青果市場の跡地を活用して開業したFICO。建物は天井の高い平屋建てで、自然採光が全面的に導入されている。

 世界各地に物販と飲食が融合した大型店を展開するイータリー。昨今、アメリカをはじめ、ヨーロッパ、さらに日本でも話題となっている「グローサラント」(グロサリーとレストランの複合語)を自然な形で具現化する存在として、注目度も高い。

 地盤のイタリア国内に20店強、日本の2店を含め全世界に40店弱の店舗網を持つイータリーは、今後、イギリスのロンドン、フランスのパリ、アメリカのラスベガス、カナダのトロントなど、世界有数の大都市に続々と店をオープンさせる予定だ。

 そのイータリーが、全面的に関与する大型施設「FICOイータリーワールド(FICO)」が2017年11月、イタリアのボローニャに開業した。施設面積は約10万㎡(約3万250坪)、屋内だけでも約8万㎡(2万4200坪)に及ぶ広大なもので、施設内には家畜(基本的に見せる役割)、畑など産地の機能から工場など生産機能、そして物販、飲食機能までサプライチェーンの全ての段階がそろっている。

 これまでイータリーが展開してきた「①製品の販売」と「②それに関する情報提供」、そして「③レストランで食べる」という3つの機能に加え、どのようにそれが作られているかという「④生産について見られる」のが最大の特徴になっている。営業時間は10時~24時と長く、自分たちが食べているものがどのように生産されるかを学んだ上で、ゆっくり食事まで楽しむことができる。

イータリーが開発したショッピングセンター?

 FICOは、ボローニャの青果市場の一角に、市場の縮小に伴って開業した。事業主体は、イータリー自体ではなく、イータリーとイタリアのコープが共同出資して15年に設立されたイータリーワールド社。

 実はFICOは、他のイータリーの店とは異なり、イータリーがデベロッパーとなって開業したショッピングセンター(SC)のようなものである。イータリーが直接運営する売場は最終コーナーの物販のみ。大部分の売場を構成するのは、実際は、40社に及ぶメーカーなどの生産者、45社のレストラン、カフェ、バーなど、多数のテナント群だ。イータリーは、それらテナント全体をまとめる存在として位置付けられている。

 約3万坪の売場を持つSCということになれは、大商圏を対象にしたリージョナル型に位置付けられるが、FICOの特徴は、その売場のほとんどを「食」が占める点にある。一見、テーマパークのようだが、入場料は無料となっている。

 こうした広大な施設を設けた背景を、イータリーのイタリア国内の商品責任者であるセバスティアーノ氏は次のように語る。

「全世界にイタリアのレストランやイタリアのメニューがあるが、イタリアの食材を使っていないことが多い。だから、本当のイタリアの食品を全世界に伝えたいし、どのように生産されているか、どうやって食べるのかも伝えたい」

国も後押しする観光施設として家賃ゼロで土地を提供

 土地の所有者はボローニャであり、イータリーワールド社には家賃負担がないという。ここから分かるのは、FICOは多分に観光を視野に入れたものであり、ボローニャ、さらにはイタリアという国の戦略的なプロジェクトであるということだ。

 さらに、イタリア国鉄やイタリア政府の教育担当部門などともコラボレーションするなど、国を挙げて「食」の教育に力を入れている点は注目に値する。FICOの根底には、イタリアの「食」を伝えていくという強い意識が流れているのだ。

 来場者数の目標は、20年までに600万人。オープンから5日間で12万人の来場者があった。1人当たり20ユーロ(約260円)を使ってもらうことが希望だという。

 単純に600万人に20ユーロをかけると1億2000万ユーロ(約156億円)。日本のSCからするとやや低めの感があるが、イタリアの食は日本を含め世界各国で大きな支持を得ているわけで、イタリアの「本当の食」を伝えるためのFICOが、今後世界の食トレンドに与える影響は、決して小さくはないと思われる。また、自国の食文化を守り、世界に伝えていくという戦略的なアプローチにも、学ぶべき点は多い。