奈良県天川村の直売所にPOP支援に行きました

 奈良県の南部、標高約2000mの大峰山系の山々に囲まれた谷間の集落部にある天川村は、面積の4分の1が吉野熊野国立公園に指定されています。約1300年前、役行者による大峰山が開かれて以来、修験道の聖地とされました。弘法大師との関わりも深く、神秘性を秘めた豊かな原生林、熊野川最源流の深く清らかな渓谷は『秘境』と呼ぶにふさわしい美しい村です。2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコ世界遺産に登録されました。

 こんな素敵な天川村ですが、過疎化・高齢化が進み、人口は右肩下がりで2017年は1300人を切っています。観光資源が豊富なため、年間約60万人が訪れますが、観光客がお金を使う場所は極端に少ないのです。美しい渓流のそばでバーベキューを楽しんだ後、ゴミだけを大量に残して帰るモラルのない人たちも後を絶ちません。村には材料を買う店がないため、村外から購入したものを持ち込み、そのゴミを捨てて帰るのです(※2017年10月、とうとうバーベキュー禁止の条例ができました)。

 

 天川村の特産品には、日本の名水100選のごろごろ水や1300年前からの民間薬の陀羅尼助丸がありますが、その他に有名なものはありません。そこで、現在、役場が旗振り役となって天川村の入り口に直売店を作り、天川村の特産品を育てていく取り組みをしています。天川で採れたものや獲れたもの、作ったものだけを販売している「小路の駅 てん」という小さな直売所です。4月から11月は水曜・木曜日が定休日。12月~3月は土・日・祝日のみの営業です。

 世間の道の駅や直売所の中には、品揃えのために他所から仕入れた商品を数多く販売している店も多いわけですが、「てん」にある商品は全て天川村産です。生産量が少ないものも多く、品揃えにも偏りがあって、中には「それ、永遠に売れないのでは……」と思うものもチラホラと(天川村には言えません、ここだけの話)。

 しかし、多くの商品は魅力にあふれています。水と空気が驚くほど美しいこの村で真面目に丁寧に作られた、そうめん、うどん、こんにゃく、奈良漬、はちみつ、鹿肉・猪肉の缶詰、きりこ(揚げおかき)、ジャム、吉野本葛、甘くて濃い野菜たち、ひのきのまな板、食パンケースなどの木工品など……。これらは魅力にあふれ、しかもリーズナブル! 私はこの「てん」によく売場づくりのお手伝いに行きますが、そのたびに一消費者として毎回ついつい3000~5000円ほど買い込んでしまうほどです。

情報がたまると、「素晴らしいですね!!」がやってくる

 私はPOPを書く際、時間的な制約はありますが、許される限りのヒアリングをします。商品情報ゼロの空っぽのマイバケツに、生産者や職人さん、店の人たちの情報を満たしていきます。その商品に対しての思いや商品化のきっかけとなった歴史や苦労話を聞きます。商品の良さ、使い方・食べ方、過去のお客さまの反応を聞き、疑問点を解決していくと、バケツにドンドン情報がたまります。それにつれ、商品が好きになりテンションが高まりバケツはあふれかえります。

「素晴らしいですね!!」がやってくる瞬間です。

 非の打ちどころがない完璧な商品でなくても、よい部分は必ずありますから、それを掘り下げていけば、この「テンションが高まる瞬間」がやってきます。その状態でPOPを書くと、お客さまの反応のよいPOP、売上げを上げるPOPを作れるのです。

 天川村の商工会と一緒に「てん」でPOPの手伝いを始めてから年間売上げは55%アップしたと聞いています。もちろんPOPだけでなく、商工会や役場の支援、店や出品者の皆さんの努力があってこそで、POPだけだとは考えていません。

今回は「天川アロマ」のPOPをつくります

「精油」とは、植物の花や葉っぱ、果皮、樹皮、果実、種子、樹脂などから抽出した天然100%の素材の芳香物質のことで、エッセンシャルオイルともいいます。大量の原料からほんのわずかしか採れない貴重なものです。植物から抽出したこの芳香物質を健康美容、リラクゼーション等に役立てるのがアロマテラピーです。ちなみに低価格で手に入るアロマオイルやポプリオイルなどは人工的な化学物質を混ぜたものなど大量生産されたもので精油とは別物です。

 さて、この「てん」の店長である桑田さんは、天川アロマ杣(SOMA)の代表者で、調香師でもあり、精油(エッセンシャルオイル)を製造・販売しています。

 大峰山ヒノキ、熊野の杉、高野槇(まき)の3つの精油を作り、それをベースに相性の良い他の精油をブレンドして約30種類の商品を作っています。

 抽出された精油は大峰山系から産出された水晶でろ過することで一層、優しく、まろやかで芳醇な香りに仕上がるそうです。

天川アロマ“杣”の桑田さん。

 商品がとても小さいものなので(5ml入り)、桑田さんは名前とパッケージに工夫をしています。約30種類の香りごとに「天香」「奥駆」「木霊」というふうにイメージに合った名前を付け、パッケージには山の写真も入れています。

 1瓶5mlで890~3000円まであります。非常に貴重な精油をブレンドしてあっても3000円で買えるため、アロマに詳しい人は「安いね!」と驚いて買っていくそうです。価値ある商品なので、高級ホテルや旅館で使われたりもしています。

 今回は、この天川アロマのPOPを支援させていただきました。