私が一番期待しているのはビッグデータ

 小売業では、ロボットやAIを活用した店内案内や接客が言われていますが、私が一番期待しているのはビッグデータです。

 よくマスコミでアパレルが不振だと言われていますが、アパレル業界として改善しなければならないのは、プロパー消化率です。

 過去は60~70%あって、それが前提で上代が設定されていました。洋服が売れなくなってプロパー消化率が50%、40%になっていったときにそれをベースに上代設定がされたので、価格と価値のバランスが崩れて、今、洋服が売れない時代になっています。

 ここにメスを入れない限り、絶対に良くはならない。そのときにビッグデータを活用した需要予測がものすごく重要になってきます。需要予測が本格的にできるようになると、モノづくりと在庫のバランス、お客さまのニーズ、サプライチェーンの流れが改善され、変わってくると思います。

 これまではお客さまに一番近い小売業が、お客さまのライフスタイルや日常の行動を一番早く察知できました。今は電機メーカーが冷蔵庫にいろいろなITの機能を付け、お客さまのデイリーの生活を読み取れる時代になっているので、産業構造、強みが大きく変わってきているわけです。

 GDPの6割が消費で、その半分が小売業の市場規模。これは140兆~150兆円あり、リーマンショックのときでもあまり変わっていないはずです。

 その中で伸びているのがEコマースで、市場全体の10%の約15兆円。アメリカではEC化率が30%になっているので、おそらく日本でもそうした時代が来ます。日本でも、この2、3年であと15兆円くらいEコマースが増えていくと、それだけ売上げがリアルな店舗からEコマースに流れていくことになります。リアルとネットの融合。デジタル時代の小売業経営はこうしたものがベースになっていくと思っています。

衣食住の大分類はもう成り立たない

 リアルの店舗づくりには大分類、中分類、小分類があります。ターゲットとするお客さまの第1関心度が大分類。例えば35歳の結婚しているキャリアの女性をターゲットとすると、その人のライフスタイルの第1関心度、第2関心度は何なのかという仮説で、その関心度別に店づくりをしていくのです。

 この大分類が従来は衣食住でよかったのですが、これはもう成り立たなくなっています。百貨店に置き換えると、従来は第1関心度は「今日は婦人服」、あるいは「化粧品を買いに行こう」、「食品を買いに行こう」というものでした。その後は「スカート、ジャケットを買おう」となり、これが中分類。それが、さらに小分類に落とし込まれていくわけですが、ネットの中での展開分類はまだリアルな店舗ほどできていないのが現状です。

 衣食住だった大分類が、今後は「お客さまのライフスタイル成熟による多様化」により、「美」や「健(康)」「癒(し)」「遊(び)」「学(び)」などのカテゴリーの分類に変わっていくのではと思います。

企業のポートフォリオをどう持つかが重要だ!

 日本の強みは何かというと、圧倒的に技術開発力だと思います。2番目が商品・サービスの品質。小売業にとってのサービスのクオリティは、日本人が持っている、おもてなしの精神をもとにしているので、高いのです。

 ただ、これが小売業では有料化されていない。当たり前のことになっています。だから、日本はアメリカやヨーロッパに比べるとサービス業の生産性が低いといわれています。

 あとは日本のブランド力。こうしたことを前提に小売業はこれからどうあるべきかを考える必要があります。

 経営者が考える経営課題は、これだけ時代が変わっているわけですから、自分の企業のポートフォリオをどう持つかということが重要になるでしょう。事業の9割が百貨店で、1割がその他だとしたら、百貨店は7割にして、3割は別の事業をというビジョンを持っていないと、将来、なかなか成長できないと考えています。

今、「絶対的価値創造」が求められている

 価値には、絶対的価値と相対的価値があります。相対的価値はAとBとCを比較して、一番良ければ、それでいい。これからは一人一人のお客さまがそのお店、企業、商品、サービスに対してどれだけの価値を見いだし、それに対してお金を使うかなので、「絶対的価値創造」が非常に重要になります。そのためのインフラはあくまでも人材とマーケティングだと思っています。

 百貨店はサプライチェーンに大きな課題があります。デジタル化に対してどういう戦略を持っていくかということもポイントになります。