1956年生まれ。79年に日本大学芸術学部を卒業し、サミット入社。2001年取締役、03年常務取締役、06年専務取締役、07年代表取締役社長。15年6月、オール日本スーパーマーケット協会の第4代会長に就任(現任)。16年6月にサミットの特別顧問に就任。17年6月に退任。(Photo/室川イサオ)

連載「トップに聞く2020年の小売業界」。今回は先を見通す目を持つ、オール日本スーパーマーケット協会の田尻一会長に、スーパーマーケット(SM)業界の近未来について語ってもらった。

 ーー2020年の小売業界をどう予想していますか。

 田尻:だいぶ整理されるだろうね。店舗数が多ければいいんだという発想はもう終わり。5、6年くらい前までは出店ラッシュだったが、今は逆に整理をどうしていくか、あるいは古い店をどう維持していくかという方向に切り替わりつつある。今、店舗を出店しても採用の問題も含めて、「出す準備はできていても人がいないから出店できない」ということが現実的に起きている。まして東京は2020年に向けていろいろな部分での雇用がものすごく活発になるはずなので、なかなか流通の方にというのはとても難しいだろう。

 多分、ある程度の整理をしだすタイミングになるのではと思う。店舗数が多ければいいということではなくて、既存店でどれくらい稼げるかという方向に多分切り替わっていく。

 人口の問題、人手の問題などを加味しても、これ以上、出店を続けても無意味というか、お互いに傷が深くなるだけで、業界全体にはプラスアルファに多分ならないと思っている。

 ーーSMは店舗数が減っていくと。

 田尻:店舗数そのものが整理されていく時代になのではという気がする。強引に出店する状況ではないので、店舗数が多くて売上げがいくらかを競う必要がないし、しても無意味だと思う。

 経営者として何を求めていくかというと、売上げではなくて利益をどうコントロールできるかだと思っている。それが2020年後に出てくるように思っている。

 ーー以前から田尻さんは「減収増益でもいいのでは」と言っている。

 田尻:そうならざるを得ないと思う。もういっぱい、いっぱい。これだけ競合が激しく、業態を崩しながら、いろいろなものを販売している。ドラッグストアはドラッグストアという名称でいいのかというくらいで、今は食品の売上げが半分を超えている。薬のウエートが下がっていく。

 ディスカウントストアはかなりピークを迎えていると思うが、ある程度、限界に来ているように感じている。それは賃料を含め、商品もディスカウントができる状況のモノ余り感はなくなっていくと思うからだ。今はモノが余っているから多く販売できているが、そこに回るほどの商品がなくなっていけば、商品調達ができなくなってくる。そうなってきたらある程度、制御されると思っている。

 ーー製造の場面でも人手不足でモノ余りが解消されていく?

 田尻:日本のメーカーが小売企業が減収という前提で考えるならば、その中で増益していく方向に転換するのでは。みんな、そういうことをしたくてしょうがないのではという気がするが。

 ーー時給はかなり上がっていくと考えていますか。

 田尻:企業側としても限度があるから、東京は1000円ちょっとくらい。場所によっては、1200円、1300円になっていると思うが、1600円を超えると、アルバイトやパートタイマーよりと社員がそんなに変わらなくなる。限界点があり、それを超えれば社員雇用をしていく。

 今はみんな働き方が違う。派遣だと人は集まるが、パートだと人は集まらないというのは、人がいないわけではない。正規雇用されたくないという人たちが増えているのも事実だと思う。その人たちがちゃんと働いてくれさえすれば、本当はそんなに人が足りないなんてことはないという気はしている。

 ーーSMの現場では省力化の取り組みが続く?

 田尻:省力化も投資がいる。投資する分と人件費とどちらがいいかを見るわけで。沖縄では人を使って作業をしている比率が圧倒的に高い。機械を入れて投資するよりも人を使った方が安いからという考え方だ。昔はずっとそうだった。そのバランスだと思う。投資だけしてものすごいコストアップになって、稼働はするけれど利益はどうなのかということも出てくる。どうバランスを取るかは企業のトップが判断しないといけない。

 人がいなければいないなりに、やりようがある。そういう国が多くある。そうした国では全部セルフでやるという発想を国民が持っている。こうした発想さえ持てば、今の日本は人口が減っているとはいうが、1億人以上いるので、そんなに人が足りていないと思えない。