手を導き出す手法を、具体的な事例を用いて紹介する。

ID-POSデータから「お客さまのニーズ」が捉えられる

 ID-POSの普及で「お客さま一人一人の購買行動」を把握できるようになった。

 しかし、これからマーケティング施策で重要な「お客さまのニーズ」まで捉えることは難しい。

 なぜなら、ニーズを捉えるには、「お客さまのライフステージや意識・価値観を理解する必要がある」からだ。

 一般的に、意識や価値観を理解するためにはアンケートを実施するが、顧客全員に対して行うと、莫大な費用が発生し、現実的ではない。

 では、どのようにしてお客さまのニーズを把握するのか。ここで用いられるのが、連載第2回でも紹介した「商品のDNA」だ。

 ここではインテージのID-POS分析サービス『Genometrics(ゲノメトリクス)』を用いて、お客さまのニーズを捉え、打ち手までつなげた具体的な事例を示してみたい

打ち手を導くのに不可欠な「生活者としての像」

 事例紹介の前に、簡単に『Genometrics(ゲノメトリクス)』について説明しておきたい。

 インテージは従来の「生活者を知る」というアプローチを強化し、店舗開発・改装、販売促進、MD・品揃え、商品開発と幅広いマーケティング領域での支援を展開している。その一つとして、小売業向けのデータ分析支援サービスとして開発したのが『Genometrics(ゲノメトリクス)』。

 これでは全国約5万人の生活者への意識と価値観のアンケートと、彼らから日々収集している購買データをベースにし、ID-POSデータだけでは見えない「お客さまのライフステージや意識・価値観」を明らかにできる。性別、年代といった会員情報から把握できる属性だけでなく、「健康意識、消費価値観などお客さまの内面的な特徴」、さらに「そのお客さまの潜在的な購買規模」も含めて、「生活者としての像(人となり)を浮かび上がらせる」ことが可能。そのため、店舗づくりや売場づくりに際して、具体的にどのようなマーケティング行動をとったらよいかが分かるようになる。

『Genometrics(ゲノメトリクス)』では、最初に小売業の持つID-POSデータに2つの情報を付与する。商品にはその特性を示す「商品のDNA」、会員にはお客さま理解を深める「顧客のDNA」。

「商品のDNA」とは、商品がどのような人に購入されやすいかをスコア化したもので、「節約志向のお客さまがよく購入する商品」や「健康志向のお客さまがよく購入する商品」といったように、さまざまな意識・価値観のスコアが商品一つ一つに付与される。一方の「顧客のDNA」とは、お客さま一人一人が持つニーズや意識・価値観をスコア化したもの。「簡便志向のお客さま」「本格志向のお客さま」というように、お客さまごとにさまざまな意識や価値観のスコアが付与される。

ストア・ロイヤルティの向上、ターゲットに適したアプローチも可能

 この「商品のDNA」と「顧客のDNA」にはさまざまな活用方法がある。

 まずは「商品のDNA」。これを、カテゴリー横断の独自の売場を作るときに活用すれば、来店客の興味・関心やライフスタイルに合った売場づくりができる。

 例えば、「健康」というテーマで売場を構築する場合、トクホや機能性表示食品を選ぶことは容易だが、日用雑貨も含めた多くの商品を「健康」のテーマで選ぶのは意外と難しい。

 しかし、「商品のDNA」では商品一つ一つを「健康」に関してスコア化しているため、カテゴリーに関係なく、「健康志向のお客さまに選ばれやすい」商品を選定できる。

 小売店はこれを進めることで、「健康」意識が強いお客さまに「自分に合った品揃えのお店」と認知、良い印象を持ってもらうことで、ストア・ロイヤルティを向上できる。

 次に「顧客のDNA」。これを用いると、「顧客」という大きな1つの固まりを、意識・価値観の近いお客さまでグルーピング、いくつかのお客さまセグメントに分類できる。

 そのお客さまセグメントを軸として、ID-POSデータを分析すれば、例えば、「節約志向」の価値観を持つお客さまが店頭でどのような商品を選ぶのかが把握できる。

 それにより、小売店はターゲットとするお客さまに適したアプローチ方法を選択可能になる。