第8回は、「価値共創」です。

 皆さん、価値共創という言葉を聞いたことはありますか?

 価値共創を英語にすると、「Co-creation Value」になりますが、この価値共創の定義については、さまざまな学者がそれぞれの見解を述べています。

経営学とマーケティングの分野で登場する

 経営学の分野では、Prahalad and Ramaswamy(2004)が『価値は企業と消費者が様々な接点で共創する体験の中から生まれる。』と定義しています。

 Vargo & Lusch(2004)は『Service-Dominant Logic(以下、S−D Logic)において、価値を生み出すのは企業と顧客の双方であり、様々な顧客接点や相互作用を通して、双方向的な形で価値は共創される。』と記しています。

 マーケティングの分野では、北欧のサービス・マーケティング研究の大家であるGrönroos(2007)は、『顧客は価値創造者、企業は価値促進者として捉えられる。顧客と企業は、直接的な相互作用関係にある拡張された消費概念によって消費プロセスの時空間に広がりが得られる。』

 日本の価値共創マーケティング研究の第一人者である、井上・村松(2010)は、『S-D Logicでは、購買の前後も含む消費や使用の様々な文脈の中で、企業と顧客の共創によって実現される「使用価値」(Value-in-use)ないし「文脈価値」(Value-in-context) を重視する点に特徴がある。』と述べています。

 また、村松(2015)は、価値共創マーケティングを『顧客の消費プロセスにおける企業と直接的な相互作用を前提としており、企業はその相互作用の一翼をマーケティング行為という形で担っている。』と定義しています。

価値創造は「コト発想」の概念

 価値共創という概念は、従来のモノ発想ではなく、コト発想の概念です。昨今、価値共創マーケティングという概念が生まれた理論的背景には、従来のモノを中心とした4Psマーケティングだけでは、顧客の満足度(ロイヤルティ)の向上と、顧客との長年にわたる絆(エンゲージメント)の構築が難しくなってきた点が挙げられます。

 モノが提供する機能的価値や感情的価値だけでは、顧客の心をつかむのが難しい世の中なのかもしれません。その結果が商品のコモディティ化、低価格志向につながっていると言え、こうした現状を解消すべく、関係性マーケティング、サービス・マーケティング研究の蓄積の上に価値共創マーケティングが生まれてきたわけです。

サービス・マーケティングの考え方を知ろう

 価値共創マーケティングを理解するには、その概念に大きな影響を与えているサービス・マーケティングの概念を知ることが必要になります。

 この研究には大きく2つの潮流があります。

 一つは北米型研究、もう一つは北欧学派。

 前者の代表論者は、「サービス・プロフィット・チェーン」という概念を提唱したHeskett(1994、2003、2008)で、後者の代表論者は、Grönroos (2007)。現在、両者は研究上、相互に影響し合いながら、交流を続けています。

 北米型研究は、B to Cビジネスを前提としており、サービス品質、顧客満足度に力点を置いた定量的研究が中心になっています。

 一方の北欧学派は、B to Bビジネスを前提とした関係性マーケティングをベースとした研究で、その特徴は、従業員満足度を上げるために相互作用、インターナル・マーケティングを重視している点です。

 また、北欧学派の研究の本質を知るキーワードには、「Empowerment(権限移譲)」と「Enabling(場、状況作り)」があります。企業との産学共同研究を行う点も特徴で、北米型研究とは異なり、定性的研究に力点が置かれています(両者の研究上の違いは、図表①参照)。

 

小売業、サービス業で重要な「真実の瞬間」

 北欧学派のNormann(1991)が主張する「サービス・マネジメント・システム」という概念にも注目です。

 この概念は、全社的な視点でサービスをマネジメントするフレームワークで、「組織理念、文化」を中心に位置付け、「マーケット・セグメンテーション」「サービス・コンセプト」「サービス・デリバリー・システム(仕組み、インターナル・マーケティング)」「イメージ」の4つで構成されています。