新しい年から新シリーズ【チェーンストアのCS経営入門】と題し、お客さま研究の方法を紹介していきます。

『CS(顧客満足)経営』は、顧客理解を基に経営革新を進めていく手法のことで、顧客期待に応えるために商品、売場、サービス等の提供価値を改善していくわけです。このシリーズでは顧客理解、顧客満足の仕組み、顧客期待に応える改善を紹介していきます。

 1回目はCS経営で基本となる自社の顧客の明確化です。『常に自分のお客さまは誰か?』と問うて、お客さまのことを考え続けることが大切です。

顧客理解を失敗した衣料品チェーン

 ある衣料品チェーンの店舗に初めて訪問したときの印象は『店頭がマッチャッチャだ』というものでした。シャツ、スカート、靴下に至る主力品種の中心となるカラーが全て、焦げ茶色だったのです。

 その理由を売場責任者に聞くと、「自店舗のお客さまはシニア女性が多く、どの主力品種でも茶色、焦げ茶色のものがよく売れる。ウチは補充発注が利く商品ばかりなので、売れるカラーを繰り返し発注し、お客さまのニーズに応えた。また在庫効率を高めるため、売れないカラーである白色、黄色、赤色を売場から除いた。その結果この売場になった」とのことでした。

 一見、顧客ニーズに対応しているように見えますが、実はこの店舗、年々客数を減らし、売上高目標を達成できない問題店舗でした。その理由は一体何だったのでしょうか?

「NOW顧客」と「FUTURE顧客」という概念

 CS(顧客満足)経営では「NOW顧客」と「FUTURE顧客」という概念でお客さまを分析(分けて考える)する必要があります。

 NOW顧客とは現在のお客さまの中で一番多い客層で自店舗の売上高に貢献してくれているお客さま層です。一方、FUTURE顧客とは現在自店舗には少ない、またはいないが将来増やしたいお客さま層です。

 NOW顧客は『守りたいお客さま』で、FUTURE顧客は『増やしたいお客さま』となります。

 事例ではNOW顧客であるシニア女性を守る施策⇒『買ってくださるカラーを充実させる』ことはできていたのですが、残念ながら『NOW顧客だけでよいのか?』『FUTURE顧客は必要ないのか?』の意識は全くなかったのです。

 もし、FUTURE顧客、即ち増やしたいお客さまが明確になっていれば、在庫効率だけを考えて、主力品種でカラー展開を少なくすることはなかったはずです。

CS調査(顧客満足度調査)の限界と今後

 CS経営ではCS調査(顧客満足度調査)が基になります。CS調査は現在店舗に来ているお客さまに行い、満足、不満の評価を調査します。

 従って、NOW顧客だけの情報となります。これがCS調査の弱点です。

 また、マーケティングの世界では対象とするお客さま層を絞り過ぎると失敗すると言われていますが、その典型的なことが、この衣料品チェーンで起きてしまったのです。

 このようにNOW顧客とFUTURE顧客という概念を理解し、守りたいお客さまは誰か、そのお客さまの期待にどのようにお応えするのか、また増やしたいお客さまは誰か、そのためにはどんな新施策が必要なのかを考え続けなくてはならないのです。

 マネジメントの始祖P.F.ドラッカーは『あなたのお客さまは誰ですか?』と経営者に問い続けています。これがCS(顧客満足)を基軸にした経営革新の出発点となるのです。