丸亀製麺のレストラン型レギュラー店。当初はこのタイプの店の出店を進めてきたが、現在は小型のエクスプレス店との二本立ての戦略をとっている。

 世界12の国と地域に進出している丸亀製麺は、進出先に合った業態を複数展開するマルチポートフォリオ戦略のもと、意欲的に「うどん文化」を海外に広げている。2017年3月末現在で店舗数は国内に778店、海外に186店。グローバル化を推し進める外食企業の中でもリーダー的な存在だ。

 しかし、全ての進出先でうまく軌道に乗っているわけではない。円滑にビジネスが進んでいる国もあれば、思うようにはかどっていない国もある。多少の濃淡は否めない。前者の代表格が台湾やベトナムだとすれば、タイは後者だ。

麺の太さと硬さにつゆの濃さ、日本のままでは難しい

 2012年、丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスとタイの地場不動産会社は合弁でNODU FOODSを設立。NODU社がフランチャイズ権を獲得し、タイで丸亀製麺を展開している。店舗数は2017年末時点で34店。着実に増えてはいるが、その道のりは試行錯誤の連続だったという。

 NODU FOODSの長谷川真也氏は言う。

「タイはチェーン展開が難しい国。日本食は人気ですが、あまりにも日本食の種類が多過ぎて、うどんがなかなか選択肢にあがりません。麺もスープも日本のままでは受けにくいですね」

 タイには「クイッティアオ」と呼ばれる伝統的な麺料理がある。だが、材料は小麦粉ではなく米粉。小麦粉由来のうどんとは食感も太さも異なる。クイッティアオの方が細く、食感はあっさりとした印象だ。

丸亀製麺の売れ筋の1つ、「かけうどん」は、タイでは人気がないため、メニューからカットしている。つゆを味わう食べ方はタイではなじまないようだ。

「お客さまからは当初よく『麺が太い』と言われました。タイ人は小麦のグルテンも好きではないらしく、コシが強過ぎる点も不評です。つゆも日本のままでは難しい。タイでは甘い、辛い、酸っぱいなど濃いスープが好まれるからです。ベトナムにも米粉を使ったフォーがありますが、フォーのスープは日本のかけうどんのつゆと似ているせいか、2014年に進出したベトナムではうどんが抵抗なく受け入れられました。かけうどんの人気も高いですね。一方、タイではかけうどんは全く駄目。メニューから外したほどです」

 麺が太い、スープが物足りない、コシが強くて粘り気があり過ぎる。タイ人の声を受けて、長谷川氏は麺を少し細くしたところ、今度は日本人客からクレームが出た。タイの丸亀製麺は主にタイ人をターゲットにしているが、店によっては日本人客が多い。タイに旅行に来た日本人観光客が丸亀製麺に立ち寄るケースも少なくない。日本人客の声を完全に切り捨てることもできないと、太さを戻した時期もあるそうだ。

 うどんの固さやつゆも見直しを余儀なくされた。

「ゆで時間も、少し柔らかくゆで上がるようにしました。スープについては、タイ料理同様、テーブルの上に酢や、唐辛子、砂糖の3種類からなる調味料をセットし、各自でカスタマイズしてもらう形にしています。タイは麺をすすらない文化。麺を食べるときにつゆがあまり口に入っていかないんですね。だからといってつゆを濃くしてしまうと、『ケム』(タイ語で塩辛いこと)と言われてしまうので、辛味が欲しい方は自分で調整してもらう形で対応しています」

模索の中から3種類のヒット商品が生まれた!

人気メニューの1つ、「スパイシーポークうどん」。かけうどんのつゆをベースに、ライムや砂糖、唐辛子を加えてタイ風に味付けしている。
タイ人にとって食べ慣れたポピューラーなトムヤムクンの味を取り入れた「スパイシートムヤム」もタイ人のファンが多い一品だ。


 タイが日本食ブームに沸いているのは事実だが、タイの一般的な顧客に対して日本から来た料理がそのままの形で人気を維持できるほど簡単なマーケットでない。爆発的なブームとなっている寿司も、人気の中心はサーモンを多用したデコラティブな寿司だ。日本の寿司とは大きく違う。

 うどんとしての本質を残しながら、何を変え、何を残すか。模索が続く中、ヒットメニューも生まれている。「スパイシーポークうどん」「スパイシー豚骨うどん」「スパイシートムヤムうどん」の3種類だ。

「スパイシートムヤムうどん」の「トムヤム」は、日本人が想像するトムヤムクンの味ではなく、一般のタイ人が普段食べ慣れているママー(タイの代表的なインストンラーメンブランド)のトムヤム味。レストランのトムヤムクンではなく、インスタントラーメンのトムヤムクン風味だ。

うどん以外のメニューも強化中。「かつどん」はタイ人に人気が高いご飯メニューの1つ。「カツドン」として定着しつつある。

 うどん以外のメニューも増やしている。

「バンコク中心部にあるショッピングモール・レインヒル内にオープンした1号店では、当初メニューはうどんだけでしたが、それでは客層が限られてしまう。

 そこで品揃えを徐々に増やし、現在は「焼きうどん」やカツ丼、弁当なども販売しています。「焼きうどん」は好評ですね」