ヤオコーのCSVの成功事例に学ぼう!

 最後に、日本において、「健康」をキーワードとして、CSVに積極的に取り組んでいる埼玉県川越市に本社を構えるスーパーマーケットのヤオコーの事例を紹介します。

 ヤオコーの経営幹部が「健康」を軸にCSVに取り組み始めた背景には、自社の古参の経営幹部が近年相次いで病気で亡くなったことがきっかけだったそうです。今後、自社が持続的成長を続けていくためには、従業員が心身共に健康でいなければならないと考え、まずは管理職以上の従業員を対象に、人間ドックを年一回全員受診する仕組みを構築したそうです。

 次に、店舗においても、埼玉県朝霞市にある朝霞岡店を健康経営の実験店舗として指定し、店長をはじめ、従業員、パートの皆さん全員で、腰や膝の痛み予防のための「ヤオコー体操」を実施し、毎日仕事中に水をたくさん飲むことを推奨したそうです。

 これら健康増進のためのさまざまな取り組みを通じ、社内(インターナル)における従業員の健康に対する意識改革を始めたわけです。

 この社内(インターナル)な取り組みが基盤となり、次の段階として、2015年11月よりお客さまに対する健康(予防医療)に関する取り組みをスタートしています。

 野菜は、「旬」と「鮮度」が重要で、成人が健康な生活を送るためには、1日350gの野菜をとるべきだそうです。その啓蒙活動のために、健康を意識した「料理教室」を食品メーカーと一緒に開催したり、行政である埼玉県朝霞市健康推進課と地域連携し、健康相談、健康診断等のイベントをイートインコーナーで継続的に実施したりしています。このような活動は、まさに社会的価値を醸成するCSRそのものです。

 一方、店舗の生鮮(野菜)売場やグロサリー(加工食品)売場においても、地産地消を意識した地元野菜、健康増進のための青汁や米麹等の健康食品(特定保健用食品や機能性表示食品)の品揃えを多店より充実。クッキングサポートコーナーでのミールソリューション(食卓提案)を通じ、お客さまに野菜や健康関連食品の良さをアピールし、店舗としての売上げ、収益アップにつなげようと努力しています。

 こうした社会的価値と経済的価値の両立こそが、CSVなのです。このように今後、CSVに本格的に取り組む際には、まずは社内(インターナル)から着手することが重要なのです。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見真也)