FC契約に関する紛争において、加盟店(フランチャイジー)が本部(フランチャイザー)に対して訴訟を提起する場合、情報提供義務違反が問題となるケースがあります。

 特に、問題となるのがFC契約の締結段階で本部が売上げ・収益予測を加盟店に提示していたとき。その予測の通りの売上げ・収益を上げることができなかったとして、加盟店が開業時に負担した費用や営業継続中に発生した損失などについて、加盟店が本部に対して損害賠償請求をするケースが多くみられます。

 本部は、新規出店に際して、立地と商圏調査を行った上で既存店データをベースにさまざまな統計手法を用いて売上げ・収益を予測しますが、収集した情報に基づく「予測」という要素を含むため、必ずしも正確な情報を提供できるわけではありません。

現実との誤差が生じるので、紛争の火種はなくならない

 加盟者に売上げ・収益を伝えるのは一般的に、リクルーター(店舗開発担当者)でしょう。

 本部の関係者の方からは、「リクルーターが加盟店候補者に対して見込みの甘い情報を提供することは考えられない。そのようなことをすれば、本部でのリクルーターに対する評価に影響し、リクルーター自身が不利益を受ける」との話も聞きます。

 しかし、売上げ・収益が加盟店候補者にとって重要な関心事である一方で、売上げ・収益予測と現実の売上げ・収益との間にはどうしても誤差が生じる以上、本部側が意図するとしないにかかわらず、紛争の火種が常に存在することは間違いありません。

売上げ・収益予測に関する情報を提供すべきか?

 FC契約において、加盟店は本部とは独立した事業者である以上、加盟店は自らの判断と責任で情報を収集・検討した上で、FC契約を締結するかどうかを判断しなければならないという「建前」があります。

 しかし、本部と加盟店との間には知識、経験や情報の格差が存在する以上、加盟店が不測の損害を被らないように、本部が加盟店に対して相応の情報提供を行うことがフェアといえます。

 そして、このような情報提供に関する法令としては、以下のようなものがあります。

・中小小売商業振興法11条1項

・独占禁止法19条および2条9項(一般指定8項)

・民法95条、96条1項、709条および715条など

 ところが、売上げ・収益予測に関する情報提供義務について明確に定めた法令はありません。

法令がなく、判例が重要な役割を果たしている

 他方、法令ではありませんが、以下のガイドラインや業界団体の自主規制が情報提供義務に言及しています。

・公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」

「加盟者募集に際して、予想売上げ又は予想収益を提示する本部もあるが、これらの額を提示する場合には、類似した環境にある既存店舗の実績等根拠ある事実、合理的な算定方法等に基づくことが必要であり、また、本部は、加盟希望者に、これらの根拠となる事実、算定方法等を示す必要がある」

・一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会倫理綱領

「フランチャイザーがフランチャイジーとなることを希望する者に提供する情報は、契約の内容、モデル店の過去の営業実績、フランチャイジーが必要とする投資額、フランチャイジーの収益予想など、フランチャイズを受けるか否かを判断するのに十分な内容を備えたものとする」

 このように、売上げ・収益予測に関する情報提供義務に関して明確に定めた法令がない状況において、重要な役割を果たすのが判例です。

 本部と加盟店候補者との間に知識、経験や情報の格差が存在することなどを理由として、FC契約の締結段階において、本部は、加盟店候補者がFC契約を締結するか否かについて的確な判断ができるよう正確な情報を提供すべき信義則上の義務を負うとの裁判例が集積し、判例法理として確立しています。