第7回は、「6次産業化」です。

 皆さん、6次産業化という言葉を一度は耳にしたことはありますか?

 これは、1次産業である農林水産業(含む畜産業)の活性化を示す概念で、「1次産業の付加価値を高めるために、価値連鎖(バリューチェーン)の視点から、1次産業(農業、林業、水産業、畜産業)と2次産業(工業:食品加工メーカー)、そして3次産業(商業:卸売業、小売業)の各段階を有機的につないでいこうとする概念(三村2011)」と定義されています。

地域活性化、地域ブランド化とも密接に関連している

 もう一つ、6次産業化を理解する上で押さえておくべきことは、「6次産業化と地域活性化、地域ブランド化は密接に関連しているということ」です。

 6次産業化は、「過疎化、高齢化等の社会問題に苦しむ地方で、マーケティング的視点、経営学的視点による地域ブランド化を促すこと」に力点を置いています。その結果、「地域ブランドとしての商品化(モノの販売)による経済的価値の増大や、地方への来訪者、若者の移住者(Uターン、Iターン)の増加で、社会的価値の増大を両立させること」が真の狙いになります。つまり、6次産業化はCSV(Creating Shared Valueの略、共通価値の創造のこと。「CSVを知っていますか」参照)的な取り組みといえるのです。

地域の経済的復権を目指す「里山資本主義」

 ここで、6次産業化の理解に不可欠な「1次産業側から見た概念」を紹介します。

 この概念は、「地方」の自立的で、持続的な成長を促す考え方で、「里山資本主義」といいます。これは、「アメリカ型資本主義」、すなわち、「経済の中央集権化」「物質的な豊かさ」「大量生産」「大量消費」を是とする資本主義の対極にある考え方で、『里山資本主義-日本経済は「安心の原理」で動く(角川新書 2013)』の著者である(株)日本総合研究所調査部 主任研究員 藻谷浩介氏、および、NHK広島取材班(含む、井上恭介氏)の皆さんが作られた造語です。

 里山資本主義は、『経済的な意味合いにおいて、「地域」が復権しようとする時代の象徴であり、大都市につながれ、吸い取られる対象としての「地域」ではなく、地域内で完結できるものは完結させようという経済的運動』を意図しています。

オーストリアもアメリカ型資本主義で生態系が崩壊

 この本の中では、その先進的な国の事例として、オーストリアの事例で紹介されています。

 皆さんは、ウィーンを首都とするオーストリアという国からどのようなことを想像するでしょうか? 音楽(ウィーンフィル、オペラ)、美術などの芸術の盛んな国というイメージではないでしょうか?

 しかし、今日、オーストリアは、里山資本主義が実践されている先進的な国の一つなのだそうです。

 オーストリアは、日本同様に、国土が森林に囲まれ、林業が盛んな国です。

 しかし、アメリカ型資本主義により、森林の木材が過剰に伐採され、生態系バランスを崩してしまいました。その結果、本来、オーストリア国民にとっての社会共通資産である林業の経済的持続可能性が損なわれました。

都市部への財の流出を止め、生活圏内でループさせる

 ここで注目すべき概念は、「持続可能性」と「地域経済の自立」です。

 アメリカ型資本主義では、自身の毎月の労働対価に見合う所得(給与)から、生活に必要な物やサービスを購入するため、財が地方から都市部へ流出してしまいます。

 里山資本主義では、その流れを食い止めるために、支出の大部分を占めるエネルギー(電気、ガス)を中心に、再生エネルギーを活用し、自身が住む生活圏内で、財がループする循環型経済システムを採用します。

 その結果、地域経済が再活性化し、住民の実質的な生活水準が向上し、食・住を中心に、豊かで自立した生活が送れるようになるというわけです。