食料支出が上がらないと業界が厳しくなる

 ーー物価はどうなると見ていますか?

 田尻:ある程度、インフレに持っていきたいと思っている。極端なインフレではなくて。われわれの産業においては、価格を下げるという前提、傾向になりつつある。結果的にお互いに首を絞め合っているような状況になっているので、適度な利益を確保していかなければ人件費に振り替わらないし、投資にも回らない。

 商品の価格が低過ぎると思う。ただ、徐々に上がっている。エンゲル係数は微妙に上がってきている。底を打ったという感じ、打たざるを得ないから打った。

 ここ2、3年、生鮮、特に青果物の相場が高騰していることや、人件費や包材あるいは為替の問題で結果的に上げざるを得ない環境になっているから徐々に上がっている。

 そうはいっても2016年のエンゲル係数は25.8%。私は1979年にこの業界に入ったが、1980年のエンゲル係数よりも下がっている。

 しかし、収入は上がっている。でも、支出の仕方が変わっている。当時は携帯電話はなかった。支出が振り替わってきており、支出はトータルで増えているが、食料品への支出はどんどん落ちているわけだ。どこが適正かは分からないが、多少のインフレに持っていきながら食料に対する支出金額を上げてもらわないと、われわれの産業はますます厳しくなると思う。

 ーーどのような商品で食料への支出を上げていくことになるのでしょう。

 田尻:上がっているのは生鮮食品。魚も高い、肉も上がっている。青果物は天候の関係で上がっている。これを原料として使っているところは、工業製品といわれるグロサリーも上がらざるを得ない。

 ーー惣菜の分野はどうなるとお考えですか。

 田尻:工業製品的につくっていく惣菜と、手作りの惣菜では価値観が違う。コンビニがやっている部分とSMの店内でやっているものでは味が違う、品質が違うので、消費者が使い分けしている。

 データを見ると惣菜を使っている人には、1人で生活していて料理するよりは惣菜で済ませるという人と、高齢になっていて単身、もしくは2人で生活している人が多い。この真ん中は惣菜のウエートがすごく低い。子育て世代の30~40代の家庭は惣菜をあまり使わない。それは惣菜を使うと生活費が上がってしまうからで、素材を買って自分でつくっている。トータルとして単身者、結婚しない人たち、高齢者のウエートが高まっているから惣菜のウエートが高まっているように見えている。

 ーー消費税率のアップについてはどう見ていますか?

 田尻:難しいと思う。前は10%まではやむなしだろうと思っていた。世界的に見ても10%は決して高くないし、ある意味、妥当だと思うが、ただ税金の使われ方に問題がある。10%に上げたからといって適正な税金の使われ方が本当になされるのかという疑問を感じる。ここを透明化してもらって、誰でも分かるような税金の使い方になれば、多分、皆さん10%でもいいというように言うだろうし、こんな使い方をされているなら5%に戻せとか、3%にしろという議論が出ると思う。

 一概に10%がいいとも言えないし、15%がいいのか、5%がいいのかというのも、全体像が見えないから分からない。補償金など目に見えないようなところで使われている。そこが見えてくると、10%は本当に必要なのかということになる。必要であればすればいい。介護、老後の問題のために10%にすると言っているが、果たして本当にそうなのか。

2020年以降もSMの役割は変わらない

 ーー2020年にはSMにはどのような役割が求められるようになるのでしょう?

 田尻:今と変わるかな、逆に変わらないような気がする。消費者の買い方は変わると思う。リアルであったり、ネットであったり、お届けであったり、いろいろな商品の購入の仕方があり、購入方法は変わるかもしれないが、SMそのものが今より大きく変革するとは思えない。多分、変わらないと思う。われわれが食べるものは全く一緒。サプリメントだけでは生きていけない。食べる満足、食べる喜び、そうしたものは変わらないので、購入の仕方は変わるだろうけれど、SMの存在としては2020年以降も変わっていないと思う。

 ーー購入方法の変化で、SMに影響は出るのでしょうか?

 田尻:アマゾンも問題になっているし、ヤマト運輸も問題になっているが、購入の仕方は誰かに届けてもらうか、自分で買いに行くか、極論でいえば2つだ。誰かに届けてもらうという行為がもっと拡大できる環境にあるかというと、残念ながらない。人の問題も含め、あるいは運ぶ手段も含めて。

 そうすると、リアルの店舗に買いに行くという行為がまだまだ顕著だと思うし、ネットの売上げが大きく伸びているというが、それは金額ベースの高いものがネットで買われているから。食料品のような低単価のものはEC比率はかなり低い。そうした部分で見たとき、SMとしてはそんなに大きな変化は生まれて来ないだろう。

 SMの中での変化としては、例えば現金を持たなくても購入できるとか、そうした変化は出てくると思う。カードや、レジの精算方法がどんどん簡単になって、アマゾンのように通過するだけということは当然、起きてくるだろうけれど、その部分くらいの変化であって、販売しているものは大きな変化はないと思う。

 ーーその中でSM企業が大切にしなければならないことは。

 田尻:人間は世代によって抵抗力が違う。菌に対する抵抗だが、ある程度、菌への耐性のあるわれわれ世代と、無菌状態で育っている世代では、菌に対する抵抗が違う。そうしたことを考えると、安心・安全がかなり追求されていくと思う。

 過去に発見されていない病気、病原体を含め、あるいは過去にはあったのかもしれないけれど、明確に露出されていなかったものもあるのだろう。例えば、O-157やアニサキス。今の人は無菌状態になってきているので、安心・安全はより一層強くなると思う。