都内でアーバンリサーチの複数のレーベルが一堂に会するのは、東京スカイツリータウン・ソラマチ店と同店の2店舗のみ。最新テクノロジーと世界観をアピールする有力店として注目が集まる。

 

 アーバンリサーチは1997年にセレクトショップとして大阪のアメリカ村に初出店。以降20年間に、アパレル業態で18、フードライフスタイル業態で4つと多業態を開発、スピード出店をしてきた。2009年時点では売上高126億円、53店舗数だったが、2017年度では700億円、店舗数も298店舗に達する見込みで、アパレル不況と呼ばれる近年において、急成長を成し遂げた会社の一つだ。

 旗艦レーベルは「アーバンリサーチ」で全国に39店舗を展開。カジュアルテイストをベースにデイリーウェアからドレス、ライフスタイル雑貨まで幅広くセレクション。大手セレクトショップ同様に、ストアレーベルのPB化が進行しており、コラボレーション企画やストア別注商品でオリジナリティを高めている。

 売上げの柱となっているレーベルが、「アーバンリサーチDOORS」というレディス、メンズ、キッズまで取りそろえたライフスタイル型のセレクトショップだ。アーバンリサーチ同様に、国内外のNBセレクションとPB商品を展開。ナチュラルなテイストが特徴で、全国に68店舗ある。

 その他にも、ターゲットやファッションテイストの異なるストアレーベルを8つ持つ。特に力を入れようとしているのが「SENSE OF PLACE」で、ファストファッションとグローバルトレンドを意識したレーベルだ。前期売上高は90億円で現在は45店舗と、今期黒字転換を見込む。

声掛け不要バッグや野球チームとのコラボも

 アーバンリサーチはユニークな話題に事欠かない。例えば、2017年5月に導入した「声掛け不要バッグ」。「放っておいてくれたらもっと買うのに」という顧客の声から、ブルーのクリアバッグを店頭に用意。「声を掛けないでほしい」という意思表示の可視化を狙った取り組みだ。将来の接客サービスの在り方を考える上でのヒントになったようで、ここパルコヤ上野店でも導入している。

 他にも、衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイがZOZOマリンスタジアム(千葉市)の命名権を取得したことを受け、他社と共同の、野球チームのファンサービスイベントに参加したり、大阪名物として絶大な支持を集める“豚まん”で有名な「551蓬莱」と、どちらも大阪発ということでコラボレーション商品を展開した。

フラッグシップストアならでは、新しいサービスが体験できる

 パルコヤにオープンした「アーバンリサーチ・ストア」は、アーバンリサーチグループが展開する全12ブランドからセレクトした商品を販売するフラッグシップストアで、化粧品、食料品、本、日用生活雑貨まで幅広く展開する。

 パルコヤ上野店へは、全国13店舗、関東7店舗目としてオープン。5階に構えた店舗はこのフロアの大半を占め、同施設の集客装置としての存在感も大きい。パルコヤ上野店の「ちょっと上の、大人のパルコ」のコンセプトに応じて、グループの全カテゴリーから厳選ラインを集約、編集した。この新店舗では、売場面積256坪の広さを使って、フラッグシップストアならではの試みをしているので、紹介しよう。

立地場所と集客属性からか、レディスの構成比が高い。キッズ、家具、食品、日用雑貨もレディス売場に内包するような形で展開。関連購入の期待できるレイアウトにした。

(1)やや大人向け、パルコヤに合わせた品揃え

 パルコヤ上野店では、アーバンリサーチグループの6つのブランドを中心に、メンズスーツやレディスドレス、子供服といったカテゴリーもラインアップに加わっている。

 レディスでは施設全体の特徴に合わせてか、アクセサリー関係の品揃えが目立つ。「RODE SKO」や「SMELLY」といった専門のカテゴリーレーベルを展開して充実を図った。また、ファミリー業態の「DOORS」、感度の高いアーバンティストの「KBF」、カジュアルな「SonnyLabel」の品揃えを柱にレディスを強化したゾーニングがされている。

 メンズはやや大人を意識したラインアップが組まれていて、スーツやビジネス雑貨の品揃えが充実した売場となっているのも同店の特徴だ。

(2)ウェアラブルクロージングの導入

内蔵カメラでお客の体型を読み取り、その人の体に3次元(3D)で表示した服を重ねて映し出すと、体に合わせて洋服が動く。通販サイトと連携し、試着した服をその場でインターネット通販から購入できる。

 同社は、2014年時点で全売上高に占めるECサイトの割合が20%超と、EC化率が高い。顧客のデジタル・リテラシーがある程度見込めるとの判断から、2014年よりAR(拡張現実)技術を使った試着システム「ウェアラブルクロージング」の開発が始まった。

 ウェアラブルクロージングは、次の3つの機能が主な特徴として挙げられる。まず、体の動きや体勢に追随してリアルタイムに映像が動く「リアルタイムフィッティング」機能、布の質感や動きを再現する「クロスシミュレーション」機能、そして日本語、英語、中国語の3カ国語の「多言語対応」機能だ。

 店内常設は、名古屋のタカシマヤ ゲートタワーモール店に次いで同店が2店舗となる。60インチの大画面液晶で映し出されるフィッティング画像は、オンラインストアと連携している。気に入れば、そのままECサイトのカートに入れ、発行されるQRコードにスマートフォンからアクセスして購入することもできる。

 同社は2014年からこの仮想試着機を期間限定で店舗やイベントに導入してきた。重ね着をした際の服の膨らみなどの着用感をより現実に近づけるために改良を重ねた。さらに情報の処理速度も向上し、従来と比べ短時間で使えるようになっている。

(3)ポップアップストアKINTOを展開

 KINTOは、滋賀県彦根市に本社を置くテーブルウェア、キッチン・インテリア雑貨の企画開発を手掛ける会社。使い心地の良さと佇まいの美しさにこだわった商品に定評がある。主に「アーバンリサーチDOORS」で商品を取り扱っていて、パルコヤでターゲットとする客層とのマッチングの良さから同店でも展開した。

 今後のポップアップストアの展開詳細は分からないが、定期的にストアが入れ替わるのであれば、イベントスペースとして情報発信の役割も担えるはずだ。

〈まとめ〉グループの今後を測る実験、検証の場となるか?

 この店舗では、多業態を擁するグループの中から選りすぐりのレーベルをセレクションした。都内2店舗しかないフラッグシップストアとして、ファミリーから夫婦のみ世帯、独身者まで広範囲な客層をターゲットとした印象だ。ただし、売場面積が広い分、訴求ポイントが拡散してしまうことが危惧される。また、最新テクノロジーとしてウェアラブルクロージングを取り入れているが、まだ実験段階のような気もする。

 接客サービス含め、新たな取り組みを同店で検証し、他店への導入判断に使うのだろう。これは、今後のグループの進化を測る手がかりとなる店舗かもしれない。パンダ人気にもあやかって施設自体への集客が見込まれる中、売上げを維持しつつ、実験検証の場となれるだろうか。