ウォルマートのスキャン&ゴーで買い物をする顧客。出所:ウォルマート社提供

『ウォルマートがレジ無し店舗「プロジェクト・ケプラー」とパーソナルショッパーサービスをテスト中』 。というニュースが 、2017年12月20日にリコード(https://www.recode.net/2017/12/20/16693406/walmart-personal-styling-jet-black-amazon-go-prime-no-checkout-storem)によって報道された。

 レジ無し店舗といえば1年前に大きな話題となった「Amazon Go」。RFIDと店内センサーを使って顧客が什器から出し入れする商品を把握し、店舗を出るときに自動的に課金する店舗だが、今年3月に店内に20人以上入ると読み取りを間違えるという課題が公表された後、音沙汰が無く、従業員専用テスト店舗のままだ。

 プロジェクト・ケプラーの内容は詳細が報道されていないので、Amazon Goとの比較ができないが、リコードによるとアイルランド国・ダブリンでウォルマートの子会社がコンピュータエンジニアを求人しており、コンピュータヴィジョン技術を用いる模様だ。

 業務目的は「実店舗における最高の顧客経験の創出」。業務内容は「コンピュータヴィジョンモデルの開発とメンテナンス、チームのトレーニング、関連パートナーの業務コーディネーション」等と書かれている。

 応募資格はコンピュータヴィジョン実務経験5年以上、もしくはコンピュータサイエンスまたはエンジニアリング業界での実務経験9年以上だ。

スキャン&ゴーをアップグレード、ピックアップタワーを実用化

 ウォルマートは今年、最新テクノロジーを活用した店舗革新に意欲的に取り組んだ。レジ待ち時間を短縮するため、携帯アプリで購入商品をスキャンして決済するセルフレジ、スキャン&ゴーをアップグレードし(2月)、サムズクラブ全店導入後ウォルマートに順次拡大中だ(9月時点で22店舗)。7月にはオンラインオーダーを店舗で迅速に受け取れる、高さ約5mの自動ピックアップタワーを実用化し、500店舗に拡大する計画 (注1) だ。

 もう1つのパーソナルショッパーは「忙しいニューヨーク市内在住ママ」を対象としたテキストメッセージを通じたサービスだ。欲しい商品の写真を送ったり、大まかな希望をテキストするとコードエイトが商品を選び、購入できる。

 現時点で対象となるカテゴリーは日用品、化粧品、衣料品、服飾雑貨で、商品供給元がウォルマートか取引先かは不明。日用品は24時間以内、その他の商品は2日以内に配送される。返品は無料で、テスト参加者の自宅の前まで回収に来る。テスト段階では無料だが将来は会費制を予定している。

 今回のプロジェクトを統括するのは、①「店舗関連」:ウォルマート本体内インキュベートチーム、ストアNo.8プロジェクト(Jet.comのチーフテクノロジーオフィサーでもあるマイク・ハンラハン氏が直轄)、②「戦略やマーケティング関連」:今年春に創立されたテックインキュベーター子会社コードエイト(同社CEOで元レント・ザ・ランウェイ共同創業者のジェニファー・フレイス氏)だ。

 コードエイトは、フレイス氏による会社紹介によると「一対一のパーソナライゼーション、人工知能および機械学習によって魔法のようなショッピングを提供する」企業だ(注2

 これらの新戦略にはJet.com創業者でEコマース事業最高責任者に着任したマーク・ロア氏が直接的、間接的に尽力しており、Eコマースを超えたウォルマート全体の活性化に貢献しているようだ。

ウォルマート・ストアNo.8が開発中のヴァーチャルリアリティ(VR)システム。将来のVRショッピングを目指す。出所:ウォルマート社ブログ

狙いは新たな顧客層の獲得、市場をアマゾンから奪い取る!

 さて、一見、「ウォルマートはアマゾンや最新オンラインスタートアップをまねているのか?」とも見えるこれらの動きには、どのような意図があるのだろうか。

 それは新たな顧客層の開拓だ。

 現在、米国の消費をリードするのは人口移動で増加している都市型消費者だ。ウォルマートの中核顧客より若く、所得が高いが、より良い生活のために学歴に投資し、学生ローンを返済しながら仕事に忙しく、時間も経済的にも余裕があるようで無い人々だ。

 

 従ってお買い得であるだけでなく、利便性が非常に重要で、ここをアマゾンはプライム会員で囲い込んで、2桁成長を続けている。

 ウォルマートが伝統的な顧客ベースを無視することはできないだろうが、消費者の変化に応えなければ生き残れないのが、小売業界の掟でもある。特に、一番おいしい市場をアマゾンの独壇場にはしておけない。

 そこで、オンライン売上拡大のために、前述Jet.com買収を始め、さまざまな戦略を仕掛けてきたものの、米国小売りEコマース市場の占拠率はアマゾンの43.5%に対してウォルマートは3.6%と推定(注3されており、なかなか壁は厚い。

『本業の店舗をもっと革新して都市型消費者のオムニチャネルショッピング志向に対応し、彼らもコア顧客に取り入れる』。この仮説から一連の動きを見るとき、レジ無し店舗についてはAmazon Goより具体的な着地点が見えているのではないか、と筆者は感じている。

(注1)ウォルマート社不動産部門バイスプレジデント、JPスアレズ氏のCREWネットワーク年次総会での発言、20171026日。/(注2)コードエイト社 CEOジェニファー・フレイス氏のリンクトイン・ページより。/(注3eMarketer プレスリリース、20171026日。