優秀な戦力に出向してもらう!

 いろいろなところに出向してもらうこともしました。日本の場合は1つの企業に入ると、ずっとその企業にいる人が多い。その企業の風土が良いか悪いかは別にして、企業の風土に染まっていきます。1年なり、2年なり、海外に出たり、他の企業で働いたりすることで人間はものすごい勢いで成長するはずです。

 そのために多くの優秀な戦力を外に出しました。1~2年のタームで見たときには、有能な人が外に出ることで本業が手薄になるということもありますが、これからはロングタームで物事を見ていくことが必要です。5年後、10年後を予測できるかは別にして、そこを見て、今、何をすべきかを考えるべきかなと思います。

 多様性の時代なので、採用はすごく大事です。ジェネラリストとスペシャリストという大きなくくりの中で、従来はジェネラリストがベースにいて、スペシャリストがそれをカバーするという図式が多くの企業のあるべき姿だったと思います。

 これからはスペシャリストそのものが重要になってきていると思います。少し変わっていても、ある分野ですごい能力を持っているとか、あるいは将来ものすごいポテンシャルを発揮しそうだという人財をいかに選んでいくか、取っていくか大事だと思います。

探求心のあるリーダーが求められている

 マーケティング力が非常に重要になります。ある社長が言っていましたが、「何年か前から自分は同じ業界の人とは合わない」と。

 私もそうしてきました。とにかく、外の人間と毎日会う。それは情報量が全然違うし、次のビジネスモデルをつくる上でもすごく参考になるからです。こうしたことがますます必要となってきます。それがないと、発想力が絶対に出ない。どんなに優秀な人でも、どんなにクリエーションがある人でも、世の中がどう変わっているのかという前提条件がないと、恐らくピントがずれるのではないでしょうか。

 それと精神的なものですが、「ポジティブ」「チャレンジ精神」、一番大事なのは「探求心」。興味があるということは、その人は一生懸命にやるので、育ちます。それから、中間管理職になると、当事者意識は薄れていくので、「自分で動くこと」。

 これらはみんな大事ですが、こうしたことが全部あればいいかというと、違います。最後は「人間力」かなと思います。人から信頼されたり、この人のため、この人と一緒に働きたいという人を巻き込む力とかコミュニケーション能力が重要で、そういう人がイノベーションを起こせると思います。

 情報のインプットだけだと長続きしないので、インプットしている間に自分の持っている強みを生かしてアウトプットをしていかなければいけません。インプットとアウトプットの繰り返しがその人間を育てると思います。自分の言葉で解釈して発信していける力、常に新しい情報を得る努力が重要になります。

人が持っている能力は財産だ!

 企業の価値は時価総額があったり、キャッシュフローがあったり、売上げ、利益という数字的なものはありますが、実は将来に向けての無形なものが企業の価値ではないでしょうか。ブランドロイヤルティとか、お取り組み先との信頼関係、おもてなし・サービス、これはみんな人です。

 人が持っている能力はやっぱり財産だと言いたい。これからは多少、非常識でも変わった人間が求められます。人間力がないと駄目だと思っています。

 経営者の役割は、新しい市場を創造することだと考えています。そのために、組織も人も含めた事業構造改革を行い、イノベーションや組織・風土を改革できる企業風土を作ることが重要。そして、人財育成をするわけです。

未来の小売業界に向けたメッセージ

 今、アメリカの小売業は過去にないレベルの状態になっています。ニューヨークのショッピングセンターのいくつかは、テナントが1年間空いたままの状態になっています。アメリカでは何十年も前からショッピングモールが小売業を引っ張ってきたわけですが、それが衰退。旗艦店の撤退で、幽霊モールになってきました。その一方でアマゾンがリアル店舗を開店。ECの台頭で、すみ分けが崩れてしまったわけです。

 日本はどうかというと、地方百貨店の閉鎖が加速しています。ただ、食と美、健康、スポーツというカテゴリーのトレンドは依然として活性化しているので、今後、期待できるのではないでしょうか。

もう一度、ファッションを文化として取り戻せ

「洋服は売れない」「アパレルは厳しい」ので婦人服、洋服を縮小し、雑貨や化粧品にするという小売業が増えています。

 ただ、この業界にいた人間としてはファッションとは文化であり、洋服は自己表現の最大のツールであることには変わりはないと思っています。洋服を中心にしたファッションに若い人材がたくさん育っています。若い優秀なデザイナーはたくさんいます。優秀な見識を持っている人もたくさんいるので、そうした人たちでもう一度ファッションを文化として取り戻していくというのが、小売業の大きなミッションだと思います。

 今度のオリンピック、パラリンピックではスポーツだけでなく、文化のオリンピックというものもあります。文化や芸術に対する国家予算は恥ずかしいくらい小さいですが、オリンピック後も文化や芸術が経済を支える時代が来るはずです。ファッションと文化、芸術はもう一度、小売業として取り組むべき大きな課題だと思います。

 これからの百貨店はモノからコトへ、体験型、お客さまが感動するものが求められます。それからどんなにデジタル、ITが進歩しても人と人との関係性が重要であることには変わりはありません。ワクワク感や、そこに入ると癒されるとか、心地よいとか五感で感じる環境空間をどうやってつくっていくかも大事で、そのためには販売する人が最も重要になります。その上でモノとコトのバランスを、もっとコトにシフトさせていくべきです。