1979年3月慶應義塾大学商学部卒業。同年4月伊勢丹入社。 2004年2月同営業本部MD統括部紳士統括部長。2005年6月同執行役員 経営企画部総合企画担当長。2008年3月三越 常務執行役員 MD統括部長。伊勢丹 常務執行役員。2009年6月同代表取締役社長執行役員。2012年2月三越伊勢丹ホールディングス 代表取締役社長執行役員。三越伊勢丹 代表取締役社長執行役員。2017年6月退任。同年10月オフィスタイセイヨウ設立。
 
※本稿は2017年11月22日(水)に開催した「商業界オンライン」創刊記念カンファレンスでの講演内容をまとめたものです。(Photo/杉田容子)

重要戦略実現のために必要な経営インフラは?

 マーケティングは、従来は衣食住で行っていました。購買実績分析ではAさんは年に、婦人服の「○○」というブランドの何サイズの何を買い、それを買ったAさんは食品売場に行くと何を買うのか、リビングに行くと何を買うのか。こうしたものは購買実績分析で大体読めます。これからは、大分類の衣食住の購買実績だけではなかなか見えない。

商圏やマーケティングの概念がなくなる

 リアル店舗でライフスタイル型のショップはたくさんありますが、お客さまのニーズやライフスタイルが変わっているのに、ライフスタイルということで元々の大分類の基準があいまいになっているように感じています。「美」や「健」「癒」などいろいろなカテゴリーがあってライフスタイルが築かれているので、リアルの店舗、ネット上でもいいですが、大分類で店づくりをしてみて、お客さまがどのように動いていくかという検証が必要ではないでしょうか。

 従来型のマーケティングでは、百貨店ではバスで15分以内が第1次商圏、電車で30分が第2次商圏、電車で1時間が第3次商圏で、そこに何人が居住し、そのうちの何%が来店するので店が成り立つということはありました。

 しかし、今はネットの世界なので商圏はあるようでない。リアルな店舗では商圏が残っている部分はありますが、これからはグローバルなプラットホームでの勝負になってくるので、極端なことをいうと、商圏やマスマーケティングという概念がなくなってくるという気がします。それよりも、ビッグデータを使って未来店顧客をどうやってまとめて、その人たちの関心度やニーズをどう仮説にしていくかが非常に重要なことだと思います。

小売業の生産性が低いのは販売する人の給料が安いから

 私は「人財」と、財産の財をずっと使ってきました。人はコストではなくて、財産であると。人件費は会社経営において重要な要素を占めていますが、人はものすごくポテンシャルがあります。年収が400万円、500万円の人たちがいて、400万円の人が辞めればP/L上で浮いてくる、そういう話ではない。400万円、500万円の人たちが店頭でお客さまと接していることで生み出す力はお金に替えられない。

 あるお客さまは販売員のAさんが素晴らしく、その人がいてお店に行く。これが信頼度を高め、企業価値が上がる。一人一人が持つポテンシャル、財産をどうやって生かしていくかがマネジメントだと考えています。これからは多様性の時代なので、いろいろな経験をすることが大事だと思います。20代からいろいろな経験、視野を広めていくことが一番大事なことだと思います。

 私は若手女性の活用をえこひいきに近いくらいの気持ちでやってきました。グローバルな人財を育てなければいけないということと、視野の広い人財を育てるという意味で、海外に出店するときに女性だけでやってもらったこともあります。

 日本の小売業、サービス業の生産性が低いのは、販売する人の給料が安いからだと思います。店頭の販売スタッフの給料は全般的に安い。お客さまの期待は給料が安いから、低いということでは絶対にありません。

 コンビニで夜に行くとほとんどが外国の人。外国の人だからしょうがないという概念は少なくとも私にはありません。コンビニで新聞、飲料水を買うだけでも、カウンターでの接客は期待をします。もちろん、便利であればいいので、期待しないという人もいるでしょう。

 しかし、これから本当にサービス産業を成長させていくには、人と人との接点のおもてなしや、人への想いというものがなければ絶対に駄目だと思います。

 ということを鑑みると、やはり給料は安い。店頭で売上げの大きい人にインセンティブを付けた実例があります。それでは人件費が上がってしまうと思うかもしれませんが、販売力のある人はそれ以上の販売をするので、それなりのリターンはあります。