1968年10月25日大阪生まれ、奈良育ち。現在、東京・秋葉原に在住。上智大学経済学部経済学科を3年で単位取得終了し、渡米。ゴールデンゲート大学からマーケティング専攻でMBA取得。帰国後、船井総合研究所に入社し、小売業へのコンサルティングを行い、1996年にはネット通販参入セミナーを開催した。その後、光輝物流に入社し、物流コンサルティングを実施。2000年2月14日、株式会社イー・ロジットを設立し、代表取締役に就任。イー・ロジットは、現在270社以上から通販物流を受託する国内ナンバーワンの通販専門物流代行会社であり、200社の会員企業を中心とした物流人材教育研修や物流コンサルティングを行っている。また、ライトヴァンというアーティストグッズ販売やファンクラブ運営を行う会社を経営。2015年、再配達を撲滅するための生活アプリを開発するウケトルを立ち上げ。タイではSHIPPOPという物流IT企業をタイ最大のネット通販会社Tarad.com創業者のPawoot (Pom) Pongvitayapanuと共同で立ち上げた。現在、日本語だけでなく、英語、中国語(簡体、繁体)、韓国語でも書籍を累計22冊以上出版する。
 
※本稿は2017年11月22日(水)に開催した「商業界オンライン」創刊記念カンファレンスでの講演内容をまとめたものです。(Photo/杉田容子)

 アメリカではショッピングモールが厳しく、その3割近くが無くなってもおかしくないといわれています。

 それに、さまざまなチェーン店が無くなっています。最近ではトイザラスが事実上、経営破綻しましたが、その理由はネット通販のせいだといわれています。

トイザラスの破綻は時間の使い方と関係している

 私はそれもあると思いますが、根幹はそこではないと思っています。アマゾンに負けない施策と関わってきますが、消費する時間、買い物する時間の使い方が変わってきているところに、本当の原因があると思っています。

 トイザラスに子供を連れていくと、当然、子供は遊ぶわけです。昔は時間があったので、それでよかったのですが、今、親は時間がなく、子供を遊ばせる余裕がなくなっています。だから、トイザラスに行かないという現象が起こるわけです。

 象徴的な例は、「カーブサイド・ピックアップ」というサービスです。ショッピングセンター(SC)の外側に専用のスペースがあって、そこに自動車で行くと買った商品を車の後部座席やトランクに入れてくれるというサービスです。

 通常、SCに行くと、目当ての店舗に行くまでに車を止めて、モールを歩く必要があります。行きたい店に近い場所に駐車できればいいわけですが、人気店だと店に近い駐車場が埋まっており、遠くに駐車することになるので、結局、長い距離を歩かねばいけなくなります。その点、「カーブサイド・ピックアップ」では車から降りずに、商品を渡してくれる。そして、このサービスは結構、玩具の利用が多いのです。

 今、アメリカのEC販売率は10%を超えています。これは、消費者の時間の使い方が変わってきている現れでもあります。

 まずは、こうしたお客の変化を理解することが重要です。

まずはアマゾンの「3つのリアル店舗」を知ろう

 次に、押さえておくべきは、アマゾンのリアル店舗の戦略です。

 アマゾンには3つのリアル店舗業態があります。

 1つ目が『Amazon Go』。この店舗ではスマートフォンの専用アプリでQRコードを表示し、それをかざして店内に入ります(電車の改札を通るときのイメージです)。専用アプリの画面は3画面とシンプルで、余分な操作はいりません。店内で買えるのは食品が中心。多くの人が利用しても、レジ待ち時間が短いので、すっと出て行ける。

 この店舗の特徴の1つ目が「ノーライン」です。これは並ばずに精算できることで、特にランチタイムなど買物客が多い時間帯には、この利点が大きく生きます。

 2つ目の特徴が「グッド・フード・ファースト」。つまり、おいしい食べ物を早く手に入るということ。

 3つ目が「フレッシュ・メイド」。店内でつくった出来たての商品を提供しています。最近では焼きたてのクッキーの販売も始めています。

 4つ目が「ミールキット」で、キットを販売していること。「フレッシュ・メイド」に関しては店舗にキッチンを設けて、商品を製造しています。

 この店舗の店内にはカメラがたくさんあり、カメラの中にはマイクロソフトのKinect(キネクト)が使われているといわれています。これはセンサーが付いているカメラで、商品をバスケットに入れるなどの動作が分かるようになっています。価格が安いし、画像認識できて分析もしやすい。Amazon Goは機械を多く使っているので、採算が合わないのではといわれていますが、R&D(Research&Development:研究と開発)や新規事業開発をしているので、十分にペイしているといえるでしょう。

Amazon Goの全面展開は考えられない?

 ただし、この店舗を全面展開することはあまり考えられないと思います。

 なぜかというと、Amazon Payの責任者が描いているビジョンとAmazon Goの仕組みはすごく似ているのですが、そのビジョンを見ると、以前はアマゾンの決済はAmazon.comやAmazon.co.jpといった自前のサイトで使われていましたが、それが途中でAmazon以外が自社サイトを持って、使えるようになりました。

 こうした企業が自社サイトにAmazon Payを導入すると売上げは伸びます。なぜかというと、クレジットカード番号や商品の送り先住所が既に登録されているので、これらを新たに入力する場合と比べると、買物のハードルが低くなるのです。

 その代わりに、Amazonは「全部決済手数料をください。決算手数料は他と変わりません」とし、他企業の決済を押さえる方に舵を切っているからです。

 2つ目のリアル店舗が『Amazon Fresh Pickup』です。これはAmazon Fresh(プライム会員向けの生鮮食品、日用品などの配送サービス)のピックアップバージョンです。商品を取りに行けるというサービスで、アメリカではかなり普及しています。

 アメリカではプライム会員の会費が年間299ドルと、日本円で約3.4万円。このサービスの利用者はスマートフォンのアマゾンアプリで商品を買って、取りに行く時間を指定します。この店舗には駐車スペースがあり(トレーラーを置ける場所もある。ちなみにウォルマートにはトレーラーが着ける場所が3台分ある)、そこに自動車を止め、店内で買った商品を受け取れるわけです。