ある日、アメリカで人気のスーパーマーケット(SM)「トレーダージョーズ」で見掛けたのは、「在来種トマト(メキシコ産)」でした。

「9.11」以降、自給自足の生活が注目されている!

 在来種とは、自然な種を育てていくうちに、その地域の気候・風土に合わせて適応していった野菜を指しますが、アメリカでは、「9.11」以来、いつ何があっても食料に困らないために、家庭菜園で在来種の種をまく、自給自足の生活が注目され始めているのです。

 毎年、同じ種で収穫する在来種を育てる流れは、オーガニックを志向している消費者たちも巻き込み、今市場で全盛を誇る人為的につくられた一代限りのF1種(ハイブリッド)ではない種を、次の世代に残していこうというムーブメントにまで発展してきています。

 トレーダージョーズやホールフーズ・マーケットが今、在来種を扱おうとしている理由は、消費者がオーガニックを志向した結果、在来種を育てることで自給自足というライフスタイルを通して安全・安心を勝ち取ろうとするようになっているからです(家庭で野菜を栽培することで店舗の売上げが減ることになりますが……)。

 今後、SMは消費者に分かりにくいトレーサビリティー(食品の安全を確保するために、栽培や飼育から加工・製造・流通などの過程を明確にする仕組み)を売場で伝えるのではなく、アイコン的商品(オーガニックや在来種)を扱うことで一目で安全・安心がおいしいとイメージできる売場演出をしなければ消費者の支持は得られなくなるでしょう。

在来種を扱えば地元密着の品揃えになる

 在来種のニンニクは本来の香りと強い味がして、おいしいと言われています。

 しかし、高齢化が進む農業の世界では、F1種(効率のよい生産が可能)を育て、作物を大量生産することで、仕事を減らし収入を増やす(形もそろい、大きく、見た目がよく、売価設定も高くできる)道を選択するところが増え、古くから伝わる在来種を使った生産は地元の小規模農家が細々と受け継いでいるのが、現状です。

 消費者はつまり、SMの売場に広がるF1種の青果物を見て、そのコストパフォーマンスの高さと人工的な形の美しさに魅了されているわけです。

 もし、消費者が在来種にF1種とは異なる本来のおいしさを発見し、少し高くても安全で安心でおいしいことに納得するようになれば、在来種の作物にプラスαを支払ってくれる可能性は十分にあるでしょう。

 そのためには、例えばトレーダージョーズのように、在来種トマト(1ポンド450g2ドル99)とF1のチェリートマト(3ドル99)を並べ、在来種にコスパという付加価値を与えることで、消費者に一度食べてもらう機会を提供することが重要です。

 日本のSMも、地元農家が手間をかけた少量生産の在来種を扱えば、本来のおいしさを持つ青果物を品揃えする店になれるだけでなく、採れたての作物がすぐ売場に並ぶ地元密着の店にもなれるのです。

顧客が信頼を寄せる地域密着のSMとは?

 日本の消費者はこれまでSMにコストパフォーマンスのみを期待してきたようです。

 しかし今、一部消費者はSMが価格競争を武器においしさと鮮度だけを訴求するのは、安全・安心に関わる情報を開示しない(できない)売る側の不明瞭な理屈があるのかもしれないと感じ始めています。

 今後、日本のSMが安全・安心を明確に訴求し、売場で「おいしさ」を演出するには次の3つを実践すべきです。

(1)オーガニックや在来種やアレルギー対応(グルテンやトランス脂肪酸未使用)と共に非遺伝子組み換え商品を一部扱い、これら商品がおいしい意味をPOPで明示する。

(2)保存料、添加物を使用した商品を例に挙げ、扱う理由(鮮度の維持や保管のしやすさ)を説明する。

(3)試食を介して、オーガニックや在来種や非遺伝子組み換えとF1種の商品を比較し、メリット(価格や精肉などはF1種の方がおいしく味わえるなど)とデメリット(手間暇かかる分、売価が高くなるがその分、安全で安心できる)の情報を開示する。

 消費者が信頼を寄せるSMになるには、売場のところどころで安全・安心に関わる情報を提供し、価格だけではない商品を品揃えしていると感じさせるアイコンを重視した演出が不可欠になっているのです。