カスタマー・オウンドの場で「価値共創」する

 では、CJ(購買プロセス全体)での顧客経験価値の重要性について説明をしましょう。

 消費者は、日常生活で買物をする際に、さまざまなタッチポイントに接しています。その一連の流れのことをCJと呼ぶわけですが、これは3つの段階に分けることができます。

 すなわち、「購買前、購買、購買後」です。

 欧米におけるCJ研究の第一人者であるLemon. K. and Peter. C. Verhoef

(2016) は、CJの概念を分かりやすく説明しています(図表2参照)。

 

 この概念図で注目してもらいたいのは、4つの顧客タッチポイントのうちの「カスタマー・オウンドタッチポイント」です。

 このタッチポイントは、企業、(その企業の)パートナー、あるいは他の人が相互に影響し合い、企業がコントロールできない顧客アクションのことです。この場(タッチポイント)で企業と消費者がコミュニケーションなどを通して「価値共創」することが重要なのです。

 日本の消費者行動研究、ブランド研究の第一人者である学習院大学 経済学部 青木幸弘教授の「ブランド研究における近年の展開―価値と関係性の問題を中心に―(青木 2011)」という論文が、皆さんが顧客経験価値を理解する上で参考になると思い、その要点を紹介します。

「企業が今後も持続的成長を続けていく上で、経営(マーケティング)戦略上、価値と関係性に着目し、企業からの一方的な価値提案に留まらず、場(タッチポイント)を通じた企業と顧客との価値共創の概念を大切にすべきである。結果、消費者が購買後、自身の消費プロセスを通じ、価値を自ら創造する。その価値こそが、文脈価値であり、顧客経験価値と言えよう。」

小売店はお客さまの問題を解決するためにある

 企業(特に、小売業)が顧客経験価値を醸成するためには、「自社の従業員のモチベーションを高めるための組織体制」(部門横断型組織の構築)、「学習」(仮説検証型の社員養成)、「店舗従業員への権限移譲」も忘れてはなりません。

 なぜなら、顧客経験価値を高めるには、従業員の皆さんが場(タッチポイント)において、お客さまの抱える問題や悩みをお客さまとコミュニケーション(相互作用)しながら解決し、一人一人のお客さまの立場に立った感動のサービスを提案する必要があるからです。

 これはまさに、価値共創をするということです。

 その問題解決や感動のサービスの上に、お客さま自身の心の中で、顧客経験価値が醸成されていきます。小売業において、店舗はお客さまの抱える問題や悩みを共に考え、解決するためにあるといえるのです。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見真也)